10月10月(木)にクララ・シューマンのピアノ協奏曲を聴ける素晴らしい企画を立ててくれた東京藝術大学。今日はオルガン演奏と、日記&書簡の朗読によるコンサートを聴きに行きました。
クラーラ・シューマン生誕200年に寄せて
上野の森オルガンシリーズ2019
オルガンが奏でる愛と告別の調べ
- クラーラとローベルト、ブラームスらの書簡と共に -
(東京藝術大学奏楽堂)
オルガン:廣江 理枝、徳岡 めぐみ、近藤 岳
ソプラノ:平松 英子
バリトン:萩原 潤
朗読:瀬戸口 郁、川中子 みのり
プレトーク・朗読テキスト構成:小澤 和子
R.シューマン/《ペダル・フリューゲルのための4つのスケッチ》より<第2曲>ハ長調
C.シューマン/《3つの前奏曲とフーガ》より<第2曲>変ロ長調
R.シューマン/《ペダル・フリューゲルのための4つのスケッチ》より<第1曲>ハ長調、<第5曲>ロ短調
C.シューマン/《3つの前奏曲とフーガ》より<第3曲>ニ短調
R.シューマン/《バッハの名による6つのフーガ》より<第6曲>変ロ長調
R.シューマン/《森の情景》より<第7曲 予言の鳥>ト短調
J.ブラームス/《フーガ》変イ短調
J.ブラームス/《前奏曲とフーガ》ト短調
C.シューマン/《3つの前奏曲とフーガ》より<第1曲>ト短調
Th.キルヒナー/《オルガンのための13の小品集》より<第2曲 前奏曲>ト短調、<第12曲 叙情的一葉>変ト長調
J.ブラームス/《4つの厳粛な歌》より<第3曲 おお死よ、お前はなんと苦痛なのか>
J.ブラームス/《11のコラール前奏曲》より<第10曲 我が心の切なる願い>、<第11曲 おお世よ、われ汝を去らねばならない>
R.シューマン/オラトリオ《楽園とペーリ》より<第17曲 さあ安らかに眠れ、豊かな香りを夢見て>
(参考)2019.10.10 ジョルト・ナジ/伊藤恵/東京藝大so.のクラーラ・ヴィーク/ピアノ協奏曲
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12534507179.html
このコンサートはクララ・シューマンが1840年に結婚してから、1896年に亡くなるまでの人生を、クララやロベルト・シューマン、ブラームスなどの日記や書簡の朗読により語りつつ、オルガンが演奏される(一部歌付き)という、非常に凝った企画です。
朗読では、クララのロベルトとの結婚の喜び、クララが対位法やフーガを勉強していく嬉しさ、メンデルスゾーンが亡くなった時のクララの悲しみ、ロベルトが病気になり亡くなった悲劇、ブラームスのクララへの想い、クララのキルヒナーへの好意、クララが亡くなった時のブラームスの大きな悲しみなどが、時系列に語られて行きます。
川中子みのりさんによるクララ、瀬戸口郁さんによるロベルトやブラームス、キルヒナーの語りは、人物や時代により声を的確に変えて、非常に雰囲気がありました!
オルガン曲では、やはりクララのオルガン曲を聴けるのが嬉しい。前回のピアノ協奏曲の時にも感じましたが、クララの曲は和声を揺らしている印象。4声の音楽に5声目を加えてロベルトに怒られた、という逸話も披露されましたが、クララの作曲はどこか野心的な印象を持ちます。
そして、もう一人、テオドール・キルヒナーのオルガン曲を聴けたのも収穫でした。選曲にもよるとは思いますが、この日演奏されたキルヒナーの《オルガンのための13の小品集》からの2曲はもう圧巻でした!重厚なマエストーソ、温かい気持ちになるアンダンテ・カンタービレ。前回のヨアヒムの曲も発見でしたが、今日もまた素晴らしい作曲家がいることを教えてくれ、まるでキルヒナーのお披露目かのよう(笑)。
そして、前半ラストのブラームスのフーガ変イ短調にも魅了されました!短調のメランコリックな音楽の途中、印象的なハ長調の旋律が出てきて、さらに後に、その上下が逆の音型の旋律が出てきます。聴きながら、これはそれとなくクララとブラームスのことを表しているのでは?と思えてきて大いなる感動!その後、神をも思わせるような聖なる音楽も出てきましたが、大団円にはならず、最後静かに短調で終わりました。
最後のオルガンの前には、ロベルトがブラームスを世に紹介した有名な「新しい道」の朗読がありました。ロベルトの書いた記事ですが、これを川中子みのりさんが希望に溢れる声色で読むのがとてもいい!記事はあたかも、クララの思いを代弁しているかのようでした。最後をロベルトのオラトリオ《楽園とペーリ》で終えるのもいいですね。
また素晴らしい企画のコンサートを聴いた!クララ・シューマン生誕200周年を見事に飾る渾身の企画、大いに魅了されました!
東京では毎日多くのコンサートがあり、どのコンサートを選択するのか、本当に難しいところですが、それは逆にクラシック音楽のファンとしての腕の見せどころでもあります。私は今日のこの素晴らしい、そして非常に価値のあるコンサートを聴きに来て、自分でも本当にいい選択をした、心の底からの喜びと手応えを感じました。
最後に、出演者のみなさま、藝大の関係者のみなさま、最高のコンサートをありがとうございました!
(写真)ライプツィヒで見かけた、クララが一時期住んでいた家の跡地を示すマイセン焼きのプレート。生家跡は別の場所ですが、こちらのプレートにはクララの美しい肖像が描かれていて印象的でした。