緊急事態宣言開け、最初のコンサートを聴いてきました。ベートーベンとメンデルスゾーンという王道のプログラム。久しぶりの東響の音、そして田部京子さんのピアノも楽しみです!
東京交響楽団第681回定期演奏会
(サントリーホール)
指揮:飯守 泰次郎
ピアノ:田部 京子
ベートーベン/「プロメテウスの創造物」序曲
ベートーベン/ピアノ協奏曲第3番ハ短調
メンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調「スコットランド」
私が最後に行ったコンサート・リサイタルは以下の2月下旬のアンネ・ゾフィー・ムターさんのリサイタルでした。それからの4ヶ月ぶりとなるコンサートです。
(参考)2020.2.24 アンネ=ゾフィー・ムター/ベートーベン生誕250周年記念公演(Vnソナタ)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12577521016.html
実はその4ヶ月間、オーケストラやオペラの動画配信は一切、見ませんでした。自分で毎日のようにピアノを弾いて、特に聴き応えも抜群なベートーベン/熱情ソナタを弾いて、大いにカタルシスを得られていた、ということもありますが、一番の理由は「渇望感」を得たかったからです。
食べ物に例えると分かりやすいですが、どんなに美味しいものでも、毎日食べると、どうしても飽きが来てしまうもの…。ならば、コロナで生のコンサートを聴けないのであれば、その状況を逆に利用して、動画配信はもとより、CDも一切聴かないようにして、コンサートが再開されたあかつきには、大いなる渇望感もて、音楽を存分に楽しもう!
すなわち、お腹をペコペコにして、美味しいご飯を食べて感動しよう!という、題して「お腹ペコペコ作戦」(笑)です。
(なお、オーケストラやオペラ以外では、アメブロでアップされているピアノやフルート、歌などの動画は拝見させていただいていました。素敵な演奏を本当にありがとうございます!)。
1曲目が始まる前。オケが出てきて、水谷晃コンマスが出てきましたが、コンマスの合図とともに、オケが立ち上がって、客席に一礼。ここで早くも涙が流れてきます…。客席はSD仕様で市松模様の座席配置でしたが、広いサントリーホールをよく埋めていました。
まずはベートーベン/プロメテウスの創造物。冒頭でオケの力強い和音が聴こえてきたところで、また早くも涙…。やはりライブで聴く、サントリーホールで聴くオケの音は、残響も豊かでふくよかな美しい響き。惚れ惚れします。
「プロメテウスの創造物」とは人類のこと。プロメテウスは寒さなどにより困窮する人類に火を与えて助けたことで知られますが、この状況でこの曲を聴くと、コロナで疲弊する人類に、ベートーベンが励ましの音楽を与えてくれるように聴こえてきます。非常に感動的な序曲でした!
続いてベートーベン/ピアノ協奏曲第3番。とにかく田部京子さんのピアノが抜群!完璧に3番を弾き切った上に、随所に独自の強弱・タッチ・ニュアンスを付け、所作も美しく、自家薬籠中で極めて感動的なピアノ!おそらくこの曲は田部京子さんの十八番なのではないでしょうか?
特に第1楽章の第2主題、魂の込められたカデンツァ、後期ソナタにつながるものを感じたトリル、第2楽章の含蓄を感じさせる開始(冒頭はこんなに美しい曲だったんだ!と思い知らされました)、第3楽章冒頭の弾け方、途中の明るい曲想になる場面での自由自在なピアノ、などなど。
私この曲は実演を10回以上は聴いていると思いますが、文句なしに最高の演奏。極めて感動的な名演でした!田部京子さんは以前に4番も聴いたことがありますが、こちらも素晴らしかった。ぜひベートーベンの1番や2番も聴いてみたいです。
後半はメンデルスゾーン/スコットランド交響曲。展開部の長調の盛り上がりが構築的で素晴らしかった第1楽章、東響の優秀な木管群の妙技が頼もしかった第2楽章、冒頭からの弦楽の幽玄で美しい響きに魅了された第3楽章、ラストのホルンからの輝かしい音楽が感動的だった第4楽章。見事な演奏でした!
飯守さんはほとんどオットー・クレンペラーを思わせるような(笑)ゆっくりとした指揮。それでももたれることなく聴かせて、改めて東響が非常に優れたオケであることを実感しました。第4楽章は厳しい音楽がずっと続いた後、ラストは晴れ晴れとした音楽で終わります。いつもはスコットランドの明るい未来を思わせますが、今日はコロナに打ち克った人類の明るい未来を想像しました。
いや~、久しぶりに聴いたオーケストラのコンサート。東響の素晴らしい演奏、田部京子さんの傑出したピアノで、極めて感動的なコンサートとなりました!コロナ対策で「ブラボー禁止」のアナウンスがあり、終演後は盛大な拍手のみとなり、それはそれで盛り上がりましたが、私にはコロナがなければ一斉に飛んだであろうブラボーが聞こえたような気がしました。「お腹ペコペコ作戦」も大成功。ライブのオケの素晴らしさを噛みしめて、大いに感動することができました。
東響はこのコロナでコンサートができない時期でも、無観客ライブ配信を先駆けて敢行して多くの視聴者を得たり、今回もいち早くコンサートを再開したり、更には、7月には何と!ジョナサン・ノットさんが映像で指揮出演するコンサートまで企画したり、非常にアグレッシブに活動している印象を持ちます。
私はこういう攻めの姿勢は本当に好き。難しい状況の中で新しい取り組みをすることとなるので、試行錯誤や紆余曲折もあって相当大変だったと思いますが、その未来を切り拓く積極的な取り組みに大いに敬意を表し、全面的に支持します。
今日のプログラムの後ろの方には、東京交響楽団サポート会員のページがありましたが、沢山の方々が新会員(1万円以上)になられていて、中には10万円や25万円の新会員の方までいらっしゃいました。これだけの支持を集めるのは、本当に凄いことだと思う。コンサートが開けなくて疲弊するオーケストラの助けになることでしょう。
東響はユベール・スダーンさんが音楽監督の時期にずっと聴いてきて、オケがどんどん素晴らしくなるのを実感して、今や東京で、いや日本で屈指のオケだと思います。それはオケのメンバーの方々の弛まぬ努力や優れた指揮者とのコラボレーションの賜物と思いますが、それらに加えて、さらに優秀な事務局の存在もあるように思います。
コンサート再開、本当におめでとうございます!一生の思い出に残る、素晴らしいコンサートでした!また聴きに行きます!