(冬の旅行記の続き) チューリッヒのまち歩きや教会巡りを楽しんだ後、この日の観光の仕上げとして、チューリッヒ美術館を訪れました。スイスの画家の作品が豊富な、チューリッヒやスイスを代表する美術館です。

 

 

さすがはチューリッヒやスイスを代表する美術館ということで、アルノルト・ベックリンやフェルナンド・ホドラーなど、特にスイスの画家の絵画の数々に大いに魅了されました!特に印象に残った絵は以下の通りです。

 

 

 

 

(写真)Arnold BöcklinVenus Genitrix, 1895

※チューリッヒ美術館で購入した絵葉書より

 

中央のトライアングルを叩くヴィーナスの周りに、恋人との語らい、そしてりんごもぎの途中の授乳のシーンが微笑ましい、とても象徴的な絵です。生きる喜び、男女の喜びが伝わってくる、いつまでも眺めていたくなる、本当に素晴らしい絵です。

 

ヨーロッパの他のまちの美術館に行った時もそうですが、私はベックリンの絵画には、タイトルを見る間もなく、パッと見の印象だけで真っ先に惹かれます。お膝元のスイスでもそうでした。

 

 

 

 

(写真)Arnold BöcklinDer heilige Antonius predigt den Fischen, 1892

 

マーラーの歌曲「子供の不思議な角笛」でも有名な、「魚に説教する聖アントニオ」の絵です。何と!多くの魚に混じって、巨大なサメが!(笑) しかも、聖アントニオのお説教を聞いて、そのサメが悔い改めているような、何とも言えない表情!

 

さらに、(小さくて見えないですが)サメの右奥にいるアンコウが、何だかお説教を聞いて目覚めたかのような、非常に精悍な表情なのもいい!(笑) その下には、水面下で他の魚を食べるタラのような魚がいて、サメとの対比が印象的。

 

 

 

 

(写真)Ferdinand HodlerWaldbach bei Leissigen, 1904

 

ホドラーの谷川の流れを描いた絵です。ホドラーは赤紫の光を上手く使ったスイスの雄大な山の絵が有名ですが、私はこのような谷川の絵にも非常に惹かれます。特に多く描かれている岩石の造形や色合い、力強い筆致は、非常に見応えがあります。

 

 

 

 

(写真)Ferdinand HodlerDer Tag, 1904/06

 

ホドラーの絵はリズムを刻んでいる、とも言われていますが、そのような絵のうちの一作品です。このチューリッヒ美術館には、大きなホドラーの作品だけの部屋があり、上記の絵を中心に、ホドラーの多様な作品がバランス良く展示されていて、もう圧巻でした!

 

 

 

(写真)Johann Heinrich FüssliFalstaff im Wäschekorb, 1792

 

好色なファルスタッフが、ウィンザーの陽気な女房たちに洗濯物カゴの中に押し込められているシーンの絵です。ヴェルディのオペラ/ファルスタッフだと第2幕第2場。ファルスタッフ、この小さなカゴにはとても入りきらないんですが(笑)。なお、私がどんだけこの主題が好きなのかは、楽しみまくっている、以下のオペラの観劇記事をご参照ください。

 

(参考)2018.12.15 ヴェルディ/ファルスタッフ(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12426270877.html

 

 

 

(写真)Johann Heinrich FüssliTitania liebkost Zettel mit dem Eselskopf, 1793/94

 

同じくヨハン・ハインリヒ・フュースリーの絵で、今度は真夏の夜の夢の主題の絵です。ロバに首ったけのティターニアが可愛い(笑)。妖精たちも幻想的です。フュースリーはここチューリッヒで生まれ、イギリスで活躍した画家です。一見して惹かれる、非常に印象的な絵で、今回のチューリッヒ美術館で最大の発見でした!

 

 

 

Mattia PretiOrpheus and Eurydice before Pluto and Proserpina, 1635/1640

オルフェウスとエウリディーチェ、地獄の王プルートーとプロセルピナの絵です。昨年ザルツブルクと東京で観た、オッフェンバック/地獄のオルフェでは、冴えない役柄のプルートーでしたが、この絵画ではたいそう立派に見えます。そう言えば、オペレッタではプロセルピナがいませんでしたね?

 

Hendrick ter BrugghenThe Annunciation, 1624

受胎告知、私のテーマの絵です。この受胎告知の絵は、マリアさまよりも天使が前面に出る大胆な構図なのが印象的。マリアさまは目を閉じて、すぐ上に鳩が飛来していました。

 

Konrad WitzAnnunciation, 1450

こちらも受胎告知の絵ですが、何と、天使がラテン語の告知の巻き手紙を示しているのが中心で、マリアさまは本を読む手しか描かれていない、という斬新な構図の絵!

 

Peter Paul RubensHoly Family, 1628

マリアさまとキリスト、ヨセフの絵です。1週間前にハンブルクでジョン・ノイマイヤー振付のバッハ/クリスマス・オラトリオのバレエを観たばかりなので、何だかとても感慨深かったです。バレエと絵画もつながりますね。

 

Giovanni LanfrancoRinaldo's Farewell to Armida, 1614

リナルドが魔女アルミーダに別れを告げている場面の絵です。リナルドはようやくアルミーダの魔の手から逃れられた場面ですが、アルミーダに対して憐れみの表情を見せていたのが印象的。こちらも昨年11月にヘンデル/リナルドの公演を観たので、感慨深い。

 

Augusto GiacomettiContemplation, 1907

野原に寝そべる緑・オレンジ・黄色の服装の男性3人が、仰向けで恍惚の表情を浮かべているもの凄い絵!観た瞬間にハッとしました!アウグスト・ジャコメッティは、細い人間の彫刻で有名なアルベルト・ジャコメッティの父親ジョヴァンニ・ジャコメッティのいとこです。

 

Albert WeltiWalpurgisnacht, 1896/97

屋根の煙突から多くの女性が、魔物のような何かに連れ去られていき宙を浮く、非常に印象的な絵です。

 

Giorgio de ChiricoThe Dirquieting Muses, 1918

ヘクトルとアンドロマケの絵が有名なジョルジョ・デ・キリコの「不安を与えるミューズたち」。一見してキリコと分る、非常に印象的な絵でした。キリコの絵にも惹かれますね~。

 

 

 

チューリッヒ美術館、非常に見応えのある、素晴らしい美術館でした!実は、ロスバゲ騒動で観光の時間が少なくなってしまった時に、最後の美術館をカットしてランチを食べに行く選択肢も一瞬頭をよぎりました。でも、いやいや、スイス料理は東京でも食べることができる、チューリッヒでしか体験できないことをしよう、と美術館を選択しましたが、それが大正解でした!

 

 

 

(写真)チューリッヒ美術館

 

 

 

(写真)美術館を出ると夕暮れ時のキルヒ通りが美しい!この通りはギャラリーも沢山あるので、時間のある場合、美術館の後にギャラリー巡りをしても楽しいと思います。

 

 

 

ということで、ロスバゲ騒動で出鼻をくじかれたチューリッヒへの旅でしたが、最終的には大変充実した滞在となりました。こういうトラブルがあると、かえって燃えますね、笑。

 

 

さて、この日も夜に観劇をするので、そろそろホテルに帰って休憩しましょう。この日の夜は一昨年が記念年で大変盛り上がった作曲家のオペラ。これがめっちゃ楽しい公演でした。次の記事で!(続く)