楽しみにしていた小泉和裕さんの70歳を祝う都響のコンサートを聴きに行きました。何と言っても、ブルックナー7番が楽しみです!

 

 

東京都交響楽団第885回定期演奏会Bser.

(サントリーホール)

 

指揮:小泉 和裕

 

ワーグナー/ジークフリート牧歌

ブルックナー/交響曲第7番ホ長調WAB107(ノヴァーク版)

 

 

 

小泉和裕さんは都響の終身名誉指揮者。若い頃から聴いてきましたが、その素晴らしい指揮ぶりにようやく気付き、感銘を受け始めたのはお恥ずかしながら近年のことです。今日10月16日(水)は、その小泉さんの正に70歳の誕生日当日!聴き逃すことのできないコンサートです。

 

 

 

前半はワーグナー。非常に雰囲気のある美演!ヴァイオリンの旋律だけでなく、チェロの旋律がよく聴こえて、奥深い味わいです。ジークフリート牧歌は特に好みの曲ではなく、何となく楽劇「ジークフリート」の第3幕を中心にしたダイジェスト、というイメージを持っていましたが、今日の演奏をよく聴くと、ワルキューレやラインの黄金に出てくる動機も聴こえてきました。

 

特に印象に残ったのが、ジークフリートの第3幕最後に出てくる「愛の決心の動機」の旋律のホルンを、一音一音丁寧にゆっくりと吹かせていたところ。ここは楽劇「ジークフリート」では、ジークフリートとブリュンヒルデのやりとりが最高潮になって、勢い良く高らかに歌われる場面ですが、今日のホルンで聴くと、ワーグナーとコジマの落ち着きつつも揺るぎない愛情、そして幼い息子のジークフリートがまだおぼつかない足でよちよち歩く、そんな印象を持ちました。

 

繊細なニュアンスに溢れた素晴らしいジークフリート牧歌!この曲の新たな魅力をよく伝えていた素敵な演奏でした!都響も曲の位置づけ(ワーグナーがコジマの誕生日に贈った曲)を考えると、力が入りますね。

 

 

 

後半はブルックナー。第1楽章は冒頭から速めのテンポで進みます。決して弛緩することのない端正で美しい演奏。ところどころ繊細なニュアンスが付き、フレーズの最後をすっと引いて、豊かな残響のサントリーホールに余韻が残る音楽が素敵です。

 

私はこの曲の実演をおそらく20回は聴いているので、どこでどんな味付けをしているのか、ほぼ分りますが、今日は雰囲気は十分にあるもの、特にブログに書くことのない(笑)、絶妙なバランスの音楽が進んで行きます。それでも、最後のコーダは速く入って、さらにアッチェレランドをかけていました!

 

第2楽章。第1主題は都響の弦楽が得も言えぬ深々とした響き。もうゾクゾクきます!ブルックナーの対位法の妙技に魅了される展開部では、コントラバスのベースを十分に利かせて、充実の響き、構築感溢れる音楽です。

 

3回目の第1主題も速めに入りますが、いよいよクライマックス前の金管が高らかに鳴る場面で遂にテンポを落としました!大いなる感動!そして後奏のワーグナーテューバが痺れるほど上手い!荘厳な響きを大いに堪能しました。

 

第3楽章と第4楽章は都響の金管が大活躍する迫力の演奏。ここも一切緩むことなく、流麗に進んで行きます。第4楽章のラストは第1楽章と同じく、アッチェレランドを入れて突き抜けました!

 

 

小泉和裕さんの70歳にして行きついた世界。都響の見事な演奏による孤高のブルックナー!

 

 

いや~、今日の小泉さんと都響のブルックナー、痺れました!私はブルックナー7番はどちらかと言うとゆったりとしたテンポの、雄大なスケールの演奏が好み。東京で聴いた実演では、ドラマティックかつ繊細な演奏だった、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響とN響の演奏が強く印象に残っています。

 

今日の速いテンポの演奏は必ずしも私の好みではありませんが、小泉さんが楽譜とじっくり向き合った上で、奇をてらわず揺るぎなく振った演奏、という印象です。都響の抜群のサポートもあり、とても感じ入った演奏でした。

 

プログラムに載っていた小泉さんのインタビューの「これぞブルックナーの神髄であるという音色」、しかと受け取りました!特に第2楽章で何度、ゾクゾク来て、昇天しそうになったか分りません。この方は本当に本格派、本物の指揮者だと思う。

 

 

終演後は盛大な拍手!そして、何と都響からハッピー・バースデイの演奏が!(笑) オケが下がっても鳴り止まぬ拍手。再び出てこられた小泉さんは、今日の主役なのになぜか指揮台までは行かれず舞台脇で挨拶。謙虚さや実直さを大いに感じました。2003年に聴いたジャン・フルネさんの90歳のバースデイ・コンサートの時の印象に重なります。

 

 

小泉和裕さま、70歳の誕生日、おめでとうございます!これからますます音楽を深めて行かれるのを聴きに行くのが本当に楽しみです。特に来年のオネゲルを楽しみにしています!