先週のシューベルト4番やベリオ/レンダリングが素晴らしかった鈴木優人さんと読響。この日はベートーベンとロドリーゴのコンサートを聴きに行きました。村治佳織さんのギターも非常に楽しみです!
読売日本交響楽団第636回名曲シリーズ
(サントリーホール)
指揮:鈴木 優人
ギター:村治 佳織
ベートーベン/序曲「レオノーレ」第3番
ロドリーゴ/ある貴紳のための幻想曲
ベートーベン/交響曲第5番ハ短調「運命」
まずはベートーベン/レオノーレ3番。前半はいささか勿体ぶった演奏で雰囲気があり、主題が解き放たれる後半は勢いの良い演奏、魂の飛翔を感じました。やはり名曲ですね。
朝比奈隆さんは、年末の第九を演奏する時、前半にレオノーレやエグモント、コリオランなどの序曲が付くと、その序曲の演奏だけで多大な集中力を要する、ということをおっしゃっていました。ベートーベンの音楽は短い序曲も実に奥深いものがあります。
続いてロドリーゴ。これが村治佳織さんによる、何とも味わいのあるギター!哀愁漂うひなびた雰囲気の音楽、明るくも寂しい踊りの音楽、いずれも素晴らしい!しみじみと心に響いてきます。
村治佳織さんのギターは過去に一度だけ、ロドリーゴ/アランフェス協奏曲を聴いたことがあります。ノスタルジックで実に見事な演奏でしたが、演奏が終わった瞬間、ギターを弾くために下を向いたままでの、伏し目がちの笑顔が本当に美しかったことを、昨日のことのようによく覚えています。
伊藤園のCMに出たり、大いに活躍されていた村治佳織さんでしたが、その後、可哀想なことに病魔に襲われました…。久しぶりにお元気そうな姿を拝見できて、本当に嬉しかったです。そして、また一段と綺麗になられました。
アンコールはアルハンブラの思い出。これも涙なくしては聴けないものがありました…。先週の神尾真由子さんのアンコールでは、そのヴァイオリンの表現の凄みに圧倒されましたが、村治佳織さんの優しく切なく、そして味わい深いギターにも大いに心惹かれます。音楽にはいろいろな形での感動がありますね。
(写真)アルハンブラ宮殿の有名なアラヤネスの中庭。造形が全く見事で、イスラム芸術の最高傑作と言われるアルハンブラ宮殿ですが、どこかひなびた郷愁を誘う雰囲気があって、とても魅了されました。村治佳織さんの雰囲気のある演奏を聴いて、そのことを思い出しました。
後半はベートーベンの運命。第1楽章。拍手もそこそこに、乱暴とまで思えるようなぶっきらぼうな導入!何か運命に翻弄されて投げやりになっているかのような印象を持ちます。鈴木優人さんは先週のシューベルト4番とは異なり速いテンポでどんどん進みますが、金管やティンパニの符点のリズムを強調していたのが印象的。逆に最後の方のオーボエはたっぷりで、悲痛な叫びや哀愁がより印象付けられ、とてもあざやかでした。
第2楽章。ここは読響をよく鳴らしながらの急がない指揮。田園の時も思いましたが、鈴木優人さんは弱音や中間音を意識的に使って、決して力任せになりません。よく考えられた指揮に大いに唸ります。
第3楽章。冒頭のチェロが何とも言えないニュアンス!まるで疑心暗鬼になっている主人公の心の中を表わしているかのよう。中間部はコントラバスをかなり強調して、さらには通常はぐっと弱める場面でもそのまま力強く演奏して、意志の強さを感じさせました。第4楽章の主題を意識させる卓抜な演奏!
第4楽章。第3楽章からのアタッカの流れはいつ聴いて本当に感動しますね…。この楽章は速めのテンポ、メリハリをよく付けて、曲の魅力をストレートに伝える素晴らしい演奏です。繰り返しの場面と、最後に主題が帰ってくる場面には何と心踊ることか!かなり盛り上がって、大いなる感動!
鈴木優人さんと村治佳織さんと読響のコンサート、素晴らしかったです!鈴木優人さんの指揮した交響曲を何回か聴きましたが、曲によって演奏が大きく変わる印象です。
それは、あくまでも楽譜をよく読み込んで、その曲の魅力をどう伝えるか、ということなんだと思います。気を衒うことなく、曲の魅力をストレートに伝える指揮。正に本格派です。しかもまだ39歳!これからが本当に楽しみです。
久しぶりに村治佳織さんのギターを聴けたのも本当に嬉しかったです。演奏も素晴らしかったですが、アンコールの曲名を伝える時に聴き覚えのある美しい声がサントリーホールに響いて、これには感動しました。ご健康に留意されつつ、ますますのご活躍祈っています!