2月のことですが、国立新美術館にブダペスト展を観に行きました。2月の上旬に観に行って、どうしてすぐにアップしなかったのか?さっぱり覚えていませんが、昨年12月4日から始まり、2月29日から新型コロナウイルスで臨時休館となり、一度会期末が3月16日から29日に延長されたものの、結局そのまま閉幕となってしまった美術展です。

 

臨時休館中にアップするのは控えていましたが、閉幕から1週間経ちました。観ることができなかった方々に少しでも雰囲気を楽しんでいただければ、そして、自粛でずっと家にこもっていらっしゃる方々に素敵な絵を観てほっこりしていただければ、と思い、ここにアップいたします。

 

 

この美術展は、ハンガリーのブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーが所蔵する、ハンガリーの画家を中心とした美術展です。ブダペスト国立西洋美術館のコレクションの母体となった作品の多くは、ハンガリーの名門貴族エステルハージ家などハンガリーの貴族に由来するものです。

 

1871年にはハンガリー政府が、エステルハージ家の美術コレクション(絵画637点、素画3,535点、版画51,301点、写本305点)を購入した、という解説もありました。エステルハージ家と言えば、アイゼンシュタットやフェルトゥードでヨーゼフ・ハイドンが仕えた家。とても親しみが湧きます。特に印象に残った絵画は以下の通りです。

 

 

 

 

(写真)ヴァサリ・ヤーノシュ/黄金時代

※ブダペスト展で購入した絵葉書より

 

古代の彫像が連なる庭園のなかで身を寄せ合う若い男女が、愛の女神ヴィーナスの彫像にバラの花などの供物を捧げています。ハンガリーにおける分離派様式の絵画の傑作に位置づけられている作品ということでした。私好みの、象徴的な香りの豊かな絵画。とても魅了されました。

 

 

(写真)ムンカーチ・ミハーイ/パリの室内(本を読む女)

 

ムンカーチ・ミハーイは1874年に貴族の女性と結婚してからは、裕福なブルジョワ階級の婦人や子どもたちの優雅な生活情景を描くようになりました。それらはたいていムンカーチの豪奢な自宅のサロン(広間)を舞台としていたそうです。その上品な絨毯をくしゃくしゃにしてワンコと遊ぶ子供が何とも可愛い(笑)。

 

 

 

(写真)ムンカーチ・ミハーイ/フランツ・リストの肖像

 

リストは1886年の3月後半、自身が作曲した「グランのミサ」の上演を監督するために、約2週間パリに滞在しましたが、本作はその時に描かれたものです。その4カ月後、リストは74歳で帰らぬ人となりました。死の直前には、バイロイト音楽祭でトリスタンとイゾルデを観ています。晩年のリスト、威厳と風格、そして優しさがあって素敵です。

 

 

 

(写真)チョーク・イシュトヴァーン/孤児

 

現実離れした青色の室内に、あわれな孤児の少女たちがたたずむ様子を描いた作品で、チョーク・イシュトヴァーンの初期の代表作だそうです。一見して、ハッと思わせる作品。青の室内と灯り、窓の外の白のコントラストが象徴的。とても沈痛な、しかしどこか毅然とした雰囲気も感じる孤児の表情に魅せられました。

 

 

 

(写真)シニェイ・メルシェ・パール/紫のドレスの婦人

 

このブダペスト展のポスターに使われている絵です。紫が印象的な、とても美しい絵。モデルは画家の結婚したばかりの奥さんだそうです。制作当時、この作品はほとんどの批評家に不評だったそうですが、一般の観衆の心を掴み、19世紀末から今日に至るまで、ハンガリーで最も広く親しまれ、愛されている名作ということでした。

 

 

 

モネやルノワール、コローなどハンガリー以外の国の画家の作品もいろいろありましたが、私が特に惹かれたのは、上記のようなハンガリーの画家の作品でした。今回、ハンガリー側の監修で作品が選ばれていたそうですが、著名な画家の作品と横並びで比較しても決して負けない、優れた画家や絵画が豊富なハンガリーの美術を、上手くプレゼンテーションしていたように感じました。

 

この冬の旅行のウィーンのレオポルト美術館で観たリヒャルト・ゲルストル展でも、ゲルストルの絵と、自画像や風景画など各分野で傑出した他の画家の絵を並べて、行き場のない芸術家の悲劇を強調していたと受け取りました。1つ1つの絵画だけでなく、その企画の意図を汲み取りながら企画展全体を楽しむのも、美術展を楽しむ醍醐味だと思います。

 

(参考)2019.12.29 ウィーン観光(リヒャルト・ゲルストル展@レオポルト美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12570798141.html

 

 

 

そして個人的にこの美術展には関連する思い出が。2008年末にブダペストに行った時に、今回の絵画を提供しているブダペスト国立西洋美術館にも行きましたが、ブダペスト入りした時のフライト(アムステルダム→ブダペスト)が機材のトラブルで半日遅れとなり、美術館を観て周る時間がかなり限られたのです…。

 

急ぎ足で観て周りながら、とても素敵な絵が予想以上に沢山あって、本当に悔しい思いをしましたが、今回は名作の数々をじっくり観ることができ、その時の借りを少し返せたような気がします。ただし、現地にはもっともっと沢山の名作があったように記憶しています。いつの日か、またブダペストを訪問して、現地でゆっくり観てみたいものです。

 

 

 

 

(写真)ブダペスト国立西洋美術館

 

 

(写真)美術館が面する英雄広場。その奥にはブダペストのお楽しみ、セーチェニ温泉があります。