鈴木雅明さんと並びたつ古楽のスペシャリスト鈴木秀美さんが、東京ニューシティ管弦楽団に初めて客演するコンサートを聴きに行きました。C.P.E.バッハにハイドン、ベートーベン。とても楽しみなプログラムです!

 

 

東京ニューシティ管弦楽団第134回定期演奏会

(東京芸術劇場コンサートホール)

 

指揮:鈴木 秀美

 

「ベートーベン生誕250周年記念」 -古典への回帰-

C.P.E.バッハ/シンフォニア ニ長調

ハイドン/交響曲第92番ト長調「オックスフォード」

ベートーベン/交響曲第2番ニ長調

 

 

 

このコンサートを聴きに行こうと決めたのはまずは曲目のバランス。C.P.E.バッハ→ハイドン→ベートーベンの流れがとてもいいこと。そしてベートーベンの交響曲の中でも2番がかなり好き、ということも一点。

 

しかし、決定打になったのは、久しぶりにハイドンのオックスフォード交響曲をライブで聴きたい、と思ったからです。パリ・セット(82~87番)とロンドン・セット(93~104番)の間の曲ですが、特に第2楽章に大いなる魅力を感じます。

 

 

 

まずはC.P.Eバッハ。カール・フィリップ・エマニュエル・バッハはJ.S.バッハの次男です。第1楽章はまるで音楽の修辞学のサンプルを聴かされているようなユニークな冒頭、そして続く旋律を一音ずつ下降して展開する場面がいい感じ。不思議な中間楽章に続いて、最終楽章は曲想の全く異なる場面が途中で短く入る目新しい音楽。意表を突かれまくりで(笑)楽しめました!

 

 

 

続いてお目当てのハイドン。第1楽章は序奏に続いて下降音で入る主題が、何とも言えず肩の力が抜けてほんわかしていて好き!(笑) 中間部で大きな強調を入れ、続くフーガも素敵な聴きもの。鈴木秀美さんの見事な指揮に魅了されます。

 

第2楽章。美しい主題はフレーズの終わりを短く切って余韻を出します。短調に急変する場面は迫力十分、短調と長調が入り混じる美しい音楽!大いに堪能しました!

 

(参考)ハイドン/交響曲第92番ト長調「オックスフォード」より第2楽章。冒頭からの主題はハイドンの書いた最も美しい音楽、とも言われています。そんな中、突然現れる厳しい短調(2:46~)に驚かされます。

https://www.youtube.com/watch?v=cE5wwjPQx7c (8分)

※Academy of St. Martin in the Fieldsの公式動画より、サー・ネヴィル・マリナーさんの指揮

 

 

チャーミングな第3楽章に続いて、第4楽章は何か愛犬がひたすらやんちゃでイタズラをしているような愉快な音楽。ウキウキワクワクするハイドンの音楽を聴く愉悦!ノリノリの演奏を大いに楽しみました!

 

 

 

後半はベートーベン。第1楽章。しっとりした序奏から主題が始まり、めくるめく展開に大いに魅了されます。何と素晴らしい音楽!つくづく名曲だと思う。

 

(参考)ベートーベン/交響曲第2番ニ長調より第1楽章。緊張感に満ちた序奏、そして3:42からの主題、その後のめくるめく音楽が素晴らし過ぎる!ベートーベンの交響曲で、3番「英雄」・5番「運命」・6番「田園」・7番・9番「合唱付き」までしか聴いたことのない方はぜひ聴かれてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=8fj45oLzIpE (13分)

※DW Classical Musicの公式動画より、パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー・フィルの演奏

 

 

鈴木秀美さんの指揮はメリハリ、くさび、楽器や強弱のバランスがピタピタッと決まってオケから見事な演奏を引き出します。ラストに向けて高まる音楽はじっくり壮大に演奏して大いなる感動!

 

第2楽章も曲想を高める見事な演奏でしたが、ハイドンの第2楽章と比べるとベートーベンがいかに様式を発展させているかを実感しました。ほとんどブラームスやブルックナーの緩徐楽章に近いスケール感すら感じます。

 

第3楽章は楽しいスケルツォ。この無窮動のような音楽を、私は「雅なダルマさんが転んだ」と表現したことがありますが、今日の演奏を聴いて、自分ながらなかなか言い得て妙だなと(笑)。

 

第4楽章はのんびりとした第3楽章から一変して、弾き急いでいるかのような前のめりのリズミカルな演奏。途中で木管が「パポッ!パポッ!♪」と呼応する大好きな場面も、ほとんど鳥に鳴かせる間を与えないくらいに急ぎ足で進みます。

 

まるでベートーベンが作曲に邁進したくてしたくて仕方ない、そのことを表わしているのではないか?そんな印象を持ちました。2番は有名なハイリゲンシュタットの遺書の書かれた年に作曲された曲ですが、今では遺書でなくベートーベンの決意表明と言われています。そのことを感じさせた、素晴らしいフィナーレでした!

 

 

 

鈴木秀美さんと東京ニューシティ管弦楽団のコンサート、大いに楽しみました!ハイドンのオックスフォード交響曲を久しぶりに聴けたのも嬉しかったですが、特にベートーベン2番が全く見事な演奏でした!過去に大いに楽しんだフィリップ・ジョルダン指揮/ウィーン交響楽団、そしてジョヴァンニ・アントニーニ/読響に匹敵する活き活きとしたベートーベン!

 

 

実はこの日はウィーン・フィルの来日公演の最終日でした。11月9日(月)にサントリーホールのオープニングコンサートを聴いて、最高の演奏、突き抜ける感動を覚えたので、その後の公演も聴きに行くことを考えました。

 

しかし、今回の来日公演は特別な機会。一度聴きに行った私が何度も聴くよりも、より多くの方々に聴いていただき、みんなコロナで大変な中、勇気付けられてほしい。こう考え、新たにチケットを取ることはしませんでした。

 

その代わりに聴いた形となるこの日の鈴木秀美さんと東京ニューシティ管弦楽団のコンサート。日本のアーティストたちが躍動し、何とも味わい深いものとなり、音楽の喜びを存分に堪能することができました!

 

 

東京ニューシティ管弦楽団は、2021年度のシーズンも鈴木秀美さんとのハイドン86番とベートーベン1番のコンサートを予定しています。その他マルトゥッチ/交響曲第2番だったり、ブルックナー/交響曲第9番(第4楽章付)だったり、エネスコを並べたプログラムだったり(何とルーマニアの名指揮者コンスタンティン・シルヴェストゥリの曲まで!)、非常に意欲的かつ、抜群のまとまり感の素晴らしいラインナップです。ぜひまた聴きに行こうと思います。

 

 

 

(写真)終演後はレアチーズケーキとカフェオレで一息。フランツが学生時代によく通ったカフェを久しぶりに訪れました。私はどちらかというと紅茶の方が好みですが、ウィーン・フィルに敬意を表してウィーン流で(メランジェ)。