(冬の旅行記の続き) 新年2020年の初日、つまりベートーベン生誕250周年の初日にこの曲を聴くことができるウィーンって、どんなに素晴らしいまちなのか!ジャナンドレア・ノセダ指揮/ウィーン交響楽団のベートーベン/交響曲第9番ニ短調「合唱付き」を聴きに行きました。

 

 

Wiener Symphoniker

»Beethoven: Symphonie Nr. 9«

Wiener Konzerthaus

 

Dirigent: Gianandrea Noseda

 

Sopran: Lise Davidsen

Mezzosopran: Anna Maria Chiuri

Tenor: Russell Thomas

Bass: Ain Anger

 

Wiener Symphoniker

Wiener Singakademie

 

Beethoven

Symphonie Nr.9 d-moll op.125

 

 

 

(写真)ウィーンのコンツェルトハウス

 

 

 

(写真)コンツェルトハウスにはグスタフ・マーラー、そしてレナード・バーンスタインのプレートがあります。ともにベートーベンを得意とした指揮者ですね。

 

 

 

ニューイヤーを清々しくスタートできるコンサート、ということで、コンツェルトハウスは家族連れやカップルが多い印象です。一年の始まりの日に家族や恋人と第九を聴きに来る。本当に素敵な楽しみ方ですね。

 

どんなお客さんが来ているのか、興味深く眺めていたら、オーストリアのご家族、お父さん、お母さん、お姉ちゃん、弟さんの4人、背が階段状に綺麗に並んだ、見事な一列が目の前を通り、見とれました。

 

 

 

第1楽章。ジャナンドレア・ノセダさんが冒頭の指揮棒を降ろすと、フォルテでブワッと音が飛び出すよう。抵抗するも跳ね返され、怒り、悲しみ、無力感などを感じます。

 

再び冒頭の主題が戻る場面は音を短く切って、バッサバッサ打撃を受けるよう。聴いていて本当に恐ろしくなる演奏。最後も取りつく島のないくらいにビシバシやられて、この楽章を終わりました。

 

 

第2楽章。ノセダさん、この楽章は速いインテンポで進め、強弱だけを大きく変化させる指揮です。ニヒリズムとの闘いの音楽、それを大いに鼓舞するティンパニ。

 

しかし次から次へと湧き出るニヒリズム、そして諦めの心境に。そんな印象を受ける演奏です。この流れの中で聴くと、第2主題は頼もしい援軍がユーモアを持ちつつ登場するイメージを持ちました。

 

 

第3楽章。ここも非常に速いテンポ!しかもこれまで聴いたことのないようなフレーズを繋いで、裏の旋律を度々浮き立たせるような演奏です。

 

これは一体何を表しているんだろう?注意深く聴いたところ、始めは「希望」を表しているのかな?とも思いましたが、次第に変奏曲が進んで旋律が複雑になってくると、これは「家族やパートナーのいる喜びや安らぎ」を示しているのでは?と感じました。

 

変奏曲は様々な家族の情景、あるいは家族が年を経ることによる変化を表わしているかのよう。サブの旋律を強調するのは支えや励みとなる奥さん/旦那さん、あるいは子供たちを意識させます。後半の祝祭的な盛り上がりはもしかすると、そうした家族とともにあった幸せな人生の大団円を表わしているのかも知れません。

 

しかし、それで幸せ裡には終わらない、陰りを帯びた、微妙なニュアンスの音楽が後に続きました。

 

 

第4楽章。ここも速いテンポ。チェロが第1楽章と第2楽章の主題を否定する場面は、明らかにバッサリ否定していて非常に印象的!驚きすら感じました!

 

チェロによる歓喜の歌の始まりは、ごく弱音でなかなか強くなりません。急激にフォルテになるのは、そのアイデアが突然降って浮かんだような印象。そのまま盛り上がっていき、後には声の饗宴が続きます!

 

アイン・アンガーさんの素晴らしい歌い出し、リーゼ・ダヴィドセンさんが強力な歌で続きます。そして合唱!ウィーンの合唱は、見事にハモる日本の合唱とは異なり、個々の方々の力を感じる合唱ですが、今日の合唱ではまとまり感の素晴らしさを感じました。

 

この辺りは合唱指揮者の存在もありますが、オペラが得意なノセダさんならではなのかも。最後もよく追い込んで終わりました。ブラボー!

 

 

 

2020年、ベートーベン生誕250周年の初日に聴けた第九は、ジャナンドレア・ノセダさんとウィーン交響楽団の速いテンポの見事な演奏、歌手のみなさんや合唱も抜群で、素晴らしい第九となりました!観客のみなさまからも割れんばかりの大きな拍手!

 

また、このコンサートは、第九をテーマとしたグスタフ・クリムトのベートーベン・フリーズを観たすぐ後に聴きました。演奏からの印象だけでなく、いろいろな想いが交錯して極めて感動的!忘れられない一日となりました!

 

 

 

(写真)2020年は、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート&ウィーン交響楽団の第九のダブルヘッダーという最高のスタートとなりました!今日は祝杯です!まずはオーストリアのセクト(スパークリングワイン)と第九のプログラム

 

 

(写真)前菜はスモークサーモンの寄せ合わせ。セクトと抜群に合います。

 

 

(写真)メインはウィーンでのお約束のヴィーナーシュニッツェル。ワインはオーストリアならではのグリューナーフェルトリナー。最高の食事!

 

 

(写真)デザートはインペリアルトルテとブランデー

 

 

(写真)帰り道に通りかかったムジークフェライン。昼間の賑やかさが嘘のよう。夜のムジークフェラインも幻想的で美しい。後ろに見えるカールス教会との素敵な2ショット。

 

 

 

 

 

(追伸)新型コロナウイルスの感染が広がり、文化イベントへ中止などの要請があったことから、コンサートやオペラが次々とキャンセルとなっています。アンネ=ゾフィー・ムターさんのリサイタルまでの時点では、感染症の専門家の方々がよくおっしゃっている「正しく恐れよ」という観点から、しっかりと対策を講じた上で聴きに行っていましたが、その後の感染の広がりの状況を見ると、こればかりは致し方ないように思います。

 

まずは何よりも、重症化された方々を含め、発症された方々が快方に向かうように。そして、これ以上、感染が広がらないことを祈っています。また、文化イベントのキャンセルや学校の休校なども含め、新型コロナウイルスにより様々な影響を受けた多くの方々の生活が、早く落ち着き、元に戻ることを願っております。