今年が生誕100周年のフェデリコ・フェリーニ監督の映画をご案内している、フランツの「家で過ごそう」シリーズ。第5回目はエドガー・アラン・ポーの小説を3人の監督が映像にしたオムニバス映画、世にも怪奇な物語です!

 

 

世にも怪奇な物語

(1968年公開)

 

(「世にも怪奇な物語」のうち、フェリーニの作品「悪魔の首飾り」)

監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ

製作:アルベルト・グリマルディ/レイモンド・イーガー

脚本:ベルナルディーノ・ザッポーニ

撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ

音楽:ニーノ・ロータ

 

ダミット:テレンス・スタンプ

 

 

 

(写真)世にも怪奇な物語のDVDのジャケット。やはり第2話に登場するブリジット・バルドー(右下)が雰囲気ありますね。

 

 

 

この作品は、エドガー・アラン・ポーの3つの小説を、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、そしてフェデリコ・フェリーニの3人の映画監督が作品とした、オムニバスの映画です。そのうち、最後の第3話のフェリーニの作品のみご紹介します。

 

 

まずイギリスの俳優トビー・ダミットがローマの空港に降り立つシーンから始まります。パパラッチたちのフラッシュを嫌がるダミット。市内に車で向かいますが、「カトリック西部劇」を撮りたいと製作側の神父から話されます。既に何かがおかしい?と思わせる展開。

 

そして、車が信号待ちの際に群がるジプシーにダミットが手相を頼みますが、ジプシーから見たくないと言われてしまいます。ダミットの悲しい運命が分ってしまうシーン。

 

ダミットのテレビのインタビューのシーンは、何とも奇妙な番組作りやダミットの奇抜な受け答えが見どころ。その前の第1話・第2話に比べると、もう圧倒的なセリフの量、そして象徴的な映像で、フェリーニの個性を大いに感じます。ニーノ・ロータの音楽も小粋でいいですね。

 

映画祭の授賞式のシーンでは、ジョニーウォーカーを一気飲みしてしまうダミット…。実はダミットはアル中で、もう1年間仕事をしていません。その場でダミットも賞をもらいますが(ローマらしい、お乳を飲む狼像がいい!)、受賞スピーチで、何で俺を呼んだんだ?とぶち壊しにしてしまい、報酬だったフェラーリに乗って会場を去って行きます。

 

オレンジ色のフェラーリのオープンカーでローマを疾走するダミット。途中、高速でカーブを連続して曲がるスリリングなシーン、そして張りぼてと本物の人や動物が入り交じった象徴的な映像はフェリーニならでは。最後は何とも印象的なラスト。少女の笑顔が恐すぎました!

 

 

いや~、エドガー・アラン・ポーの作品ということを感じさせない、ほとんどフェリーニ原作の映画ではないか?と思わせるような、とても象徴的でミステリアスな作品でした!テレンス・スタンプの壊れた俳優の演技も素晴らしかったです!

 

 

なお、第1話の「黒馬の哭く館」(ロジェ・ヴァディム監督)は、風光明媚な古城の風景、高飛車なジェーン・フォンダが美しく、不思議な馬のタペストリー、ワーグナー/神々の黄昏のラストのような結末。

 

第2話の「影を殺した男」(「死刑台のエレベーター」「地下鉄のザジ」「鬼火」のルイ・マル監督)は、アラン・ドロンとブリジット・バルドーの対決、ウィルソンVSウィルソン、お酒をたしなめられてしまう懺悔など、第3話とは異なり、とても分りやすい(笑)作品でした。

 

 

 

(追伸)今日は以下の6年前の記事のアクセスが多くて、一体何があったんだ?とビックリしましたが、どうやらこの公演のTV放送か何かがあったようです。

 

(参考)2014.12.27 R.シュトラウス/影のない女(バイエルン国立歌劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11975807844.html

 

この公演は、キリル・ペトレンコさんの圧巻の指揮が素晴らしかったですが、クリストフ・ワルリコフスキさんの象徴的な演出も非常に印象的で、冒頭にアラン・レネ監督の映画「去年マリエンバートで」の映像が映し出され、その流れの中で、映画の登場人物を引き継ぐ形でオペラが始まります。

 

私はたまたまこの映画を観たことがあったので、やや消化不良なところはあったものの、この象徴的でやや難しい演出をかなり楽しました。そして、その後に演出を反芻して、今ではどうして第1幕で染物師の妻がベッドの上にいたのか?沢山出てくる鷹は何を表わしているのか?どうして第3幕は丸テーブルに主役の4人が座って背後に大勢の子供たちが出てきたのか?など、設定や演出の意図は、かなりクリアになりました。影のない女のストーリーに即した、非常によくできた演出だと思います。

 

ヨーロッパのオペラの演出では、このようにヨーロッパの古典的な映画を踏まえたり、アレンジしたものにたまに出くわします。いろいろな映画を観ておくと、いいことありますね。ということで、フェデリコ・フェリーニのシリーズもまだまだ続きます!