(冬の旅行記の続き) 2020年最初のオペラは、一昨年の2018年に没後150周年で大いに盛り上がったロッシーニのオペラ、チェネレントラです。チェチーリア・バルトリさんのアンジェリーナを小ぶりなチューリッヒ歌劇場で観れる!めっちゃ楽しみな公演です!
Opernhaus Zürich
Gioachino Rossini
La Cenerentola
Musikalische Leirung: Gianluca Capuano
Inszenierung: Cesare Lievi
Szenische Einstudierung: Claudia Blersch
Bühnenbild und Kostüme: Luigi Perego
Lichtgestaltung: Gigi Saccomandi
Choreinstudierung: Ernst Raffelsberger
Angelina, genannt Cenerentola: Cecilia Bartoli
Don Ramiro, Prinz von Salerno: Javier Camarena
Dandini, sein Diener: Oliver Widmer
Don Magnifico, Vater von Clorinda und Tisbe: Alessandro Corbelli
Tisbe: Liliana Nikiteanu
Clorinda: Martina Janková
Alidoro, Philosoph, Don Ramiros Lehrer: Stanislav Vorobyov
Orchestra La Scintilla
Chor der Oper Zürich
(写真)チューリッヒ歌劇場。座席数は1,100席と、一流のオペラを観るには非常に贅沢な空間です。
第1幕。序曲は古楽オケのOrchestra La Scintillaのキビキビした演奏が素敵。さっそくロッシーニ・クレシェンドが聴かれて、胸が高鳴ります!幕にはチェネレントラほかの名前が螺旋模様で描かれていました。チェネレントラ(シンデレラ)の物語にはさまざまな由来のものがあることを示しているようです。
(参考)ロッシーニ/「チェネレントラ」序曲
https://www.youtube.com/watch?v=SvYXp8jG4bs (9分)
※Teatro La Feniceの公式動画より。フェニーチェ歌劇場のニューイヤーコンサートの演奏ですが、指揮は我らが大野和士さんです。フェニーチェ歌劇場の美しい内装も堪能できます。
チェチーリア・バルトリさんのアンジェリーナ(チェネレントラ)、冒頭の「王子さまと純情な娘」のメランコリックな歌が素晴らしく、さっそく魅了されます!ただし、クロリンダとティズベの2人の姉たちとのやりとりを見ると、結構芯の強いアンジェリーナという印象。象徴的に舞台の前に並んでいた8足の靴を既に意識していましした。姉たちとの早口言葉が楽しい。
2人の姉とアンジェリーナの父親ドン・マニフィコの寝起きの夢のアリアは、アレッサンドロ・コルベッリさんの楽しい歌。ハヴィエル・カマレナさんの王子ドン・ラミーロの登場の歌は、METのルチアーノ・パヴァロッティの後継者とも言われるカマレナさん、さすがの歌!アンジェリーナとの二重唱も素晴らしい。
オリヴァー・ヴィドマーさんのダンディーニはまさに「ダンディ」な雰囲気(笑)。王子の結婚相手を見極めるために王子に変装していますが、調子に乗って主人である王子ドン・ラミーロさんを弄ぶ演技も楽しい。歌の途中で、プロンプターのボックスにダンディーニが足を差し出し、プロンプターの方が手だけを出して、靴をシュシュシュっと素速く磨く演出まで(笑)。小粋で楽しい演出に魅了されます。
姉たちは王子に偽ったダンディーニに猛アタック。何と掟破りのパフパフまで!(笑) 長女がダンディーニに胸を触られたら、次女が思いっきり嫉妬する演技まで付いていました。リリアーナ・ニキテナウさんとマルティナ・ヤンコヴァさんの2人の姉は、歌も演技も上手い!個人的にチェネレントラはこの2人の、特に演技がポイントだと思いますが、もう抜群でした!
王子の指南役のアリドーロのアリアは、スタニスラフ・ボロヴィオフさんによるしっとり胸を打つもの。何と天使の仮装で歌いましたが、途中で羽根が広がる凝りよう!(笑)ドレスの入った手品の箱にアンジェリーナが入って引いて行きました。
ツィトツィトの早口言葉のやりとりも楽しいです。姉たちはまたしても偽王子のダンディーニに猛アタックですが、途中で足を引っ張り合いの諍いになるのが受ける!(笑)
そして、ドン・ラミーロ王子の宮殿に美女が来ることが告げられます。まあ大変!と姉たちが美女が入れないように、宮殿の部屋のドアを閉めるのが受ける!そして、謎の美女(正体を明かしていないアンジェリーナ)が登場すると、姉たちがあくせくとお化粧をする演技がもう可笑しいのなんの!(笑)
ラストの早口言葉のシーンは、みんなでパスタを食べるシーンですが、椅子が一つ足りないので、イス取りゲームになります。姉たちとドン・マニフィコがイスを譲り合わずに、3人でグルグルとイスを取り合う演技、3人の心の醜さを示して終わりました。
第2幕。すっかり王妃の父になったつもりのドン・マニフィコが妄想をたくましくする有名なアリア。コルベッリさんは演技も巧みで、早口言葉も完璧、大いに魅せました!そして段々と妄想が進んでおかしくなる父親を、怪訝な表情で見始め、最後には手を合わせて祈りの表情になる姉たちの反応がもう可笑しいのなんの!(笑)
ドン・ラミーロのアンジェリーナへの愛を歌うアリアは、カマレナさんが高音を見せつけて、大いに魅せました!ハイCを軽々出す歌は本当に聴き応えありますね。会場も大盛り上がりでした。
ダンディーニに「実は私は王子じゃないんです」と告白されて、唖然とするドン・マニフィコが可笑しい(笑)。嵐のシーンは雨漏りが始まって、あちこちバケツで水を溜めたり、雷が落ちてドン・マニフィコの傘が燃えてビックリしたり、本当に楽しい演出です。
いよいよドン・ラミーロがアンジェリーナを結婚相手として選ぶと、大いに憤慨する姉たち…。しかし、王妃となるアンジェリーナはさんざんいじめられてきた姉たちに仕返しはせず、「過去は水に流しましょう」と姉たちを許すシーンに。ここは本当に感動的ですね。
そして、最後はみんなで結婚をお祝いするケーキを食べて仲直り。バルトリさんが超絶技巧の高速アジリタの歌で魅せて、聴衆の爆発的な大喝采で終わりました!
いや~歌手もオケも演出も揃ってめちゃめちゃ素晴らしい!2020年新年一発目のオペラ、また凄い公演に当たりました!
観客が大いに湧いて、カーテンコールも大盛況でしたが、何と!オペラでは珍しく、アンコールが始まりました!第2幕のグルッポの愉快な6重唱です。バルトリさん、ブラーヴァが沢山飛んで、チューリッヒで人気ありますね~。ご本人もノリノリでした。
ここ3年連続、ザルツブルク音楽祭でバルトリさんを聴いていますが、チューリッヒのバルトリさんもやはり凄かった!しかも私はチェネレントラは、バルトリさんがアンジェリーナを歌うCDが愛聴盤なんです。とても感慨深い公演でした!
(写真)その私のチェネレントラの愛聴盤、リッカルド・シャイー/ボローニャ歌劇場のCD。30年前くらいの録音ですが、チェチーリア・バルトリさんが変わらず素晴らしいアンジェリーナを歌っているのは驚異的!そして、このCDでダンディーニを歌っていたアレッサンドロ・コルベッリさんのドン・マニフィコを聴けたのも嬉しかったです。
(写真)終演後のチューリッヒ歌劇場の周りの風景。ゴンドラ?あるいは厩?のような形の電飾があちこちに飾られていて、とてもロマンティック。
(写真)夜のリマト川と両岸の景色。水辺の雰囲気とライトアップされた大きな教会が本当に素敵です。