素晴らしかったムーティさんとウィーン・フィルのヴェルディ/レクイエム。少し休憩を取って、午後から観劇へと出掛けました。2019年のザルツブルク音楽祭の目玉の公演の一つ、今年が生誕200周年となるオッフェンバック/地獄のオルフェです!

 

 

Salzburger Festspiele 2019

Jacques Offenbach

Orphée aux enfers

Haus für Mozart

 

Musikalische Leitung: Enrique Mazzola

Regie: Barrie Kosky

Bühne: Rufus Didwiszus

Kostüme: Victoria Behr

Licht: Franck Evin

Choreografie: Otto Pichler

Choreinstudierung: David Cavelius

Dramaturgie: Susanna Goldberg

 

LOpinion publique: Anne Sofie von Otter

John Styx: Max Hopp

Eurydice: Kathryn Lewek

Orphée: Joel Prieto

Aristée / Pluton: Marcel Beekman

Cupidon: Nadine Weissmann

Vénus: Lea Desandre

Jupiter: Martin Winkler

Junon: Frances Pappas

Mars: Rafał Pawnuk

Diane: Vasilisa Berzhanskaya

Mercure: Peter Renz

 

Tänzerinnen und Tänzer: Alessandra Bizzarri, Martina Borroni, Kai Braithwaite, Damian Czarnecki, Shane Dickson, Michael Fernandez, Claudia Greco, Merry Holden, Daniel Ojeda, Marcell Prét, Tara Randell, Lorenzo Soragni

 

Vocalconsort Berlin

 

Wiener Philharmoniker

 

 

 

(写真)開演前のハウス・フュア・モーツァルト

 

 

(写真)公演のポスター。ジュピテールの楽しいハエの姿(笑)。

 

 

 

あらすじをごく簡単に。要するにオルフェオとエウリディーチェの物語のパロディです。オルフェ(オルフェオ)とユリディス(エウリディーチェ)の夫妻は、お互いウンザリしていて、ユリディスが蛇に噛まれて死んだら、オルフェは大喜びする始末(笑)。しかし世論(「世論」という役が出てきます)が許さず、オルフェはユリディスを返してもらうよう、しぶしぶオリンポスの神様に頼みに行きます。

 

オルフェの頼みを聞いたジュピテールはユリディスに興味を持ち、地獄に降り、ハエの姿にまでなってユリディスをくどきます(笑)。しかしプリュトンに咎められて、有名な地上に出るまで振り返ってはダメ、のシーンに。なかなか振り返らないオルフェにジュピテールは業を煮やし、雷を投げつけます!びっくりしたオルフェが後ろを振り返り、オルフェとユリディスは無事に別れてメデタシメデタシという、皮肉やナンセンスが満載の、大人のお楽しみの物語です。

 

 

 

冒頭から悲しい響きながら、それだけではない含みのある音楽。オケは午前中にも聴いたウィーン・フィル。奏でる大人の雰囲気の音色が本当に素晴らしい。冒頭は世論の独唱ですが、もう1人加わりました?世論のセリフの一方で、それを茶化した話を詳しくしている印象です。ただし、世論がオッフェンバックの話をする場面だけは、そのもう一人の話がやけに簡単になって、逆に場内爆笑(笑)。

 

オルフェがユリディスにヴァイオリンを聴かせ、ユリディスが嫌いなヴァイオリンにうんざりする掛け合いが楽しい!オルフェはヴァイオリンを弾くのを邪魔されながらも、地面の上を回転しながら弾いたり、タンスを開けると沢山のヴァイオリンが出てきたり(笑)、楽しさ満点の舞台です。

 

冒頭に出てきたもう一人の人物は、オルフェやユリディスが歩く音やドアの音、ユリディスがお化粧でスプレーを使う音などを口で表現します!これがものの見事に擬態音を模写して楽しい!歌以外のセリフの部分も、この方が男女しゃべり分けて超早口で担います。ここでは「弁者」と呼ぶようにします。

 

羊飼いのアリステ(プリュトンの変装)がミツバチを歌う場面では、ミツバチの格好をしたバレエダンサーが10人くらい出てきて踊ります!ミツバチ、おしりフリフリで可愛い!よく見ると男性も(笑)。プリュトンに薬をかけられ、ミツバチたちがバレエのつま先立ちでずらっと並ぶのが可笑しい。

 

通常の演出では、プリュトンが仕掛けた蛇にユリディスが噛まれて死にます。しかし、今回の演出では、ユリディスはすぐに蛇がいることに気付いて、危ないからと言ってベッドから離れてしまいます?替わりにベッドで寛ぐプリュトン。

 

ユリディスが、そこには蛇がいるから注意して!と言ったら、アリステは際どいジョークで返します!(笑) そしてユリディスは結局死にますが、蛇に噛まれたのではない死に方!観客大受けのシーンでしたが、ブログではとても書けません(笑)。

 

ユリディスが死んだことを知って喜ぶオルフェですが、世論から「そんなことではヴァイオリンの教え子たちの信頼を失うわよ」と正論を言われ、いやいやオリンポスに向かいます(笑)。オリンポスは舞台セットと思ったら人が沢山が重なっていました!日常に飽き飽きして、立ち上がることすらおっくうな様子。まるで、サンリオの「ぐでたま」のよう(笑)。

 

ディアヌの歌、メルキュールの歌は気の利いた踊り付き。オルフェと世論がジュピテールに訴えると、ジュピテールはユリディスに興味津々。結果、みんなで地獄へ行くことになりました。神々のみなさんが地獄へ行く喜びようがまた凄い!(笑) 天国、どんだけ退屈なところなんでしょう!

 

ちなみに、このシーンはほとんどワーグナー/ラインの黄金で、第2場から第3場、ヴォータンとローゲがニーベルハイムに降りていくシーンを思わせます。もちろん、地獄のオルフェよりもラインの黄金の方が世に出たのは後ですが、まるでラインの黄金までパロディにしてしまっているかのよう。

 

ラストは「ラ、ラ、ラ!」と楽しい音楽に合わせてみんなで踊って、キレキレのダンスも入って、めっちゃ楽しいラスト!それをまたウィーン・フィルが極上の響きの音楽!ポルカ・シュネルなども演奏するので、こういう音楽もウィーン・フィルはお手のものなんですね。(11月5日のコンサートでも、素晴らしいポルカ・シュネルが聴けました。)

 

 

 

後半はユリディスのアリアから。弁者を引き連れて魅せました!拍手が前半よりも多いのは幕間のお酒のせいでしょうか?(笑) ユリディスを見張る看守ジョン・スティクスとのやりとりは、ユリディスが眠ってしまい弁者の一人芝居で魅せます。その後のジョン・スティクスの、かつてはボイオティアの国王だったのに、と嘆く歌は、何と!これまでずっと語りや擬態音を発していた弁者が歌いました!

 

つまり舞台の最初から弁者として狂言回しの役を務めていたのは、ジョン・スティクスだったんですね!すると、第3幕のユリディスだけでなく、全幕を看守として「監視」していたことになります。あるいは元国王が民衆のことを監視している、という何かの皮肉?これはかなり意外な展開で面白かったです。

 

有名なハエのアリアは、口説かれるユリディスの方がノリノリで、ハエ姿のジュピテールはユリディスの勢いに圧倒される逆の展開!(笑) キャスリーン・リーウェックさんの体当たりの演技がもう凄いのなんの!

 

プリュトンの地獄の祭典は、首のない男だったり、キッチュな踊りが満載!(笑) 有名なフレンチカンカンの場面では「これは初演時のオリジナルの踊り」との字幕が出ていました!最後、開脚でズラッと並ぶキメの踊りを、途中に入れていたのが印象的です。

 

またウィーン・フィルのフレンチカンカンが何と雰囲気のあること!午前中にシリアスなヴェルディ/レクイエムを演奏していたのと同じオケとは、とうてい思えないノリノリの演奏でした!

 

オルフェとユリディスが地上へ向かうシーン。オルフェが後ろを振り向いたのは、雷も鳴ってましたが、ユリディスがオルフェの持つヴァイオリンを奪ったから!つまり、ユリディスがこんな男とまた地上で暮らすのはまっぴらご免だ、ということです(笑)。それをオルフェスも喜んでいて、もう可笑しいのなんの!(笑)

 

最後はユリディスのゆっくりの歌い出しから、フレンチカンカンで終わりました。上半身裸の男女の踊りが続き、最後は男性のダンサーによる開脚の練習のシーンという印象的なラストで締め。この旅で沢山楽しんで来た、ウィンナ・オペレッタとは一味違う、風刺や皮肉が利きまくった、めちゃめちゃ楽しい地獄のオルフェでした!

 

 

 

カーテンコールも大いに盛り上がりました!初日の公演ではありませんでしたが、演出のバリー・コスキーさんも登場!一部からブーイングもありましたが、コスキーさんは耳に手を当てて、ブーイングを馬鹿にしたような表情で挑発!(笑) そしてブーイングをかき消す大歓声!コスキーさん演出の舞台は、このところ、魔笛、ニュルンベルクのマイスタージンガーと立て続けに観ていますが、創意工夫が随所にあって、どれも本当によく出来ています。今日はセリフと擬態音を全てジョン・スティクスに語らせていたのが秀逸でした。

 

(参考)2017.8.15 ワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガー(バイロイト歌劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12311108974.html

 

(参考)2018.4.7 モーツァルト/魔笛(ベルリン・コーミッシェ・オーパー)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12366730001.html

 

 

 

オッフェンバック生誕200周年に、ザルツブルク音楽祭で楽しい楽しい地獄のオルフェを観ることができ、感無量!素晴らしい公演でした!

 

 

 

 

(写真)終演後は大好きなフュルストにて休憩。素晴らしいオッフェンバックの公演の余韻が残る中ですが、この後さらに、今年のザルツブルク音楽祭の超目玉の公演がありました!次の記事で!