東響の正指揮者に就任した話題の俊英、原田慶太楼さんがN響に客演するコンサートを聴きに行きました。大好きな神尾真由子さんのバーバーもめちゃめちゃ楽しみです!

 

 

NHK交響楽団11月公演

(東京芸術劇場コンサートホール)

 

指揮:原田 慶太楼

ヴァイオリン:神尾 真由子

 

コリリャーノ/航海

バーバー/ヴァイオリン協奏曲

ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調「新世界から」

 

 

 

まずはコリリャーノ。アメリカの作曲家ジョン・コリリャーノ(1938-)は、時代は現代ですが、ロマンティックな音楽を書く作曲家です。この「航海」も、ひたすら穏やかで美しい音楽に癒された時間。かのボードレールの「旅への誘い」(アメリカの詩人リチャード・ウィルバー翻訳)のために作曲された曲、ということでしたが、原作や訳詩も読んでみたいものです。

 

 

 

続いてバーバー。第1楽章。何という切ないヴァイオリンの入り!冒頭から大いに惹き込まれます。神尾真由子さんのヴァイオリンは、一音一音特別な感情の込められた、一瞬たりとも聴き逃せない緊張感に満ちた音楽。途中、主題がオケにより帰ってくる場面に向けた盛り上がりは、スケールの大きなヴァイオリンに、心揺さぶられます。

 

そしてオケが止んで、またしても現れる、切なくいじらしさも感じるヴァイオリンに涙涙…。何という情感の込められたヴァイオリン!実はこの旋律はドヴォルザーク/チェロ協奏曲の第3楽章の主題に似ているので、後半の「新世界から」との繋がりも感じさせます。素晴らしいプログラミング、そして演奏!

 

(参考)バーバー/ヴァイオリン協奏曲。台湾のヴァイオリニスト、ユーチン・ツェンさんの素敵な演奏。フランツが大いに感動したのは、4:52辺りから。特に5:41に主題が戻ってきて、6:16~のヴァイオリンが切ない…。

https://www.youtube.com/watch?v=5Df27qeMJJo (24分)

※Yu-Chien Tsengさんの公式動画より

 

 

第2楽章。N響の各楽器による素敵な演奏が続いた後、神尾真由子さんのたっぷりのヴァイオリンが圧巻!何と感情を揺さぶるヴァイオリンなのか!もうこの辺りは感動の嵐、涙でぐちゃぐちゃ…。神尾真由子さんの曲の魅力を十二分に伝える最高のヴァイオリン、今日もたっぷり堪能できました。

 

第3楽章。ここはひたすら高速でアルペジオを繰り返す技巧的なヴァイオリン。情感に溢れるヴァイオリンのみならず、2007年のチャイコフスキーコンクールで優勝に輝いた、神尾真由子さんの見事なスキルを大いに堪能できます。それでも決して無機的にはならず、最後まで情熱がほとばしるヴァイオリン。今日も最高でした!

 

 

アンコールはエルンスト/シューベルトの「魔王」による大奇想曲。シューベルトの「魔王」の歌とピアノの両方を1台のヴァイオリンが奏でる、とんでもない曲ですが、これがまた物凄い演奏!魔王の曲が高速で展開する中、常に2音を奏でる信じられないヴァイオリン!

 

ずり上げやずり下げも駆使して、曲想をこれでもかと高めます。敢えて音を少し外して、子供の恐怖心を煽るだけ煽った圧巻のヴァイオリン!私、余りにも怖すぎて、途中で十字を切ってしまったくらい(笑)。会場も大いに盛り上がりました!

 

 

 

後半はドヴォルザークの新世界から。第1楽章。原田慶太楼さんの指揮は、テンポを大きく変化させて、強弱もたっぷり、非常にメリハリの効いた指揮で聴き応え抜群の演奏です!たっぷり歌う第2主題は雰囲気があって本当にいいですね~。とても好み。展開部も荒々しくて勢いが良く、非常にスリリング。ラストの追い込みも迫力満点でした!

 

第2楽章。よくぞここまで!と驚いた、非常にスローなテンポの演奏。こういう演奏はかなりリスキーで、響きが薄くなったり退屈してしまう危険性もありますが、今日は大いに惹き込まれる演奏。原田慶太楼さん、全く只者ではありません。そして、その思い切った指揮を破綻なく、ちゃんと受け止めるN響もさすがの一言。池田昭子さんの十八番のイングリッシュ・ホルンも素晴らしかったです。

 

第3楽章。ここは一転リズミカルな演奏ですが、弦楽の響き方に変化を付けて、いちいち魅了されます。中間部の入りのルバートも雰囲気があっていい感じ。後半の第4楽章に繋がる盛り上がりも迫力があって、大いに魅せました。

 

第4楽章。いよいよ真打ち登場という感じの堂々たる導入!そして途中のクラリネットのソロのシーンは、周りの楽器を聴こえるか聴こえないかくらいに思いっきり抑えて、クラリネットを浮き立たさせて絶品過ぎる!一週間仕事を頑張った身体に、このゆっくりのクラリネットが沁み渡り、もう、はらはら涙が落ちました…。ラストもこれでもか!と盛り上げて、最後の和音もレニーのイスラエフ・フィルとの演奏のようにたっぷり。

 

 

 

何この突如飛び出した、素晴らし過ぎる新世界から!!!

 

原田慶太楼さんの挨拶代わりの渾身の指揮&N響の名演!!!

 

和製ティーレマン現る!!!

 

 

 

いや~、神尾真由子さんの壮絶な演奏に大いに心揺さぶられましたが、何とまだその先があった!若いのにN響に臆せず、こんなにも振幅の激しい指揮を敢行した原田慶太楼さんに大いに魅了されました!ただ、単なる思い付きではなく、楽譜をしっかり研究して、曲想を高めるだけ高めた指揮だからこそ、この大きな感動に繋がるんだと思います。

 

また、それをしっかり受け止めて形にする、コンマスのマロさんを始めとしたN響も見事なプロの仕事!マロさんが終演後に、「今日は慶太楼を男にしてやったかな、ワッハッハ!笑」とか言って、満足そうにお酒を飲んでいる光景が目に浮かぶ!(笑) 会場も大いに盛り上がっていました!

 

 

 

(参考)ベーコンエッグバーガーとルシール(ジョージタウン・ブリュワーズ)。今日は捻りの効いたアメリカ・プロ、ということで、終演後はハンバーガーとアメリカのビールで決まりです。ビールは爽やかな飲み口ながら苦味がよく効いて素晴らしい飲み物!ハンバーガーは鉄板に美味しいですね。

 

 

(写真)ビール2杯目はバーボン・バレル・ジンジャーブレッドスタウト(ハーディーウッド・パーク)。バーボンの樽で12週間熟成させたスタウトです。蜂蜜、シナモン、生姜の香り。味は甘さと苦味が絶妙に混じり合い、ほとんどリキュールのよう。素晴らしいビールとの出逢い!

 

その感動を率直にお店の方に伝えたら、とても喜ばれました。こういう交流は本当にいいものです。フランツは若い頃から酒場で人生経験を積んできたので、飲食店に携われる方々には大いなる尊敬の念を抱いています。今はコロナでどこも大変ですが…、微力ながら応援したい気持ちでいっぱいです。