ウィーン近郊のバーデンにてオーストリアのオペレッタの作曲家カール・ツェラーの住居と最後の家を訪れた後、バーデン市立劇場のゾマーアレーナにて、カール・ツェラーの傑作オペレッタ、小鳥売りを観に行きました。
Sommerarena Bühne Baden
Carl Zeller
Der Vogelhändler
(Sommerarena)
Musikalische Leitung: Franz Josef Breznik
Inszenierung: Christa Ertl
Bühne: Christof Lerchenmüller
Kostüme: Alexia Redl
Choreografie: Bohdana Szivacz
Adam: Clemens Kerschbaumer
Christel, Postbotin: Ilia Staple
Kurfürstin Marie: Regina Riel
Baronin Adelaide, Hofdame der Kurfürstin: Verena Scheitz
Graf Stanislaus: Matjaž Stopinšek
Baron Weps: Sébastien Soulès
Schneck, Dorfschulze: Franz Födinger
Professor Würmchen: Artur Ortens
Professor Süffle: Beppo Binder
Jette, Kellnerin: Natalia Bezak
Dorfkinder: Patric-Pascal und Lucas Bonnet, Thomas Panzenböck
Orchester der Bühne Baden
Ballett der Bühne Baden
Chor der Bühne Baden
(写真)バーデン市立劇場のゾマーアレーナ。バーデン市立劇場は別にオペラハウスも持っていますが、夏はここの会場で公演が行われます。屋根が開閉式になっていて、晴れた日はオープン・エアで行われます。小ぶりですが、本当に親しみの持てる魅力的な空間。
(写真)ゾマーアレーナにはクーア・パークを通って向かいます。このアプローチは雰囲気があって本当に好き。バーデンは名高い温泉保養地。クーア・パークにはカジノもあります。
(写真)ゾマーアレーナのそばにある花時計
(写真)公演のプログラム。主人公の小鳥売りのアダム。やんちゃなところなど、まんまその後のパパゲーノ(笑)。
小鳥売りのあらすじをごく簡単に。小鳥売りのアダムは郵便配達の娘クリステルと恋人同士。村に大公が狩猟に来る予定がキャンセルとなり、それを利用してお金儲けを企んでいたヴェプス男爵は、スタニスラウス伯爵を偽の大公に仕立て上げます。その偽の大公にアダムの就職を依頼するため、クリステルは偽の大公とあずまやに入りますが、それを知って怒るアダム。
その後、大公の夏の宮殿にて、アダムの就職面接だったり、大公妃の女官のアデライーデの結婚騒動だったり、いろいろとドタバタの展開を見せますが、最後はアダムとクリステルが仲直りして、メデタシメデタシという物語です。
この日は見事に晴れ。ということで、ゾマーアレーナの屋根が全開になりました。近くの木立の音や小鳥の鳴き声が聞こえてきていい感じ。コンパクトな劇場なので、指揮者が登場して挨拶をすると、最前列のお客さんと頭がごっつんこしそう(笑)。
序曲が始まりました。賑やかなマーチ風の音楽の後、クラリネットが第1幕のクリステルの歌“Ach Ihre Reputation”の旋律を吹きますが、ほとんどキュン死しそうになるくらいに美しくチャーミングなメロディ!
第1幕はラインの村の広場。軽快な音楽に乗って、冒頭のヴェプス男爵と村の人々とのやりとりが楽しい。村の娘さんたちの民族衣装はめちゃめちゃ雰囲気ありますね。Zur Wilden Mausという名前の酒場の看板娘ジェッテの立ち振る舞いがコケットでもうメロメロ(笑)。バレリーナの方の演技って本当に光ります。
アダムが登場してノリが良く楽しい歌を歌います。アダムの仲間の男女の小鳥売りたちの踊りも軽快で楽しい!そして歌の途中にはウィンナワルツが入って、非常に雰囲気が出ます。ウィンナワルツって、どうしてこんなに心をウキウキ揺さぶるのでしょうか?
スタニスラウス伯爵を偽の大公に仕立てる、スタニスラウス伯爵とヴェプス男爵のハハハの歌は、ムチを足元に打って飛び跳ねる演技も楽しい。
大公が狩猟を理由に浮気をしていないか、お忍びで調べに来た(笑)大公妃マリーたちが民族衣装で登場。キラキラ光って明るいウィンナワルツの歌"Fröhlich Pfalz, Gott erhalts"。開放感に溢れ、お付きの女性たちとの掛け合いも決まって最高!カール・ツェラーの音楽って、本当に魅了されます。
有名なビールを一気に飲み干すシーンは、酒場から、大きなジョッキになみなみのビールが出てきただけで観客からドッと笑いが起こります(笑)。お付きの女官のアデライーデが見事に飲み干しました!
クリステルの登場の歌では、郵便配達のクリステルから、家族や恋人からの手紙をもらって、心の底から喜ぶ村の人々がいい感じ。時間差のあるやりとり、一通一通の手紙に想いが込められて、今の瞬時で手軽なコミュニケーションよりも、昔の方が良かったのかも知れません。クリステルは歌の最後の決めで、足を一度外側に流した上で、内側で締める敬礼して決まりました!これ本当にカッコいい。
冒頭のクラリネットでキュン死した、クリステルがあずまやに入るのをためらう歌“Ach Ihre Reputation”の歌は、その旋律に大いにとろけます!クリステルは花束を持って偽の大公とあずまやに入りますが、もともと大公に花束を渡す大役を仰せつかっていた村娘が、役がなくなってしまい、お酒飲んで花束投げてのグレようが可愛い(笑)。
そしてこのオペレッタで最も有名な第1幕のエンディングの歌「チロルでバラを贈る時は」。アダムの歌い出しからマリーとアダムの掛け合い、合唱になって大いに盛り上がるところが素晴らしい!めっちゃ感動!観客も大いに湧きました!ラストは泣き崩れて可哀想なクリステル…。
(写真)カール・ツェラーの最後の家に咲いていたバラの花。これを見た後に、「チロルでバラを贈る時は」を聴いて、何だかとても感慨深い。
(写真)休憩時間。かなり暗くなって雰囲気満点。オーストリアの方々は休憩時間にお酒を楽しんで、陽気におしゃべりして、本当に楽しそうです。
第2幕は大公の夏の離宮。ヴェプス男爵が着飾った人々と噂話をする滑稽な歌。アダムの就職の面接官の教授2人の「私は学部長代理」の歌がコミカルで楽しく、笑顔が可愛らしい小さな子供の学者が出てきて観客大受け!アダムの面接のシーンは、アダムのいい加減な答えに教授たちまでが釣られて踊ってしまうのが可笑しい(笑)。
アデライーデの歌は赤いハートが出てくるものの、途中で2つに割れたりして小道具も楽しく、最後はまたしてもシャンパン一気飲み(笑)で決めました!この辺りはウィンナワルツに乗せた歌が続きますが、聴いていて本当に心地良いです。
アダムの「おじいちゃんが二十歳の時」の歌はソット・ヴォーチェ。途中からは指揮者の合図で、観客もハミングで加わります。私も加わりましたよ~!こういうのは本当に楽しい!
その後の小鳥売りたちの切り株を使った踊りはコミカルで楽しい!赤の衣裳で半ズボンの民族衣装の女性陣の踊りがやんちゃで可愛らしく、大いに魅了されました。
スタニスラウス伯爵とアデライーデの結婚を試みるシーンはドタバタ。まだ嫉妬しているアダムに、スタニスラウス伯爵と結婚しろ!と言われたクリステルは、最後ムキになって伯爵の手を取り、アデライーデが大きく「ナー」と言って大げさに気絶したりしてめっちゃ楽しい!
第3幕は召使いたちのバレエのシーンから。マリーのしっとりとした歌には、愛する男女の素敵なバレエが付きました。クリステルに嫉妬するあまり、アダムが惹かれたマリーの正体が、実は大公妃だったと知ったクリステルの大笑いが続いてからの、アダムとスタニスラウス伯爵との3重唱も楽しい!
ラストはマリーが第1幕で持っていた赤い大きなバラの花束をクリステルが持って出て、アダムと仲直りして終わりました。ウィンナワルツが沢山出てきて、とても楽しいオペレッタ!歌手やバレエのみなさんも最高!指揮者とオケもノリノリ!舞台と客席の近いゾマーアレーナで小粋な演出の楽しいオペレッタを観て、心の底からの幸せを味わった素晴らしい時間でした!
(参考)私の観たバーデン市立劇場のカール・ツェラー/小鳥売りの紹介動画。めっちゃ楽しそうな雰囲気がよく伝わると思います。第1幕ラストのアダムとマリーの美しい2重唱「チロルでバラを贈る時は」は0:53~1:45。
https://www.youtube.com/watch?v=uwuDI2z0qVw (3分)
※バーデン市立劇場の公式動画より
(写真)駅までの帰り道に、深夜のペスト塔に遭遇。オーストリアにはウィーンやリンツなどにも立派なペスト塔がありますが、ここのペスト塔はいい目印になります。
(写真)旅行初日&遅い時間にウィーンに帰ってきたので、夕食は抜きましたが、ちゃんとオーストリアのビールはいただいました。夏の旅行は初日から盛り沢山の素晴らしいスタートとなりました!この後の展開、どうかお楽しみに!