大好きなバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の定期演奏会を聴きに行きました。阪神淡路大震災から25年、その追悼となるモテット3曲を中心としたプログラムです。

 

 

バッハ・コレギウム・ジャパン第136回定期演奏会

J.S.バッハ:教会カンタータ全曲シリーズvol.77

祈りのモテット

(東京オペラシティ コンサートーホール)

 

指揮:鈴木 雅明

ソプラノ:松井 亜希

アルト:ベンノ・シャハトナー

テノール:櫻田 亮

バス:ドミニク・ヴェルナー

オルガン:鈴木 優人

 

管弦楽と合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

J.S.バッハ/

ファンタジア ハ短調BWV562

《我ら悩みの極みにありて》BWV641

詩編第51編《消してください、いと高き主よ、私の罪を》BWV1083

~ペルゴレージ《スターバト・マーテル》による~

 

カンタータ《わが片足すでに墓穴に入りぬ》より〈シンフォニア〉BWV156/1

モテット《御霊は我らの弱さを支え助け給う》BWV226

モテット《来たれ、イエスよ、来たれ》BWV229

モテット《歌え、主に向かい新しい歌を》BWV225

 

 

 

(写真)本コンサートのプログラム。シンプルな表紙ですが、鈴木雅明さんの珠玉の巻頭言を始め、非常に読み応えのある内容です。私のバッハの教科書です。

 

 

 

まずは鈴木優人さん独奏のオルガン2曲から。悲しみを湛えたファンタジア、憐れみや鄙びた雰囲気の《我ら悩みの極みにありて》。鈴木優人さんはいつもながらの素敵なオルガン。木の雰囲気の東京オペラシティコンサートホールで聴く真摯なオルガンの音色は本当に素晴らしい。

 

 

続いて詩編第51編《消してください、いと高き主よ、私の罪を》。ペルゴレージ《スターバト・マーテル》をバッハが編曲した作品です。悲しい曲調の歌がずっと続きますが、最後の方は明るくなり、ラストはアーメンで終わる曲。松井亜希さんとベンノ・シャハトナーさんの独唱も素晴らしく、大変聴き応えがありました。

 

 

 

後半はカンタータ《わが片足すでに墓穴に入りぬ》より〈シンフォニア〉から。何と言う感動!前半最後の曲が長い苦難を経て救われる曲でしたが、神の慈しみを感じさせる音楽がBCJの古楽のオーボエによって見事に描かれます。聴いてすぐに涙が流れてきた、感動の音楽!

 

(参考)バッハ/カンタータ《わが片足すでに墓穴に入りぬ》より〈シンフォニア〉。安らぎたい方、ほっこりされたい方はぜひ聴かれてみてください!

https://www.youtube.com/watch?v=V5hF-RjfnJk (3分)

※指揮者・オルガニストのKay Johannsenさんの公式動画より

 

 

そしてメインのモテット3曲。始まる前に鈴木雅明さんから、モテットの位置付けやカンタータとの違い、歴史的な変遷など、実に興味深いお話がありました。世界を代表するバッハのスペシャリストの知識と気概に改めて脱帽です。

 

その鈴木雅明さんのおっしゃる通り、お葬式(ライプツィヒのトーマス学校校長&ライプツィヒ大学詩学教授のエルネスティ教授)の機会の音楽にしては賑やかな曲のモテット《御霊は我らの弱さを支え助け給う》、祈りの雰囲気が素晴らしいモテット《来たれ、イエスよ、来たれ》、とても晴れやかな曲、合唱の各パートの融合が見事だったモテット《歌え、主に向かい新しい歌を》と、3曲とも大いに堪能することができました!

 

 

アンコールはバッハ/《いざ打てかし、願わしき時の鐘よ》。ベンノ・シャハトナーさんの独唱が素晴らしく、鈴木雅明さんによる鐘の演奏まで付きました。先日聴いたウィーン・リング・アンサンブルのライナー・キュッヒルさんのパーカッションは少しヒヤヒヤするところが見せ場(笑)ですが、鈴木雅明さんは2つの鐘の難しいコンビネーションもピタッと決めてさすが!BCJは独唱陣・オケ・合唱とも、今日も鉄板に素晴らしい演奏でした!

 

 

 

さて、冒頭でご案内したように、このコンサートは「祈りのモテット」と題して、阪神淡路大震災から25年となる今年、その犠牲者を追悼するコンサートです。なぜなら、バッハ・コレギウム・ジャパンは東京とともに神戸が活動拠点の古楽の楽団だから。鈴木雅明さんご自身も神戸で生まれ育っています。1995年に予定されていた第1回のカンタータの録音は震災で延期となり、代わりに震災チャリティーコンサートが開催されたいきさつもあります。

 

 

私は東京生まれの東京育ち、正真正銘の東京っ子です。東京っ子って港町の横浜に憧れを持っている人が多くいますが、同じく港町の神戸や長崎にも大いに憧れの眼差しを向けます。神戸は震災の前に一度遊びに行ったことがあり、北野の異人館や夜景、神戸牛、老舗の洋菓子などなど、最高の滞在となりました。しかし、その神戸が大震災に見舞われてしまい、大いに心を傷めました…。

 

そして、その震災の支援の仕事に携わったり、オリックス・ブルーウェーブが「がんばろうKOBE」のスローガンのもと優勝を果たして歓喜したり、ゲルハルト・ボッセさん指揮の神戸市室内合奏団の東京公演を聴きに行ったり、神戸出身の会社の後輩を可愛がったり。神戸は何かとご縁と想いのあるまちです。

 

 

その神戸に非常にゆかりのあるバッハ・コレギウム・ジャパン。バロックが苦手だった私にバッハの素晴らしい世界を教えてくれたBCJ。そのBCJによる阪神淡路大震災の25年を追悼するコンサートは誠に感慨深く、とても感動的なコンサートとなりました。

 

 

最後に、まだ震災の傷跡も残っているとは思いますが、見事に復興した神戸のますますの発展を、神戸に対する変わらぬ憧れの気持ちを持ちつつ、祈っております!