昨日は大野和士さんプロデュースの現代音楽のオペラを楽しみましたが、今日は来年のベートーベン生誕250周年の開幕を告げる、パーヴォ・ヤルヴィさんとN響のフィデリオの公演を聴きに行きました。

 

 

ベートーベン生誕250周年記念

パーヴォ・ヤルヴィ&N響

オペラ《フィデリオ》

(オーチャードホール)

 

ベートーベン/フィデリオ(演奏会形式)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

 

ドン・フェルナンド:大西 宇宙

ドン・ピツァロ:ヴォルフガング・コッホ

フロレスタン:ミヒャエル・シャーデ
レオノーレ:アドリアンヌ・ピエチョンカ
ロッコ:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリッヒ
マルツェリーネ:モイツァ・エルトマン

ジャッキーノ:鈴木 准

囚人1:中川 誠宏

囚人2:金子 宏

 

合唱:新国立劇場合唱団

管弦楽:NHK交響楽団

 

 

 

昨年5月に新国立劇場でカタリーナ・ワーグナーさん演出のフィデリオを観た時の感想記事にも書きましたが、私はこの作品に必ずしも親しんでいる訳ではなく、そこまで魅力的な作品とも感じていません。ベートーベンの交響曲やピアノ・ソナタの崇高なまでの完成度に達していない、という印象を持っています。

 

(参考)2018.5.27 ベートーベン/フィデリオ(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12379340049.html

 

なので、今回の公演はオペラでなく演奏会形式ということもあり、聴きに行こうかどうか最初は迷いましたが、やはり大好きなパーヴォさんとN響の公演であること、これだけ蒼々たる歌手を揃えた公演にはなかなかお目にかからないこと、そして何と言っても、来年のベートーベン生誕250周年を先取りした公演であることから、チケットを取りました。

 

 

 

そして聴いてきた感想ですが、いや~、さすがこれだけのスター歌手のみなさんが揃った公演、歌といい、演奏のクオリティといい、極めてレベルの高いコンサートでした!

 

ミヒャエル・シャーデさん、フランツ=ヨーゼフ・ゼーリッヒさん、ヴォルフガング・コッホさんを始め男性陣の歌手は万全!シャーデさんは魔笛のタミーノをよく歌っている印象がありましたが、いつの間にかフロレスタンも歌うんですね~。第2幕冒頭のアリアなど、新国立劇場の時のステファン・グールドさんとはまた別の魅力を持った素晴らしいフロレスタンでした。温かみのある声がロッコによく合うゼーリッヒさん、迫力のピツァロのコッホさんも見事!

 

レオノーラのアドリアンヌ・ピエチョンカさんは第1幕終盤のアリアや第2幕でフロレスタンを助ける場面などさすがの歌!そしてマルツェリーネにモイツァ・エルトマンさんとは何と贅沢な配役なのか!オペラの作品で聴くのはR.シュトラウス/ばらの騎士の可憐なゾフィー(2014年のザルツブルク音楽祭)以来、久しぶりでしたが、美しい声といい、卓抜な演技力といい、魅了されっぱなしでした!

 

パーヴォ・ヤルヴィさんとN響は物語を進めるところ、じっくり歌うところ、メリハリのついた素敵な演奏。キビキビとしたフィデリオ序曲、たっぷり歌ったレオノーレ序曲第3番(第2幕冒頭に置かれていた)、フロレスタンのアリアの前の悲痛で深遠な短調の音楽(レオノーレ3番とのあざやかな対比)、ピツァロがフロレスタン殺害を語る場面での金管の強奏などなど、パーヴォさんならではの振幅の大きな指揮と演奏に大いに魅了されました!新国立劇場の合唱団もさすがのクオリティ、ラストの追い込みも見事でした。

 

 

 

ということで、歌や演奏は大変クオリティの高い公演でしたが、その一方で、やはり私にとってフィデリオは苦手な作品、ということを改めて実感した公演でもありました…。オペラではこれまで3回観てきて、特に昨年の新国立劇場の公演はカタリーナ・ワーグナーさんの斬新な演出もあり、とても楽しめましたが、オペラでなく演奏会形式でより音楽と歌と歌詞に集中すると、どうも馴染めない感を強く持ちます。

 

プログラムのパーヴォさんのメッセージにあったように、このオペラのテーマである愛や正義はもちろん崇高で大切なものだと思いますが、それが声高に語られてもリアリティを持って実感できない、それに尽きるような気がします。ヴェルディのオペラで語られる愛や正義には十二分に共感して涙を流すこともしばしばですが、ヴェルディの時のような感情をなかなか持てないのです…。

 

 

う~ん、フィデリオという作品は、私にはまだまだ距離のある作品ということが、今日の非常にグレードの高い公演で、逆に分ってしまいました(笑)。でも、オペラには沢山の作品があり、得意な作品、不得意な作品、人それぞれ。まだこれから実演に触れる機会もあることでしょう。フィデリオを十分に理解するのは、来年ベートーベン生誕250周年の宿題にしたいと思います!