パーヴォ・ヤルヴィさんのN響の定期演奏会、ロシア・プロを両日聴きに行きました。レティシア・モレノさんのヴァイオリンも楽しみです。

 

 

NHK交響楽団第1934回定期演奏会Bpro.

(サントリーホール)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ヴァイオリン:レティシア・モレノ

 

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調

ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調

 

 

 

前半はプロコフィエフ。プロコフィエフが結婚までも考えていた恋人と、第一次世界大戦や恋人の両親の妨害により別れてしまった、ほろ苦い恋を投影した音楽です。

 

第1楽章は冒頭からの憧れの旋律にうっとり。レティシア・モレノさんは雲の切れ目から月が淡く見えるような、弱音による幻想的なヴァイオリンが見事。その後には、シニカルな音楽も聴こえてきます。ラストにフルート→ピッコロにより主題が帰って来る場面の夢想感がいい!

 

第2楽章は非常に技巧的なヴァイオリン・ソロで、モレノさんの超絶技巧を楽しめます。本当に様々な音を鳴らす音楽で、プロコフィエフが「スケルツォの中のスケルツォ」と言ったのも頷けます。

 

第3楽章はファゴットが活躍してユーモラスな音楽が聴かれた後、ラストにまた第1楽章冒頭の主題が回帰する終わり方が素敵!モレノさんの憧れに満ちたヴァイオリン、初恋を遠く回想するような、チャーミングなプロコフィエフでした!

 

 

 

後半はラフマニノフ。名曲中の名曲、交響曲2番です。第1楽章。冒頭のヴァイオリンからは、苦悩や逡巡のニュアンスが強く感じられ、何かこれから特別なものを聴ける予感に満ち満ちています。チェロの旋律辺りから這い上がるように飛翔し速くなっていくオケ。この冒頭の3分くらいの部分を聴いて私が感じたのは、

 

これは、前半のプロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番の続きではないか?

 

悲しい恋に打ちひしがれた男性が、新しい人生へと立ち直っていく物語を大いに予感させます。特に長調の第2主題は憧れ感に満ちて、新しい出逢いを感じさせます。パーヴォさんは速めの進行ですが、ところどころタップリ歌って自由自在。N響は低弦がよく鳴って充実の響き、聴き応え満点!

 

 

第2楽章。この楽章も速めのテンポで非常にリズミカルな演奏。N響のみなさんの名人芸が光ります。失恋から立ち直りつつある男性が、作曲に邁進している様子を、その音楽から感じました。その流れで、途中の木管や金管が追い込むように、まるで笑い声のようにリズムを刻むシーンを聴いて思ったのは、

 

これは作曲家の男性を揶揄する、心ない批評家や聴衆を表しているのでは?

 

つまり、ラフマニノフの2番は、R.シュトラウス/英雄の生涯に似た部分を持つ音楽なのではないか?

 

もうビビビッと閃いた瞬間でした!

 

 

そして迎える第3楽章。この流れだと、この楽章は英雄の生涯の「英雄の伴侶」にシンクロします。冒頭のN響の弦楽のやや上ずり気味の音色が素晴らしい!クラリネットまで待てず、すぐに涙が溢れてきます!はやっ!(笑)

 

そして古今東西、こんなに魅了される旋律はなかなかないクラリネットのソロ。今日の凜としたクラリネットからは、まだ付き合い始めて間もない恋人たちの、恥じらいながらの喜びや切なさ、憧れを大いに感じて、ほとんどキュン死しそうになりました!

 

(参考)ラフマニノフ/交響曲第2番第3楽章。そのクラリネットの切ない旋律は0:39~2:43です。まだ聴かれたことのない方はぜひ!指揮は山田和樹さんですが、雰囲気のある指揮、いい表情しています。

https://www.youtube.com/watch?v=59cLZSkkjPA (14分)

※Russian Philharmoniv- Moscow City Symphonyの公式動画より

 

そして第3楽章のトゥッティ、一番の盛り上がりの場面は、速めのテンポで突き進んだ上での大きな溜め!曲想を大いに盛り上げるパーヴォさんの真骨頂きた~!この辺りはパーヴォさんも尊敬する、レニーの指揮を彷彿とさせます。

 

そしてイングリッシュ・ホルンを始め様々な管楽器でクラリネットの旋律をリレーしていくシーン。まるで二人の喜びが、幸せのオーラが世界に広がっていくような、そんな素敵なシーンにも大いに魅了されます。

 

そして締めはヴァイオリン。繊細な弱音、そして何度も入る絶妙な溜め。さすがマロさん、よく分かってらっしゃる!感動的な第3楽章でした!

 

 

第4楽章。賑やかな音楽の楽章ですが、この流れで聴くと、ここは二人の結婚パーティ、あるいは二人で人生の波乱万丈に向かっていく音楽のよう。N響がガンガン鳴らして、パーヴォさんが煽って、スペクタクルに盛り上げる演奏、もう痺れまくりました!最後のティンパニの強烈なドコドコドコドコ♪は一体なんだ~!(笑)

 

 

きた~!パーヴォさんとN響のダイナミックでめちゃめちゃ感動的なラフマニノフ!もう圧巻でした!

 

 

いや~凄かった!観客のみなさんからも一斉にブラボーが飛んでいました!さらにチェロのトップの桑田歩さんがご卒業ということで、大きな花束&万雷の拍手!帰りがけに大学生と思われる女性のグループが、「やばい!」と顔をキラキラさせて笑顔で帰って行かれていたのがとても印象的でした。

 

 

 

私はこのラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調で、これまで最も思い出深いコンサートは、2000年のエフゲニー・スヴェトラーノフ/N響の定期演奏会です。会場は同じサントリーホール。特にゆったりとスケールの大きな第3楽章が超絶に感動的で、第3楽章の途中、サントリーホールの2階席のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた、伝説のコンサートです。

 

この時の演奏の印象は、老巨匠のスヴェトラーノフさんによるゆったりとした演奏、ということで、凍てつく寒い冬に、おじいちゃんが暖炉で温まりながら、うたた寝しつつ、遠い昔の初恋を懐かしく回想する。そんな印象を持ち、それが長らく私の第3楽章のイメージの刷り込みとなっていました。

 

しかし、今日の第3楽章は、リアルな若い恋人の憧れと慈しみの音楽という印象を強く感じました。パーヴォさんとN響の演奏の妙、そしてプロコフィエフとラフマニノフを並べて、縦でイメージを膨らませたプログラムの妙を大いに感じたところです。

 

20年間の時を経て、再びN響による感動的なラフマニノフ2番をサントリーホールで聴けたのもとても感慨深い。こういう発見や感動があるから、ライヴを聴きに行きたくなるのです!

 

 

 

そして今週は2日(日)・3日(月)とフランソワ=グザヴィエ・ロト/都響の最高のラヴェル(ダフニスとクロエ)、5日(水)・6日(木)とパーヴォ・ヤルヴィ/N響のこれまた最高のラフマニノフと、日本を代表する2つの偉大なオーケストラによる名演を、何と1週間で4回も体験することができました!

 

現在、この冬の旅行記でウィーンやハンブルクでの最高の音楽体験を綴っている途中ですが、いやはや、東京も凄いことになっています!

 

 

 

 

(写真)ラフマニノフ2番を聴いた後のフランツのお約束はウォッカ(笑)。甘い飲み口がラフマニノフに抜群に合います。ということで、終演後はロシア料理のレストランに直行!まずはいつものストリチナヤ。これです、これ!このストリチナヤの円やかでとろりとした甘さが、第3楽章に非常に合うのです!

 

しかも昨日今日と寒気が来てめっちゃ寒いですが、これがラフマニノフとウォッカを楽しむには、むしろ、おあつらえ向き!(笑)本当に何が幸いするか、分りません。

 

 

 

(写真)続いて唐辛子の描かれたグラスに興味を惹かれて、別の種類のウォッカ、ネミロフ・ハニーペッパー。ウォッカに蜂蜜と唐辛子が入って複雑な味ですが、これも美味しい!少々スパイシーなロールキャベツと抜群に合いました!