この夏の旅行は10日間で18公演を楽しんだ、大変充実した旅となりましたが、その最後を飾る公演、パトリツィア・コパチンスカヤさんのヴァイオリン・リサイタルを聴きに行きました。何と言っても、エネスコが楽しみです!

 

 

Salzburger Festspiele 2019

Solistenkonzert

Zeit mit ENESCU

Mozarteum

 

Violine: Patricia Kopatchinskaja

Klavier: Polina Leschenko

 

George EnescuImpressions denfance, Suite für Violine und Klavier D-Dur op. 28

Maurice RavelSonate für Violine und Klavier Nr. 2 G-Dur

George EnescuSonate für Violine und Klavier Nr. 3 a-Moll op. 25 - “dans le caractère populaire roumain”

Maurice RavelTzigane - Rhapsodie de concert für Violine und Klavier

 

 

 

(写真)会場は再び、午前中のモーツァルト・マチネを聴いたモーツァルテウム

 

 

 

おやっ!?フランツさん、室内楽を聴きに行くとは珍しい?

 

はい、そうなんです。東京でも普段めったに室内楽(ピアノや歌以外)は聴きに行きませんし、ましてや海外であれば、オペラやコンサートを優先したいところ。ここザルツブルク音楽祭で室内楽を聴くのは初めてです。

 

しかし、どうしても聴きたいと思ったのはパトリツィア・コパチンスカヤさんがエネスコを弾くから。コパチンスカヤさんは大きな話題となった今年2月のテオドール・クルレンツィス/ムジカ・エテルナの来日公演でソリストを務めていましたが、私がその衝撃的な演奏に驚嘆したのは噂のクルレンツィスさんの指揮ではなく、コパチンスカヤさんのヴァイオリンの表現力の凄さでした。

 

(参考)2019.2.11 クルレンツィス/コパチンスカヤ/ムジカ・エテルナのチャイコフスキー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12439738790.html

 

 

あのヴァイオリンをまた聴きたい!そしてザルツブルク音楽祭で聴くチャンス到来!しかもコパチンスカヤさんはモルドヴァのご出身で、ルーマニアの作曲家であるエネスコを聴くのは特別な機会です(ルーマニアとモルドヴァは民族・言語がとても近い)。前日にエネスコのオペラ/オイディプス王を観てエネスコ祭になるのもいい流れ。

 

 

これは聴きに行くしかないでしょう!!!

 

 

 

まずはエネスコ/幼き頃の印象。最後のLever de soleilが素晴らしい曲!日の出の音楽ですが、とても雄大に弾いていました。その前の夜中の嵐の音楽も、激しいヴァイオリンで聴き応え十分。途中、鳥が鳴く曲もありましたが、鳥の声をピアノで表わすメシアンよりも、ヴァイオリンなのでより近く感じます。コケコッコの曲も出てきました(笑)。ハイドンの83番を思い出しますね。

 

コパチンスカヤさんはヴァイオリンを上ずらせたり、引っ掻いたり、フェザータッチで音を出したり、本当に表現力が豊か。ピアノも壮絶なアルペジオがあったり、もの凄く技巧的。コパチンスカヤさんに注目が行きますが、ピアノのポリーナ・レシェンコさんも相当に凄い!メシアン、後期のスクリャービン、ラヴェルなど様々な音楽を感じますが、それだけではない独特な音楽。非常に魅了されました!

 

 

続いてラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ2番。全く初めて聴きますが、第2楽章が始まったら、あれ?この曲は聴いたことがある?と。そう思ったのは、クロード・ソーテ監督のフランス映画「愛を弾く女」で使われていたからでした(主演は私のフランス映画でのアイドル、エマニュエル・べアールさん)。

 

コパチンスカヤさんは客席を見ながら、思わせぶりにピィツィカートを弾いたり、逆に渾身の力でフォルテを弾いたり、本当にいろいろな弾き方をします。この方の表現力の幅って本当に凄い!ジャズのリズムもいいですね。第3楽章もかなり盛り上がって終わりました。観客も大盛り上がり!

 

 

 

後半は再びエネスコでヴァイオリン・ソナタ3番。これは一言では表わすことのできない、もの凄い曲!第2楽章と第3楽章には民族的な響きもふんだんに出てきますが、第1楽章はとても神秘的だったり、多様な曲。エネスコの作曲の幅広さを感じます。

 

特に第3楽章は壮絶な演奏!コパチンスカヤさん、演奏が終わったら、ピィツィカートで大変だった右手をブンブン振って(笑)、壮絶な演奏を物語っていました。コパチンスカヤさん、感極まっていらっしゃったようにも見えました。

 

 

最後はラヴェル/ツィガーヌ。これもまた抑揚を大きく付けたもの凄い演奏!ツィガーヌはリサイタルのチラシでもよく見かける、ヴァイオリンではとても有名な曲だと思いますが、私この曲は過去に聴いたことがあるかどうかも分からないくらい、馴染みのない曲。お~い、室内楽の曲もちょっとは勉強しろ~!(笑)

 

でも、分かる。この演奏がどれだけ特別なものなのか!私、この曲をもう一生聴けなくてもいい、と思ったくらいの、これまた壮絶な演奏でした!終演後、会場は爆発的に盛り上がっていました!!!

 

 

アンコールはカンチェッリ/レット・ギドン・ダン。小粋でおしゃれなアンコール!男性が女性に言い寄るも振られてしまい、ブツクサ言って去っていくような曲(笑)。コパチンスカヤさんの表現力はユーモアを必要とする場面でも素晴らしい!

 

 

 

パトリツィア・コパチンスカヤさんとポリーナ・レシェンコさんのリサイタル、もう圧巻でした!この2人のコンビの演奏は本当に凄い!室内楽には相変わらずそんなに興味がありませんが、それでも次にこの2人が来日されたら、曲目が何であっても聴きに行きたいくらいの素晴らしさ!最高のヴァイオリン、そしてピアノでした!

 

 

 

終演後は旅行の最終日、終演時間も21:30と早かったので、食事を楽しみに行きました。旅行最後の食事なので奮発して少し高級なところも考えましたが、今日のコパチンスカヤさんたちの民族的な演奏の後は、気さくな地元の料理とお酒を楽しめるところがいいでしょう。ということで、ビールの美味しい気さくなお店に行きました。

 

 

 

(写真)シュテルンビアと今日の3公演のプログラム(モーツァルト・マチネ、ヴェルディ/シモン・ボッカネグラ、コパチンスカヤさんのヴァイオリン・リサイタル)。

 

なぜここにプログラムが3つあるかと言うと、公演と公演の間の時間が短く、一度もホテルに帰って休めなかったからです。結局この日は、朝9:00のモーツァルトの住居から21:30まで、ずっと外にいました(笑)。音楽祭を聴くのも、本当に体力勝負です。逆にそれだからこそ、終わった後のビールは格別ですね!

 

 

 

(写真)サーモンのマリネ。ビールに合って美味しい!

 

 

(写真)ヴィーナーシュニッツェル。ビールは何と、「バーンスタイン」という銘柄!(笑) この名前のビールがあるんですね!コクがある一方で酸味もあって後味はスッキリ。まるでレニーの複雑な人格を表しているかのよう(笑)。

 

 

レニーとザルツブルク音楽祭と言えば、1975年のウィーン・フィルとのマーラー8番が思い出されます。CDが名盤として有名ですが、「そこにあるのは、歌!歌!歌!」と識者の方が興奮して評していた、正に燃え上がった熱い演奏です。そのレニーの熱いマーラー8番のことを思いながら、旅行最後の食事をゆっくり味わいました。

 

 

 

さて、夏の旅行の出来事の記事は今回で終わりです。全部で31本の記事、おかげさまで今回も非常に充実した旅となりました。もう1本、いつものように旅行のまとめと振り返りなどの記事をアップして、終わりにしようと思います。