渋谷の東急シアターオーブにブロードウェイのミュージカル、王様と私を観に行きました。トニー賞にノミネートされて話題になった渡辺謙さんのミュージカル、楽しみです!

 

 

ブロードウェイ・ミュージカル

王様と私

(東急シアターオーブ)

 

(クリエイティヴ)

作曲・作詞:リチャード・ロジャース&オスカー・マハースタインⅡ

原作小説:マーガレット・ランドン(アンナとシャム王)

演出:バーレット・シャー

初演版振付:ジェローム・ロビンス

振付:クリストファー・ガテッリ

US音楽スーパーバイザー:テッド・スパークリング

美術:マイケル・ヤーガン

衣裳:キャサリン・ズーバー

照明:ドナルド・ホルダー

音響:スコット・レーラー

 

(キャスト)

アンナ・レオノーウェンズ:ケリー・オハラ

シャム王:渡辺 謙

チャン夫人:ルーシー・アン・マイルズ

オルトン船長/エドワード・ラムゼイ卿:フィリップ・フルコック

タプティム:キャム・クナリー

クララホム首相:大沢 たかお

ルンタ:ケイヴィン・パンミーチャオ

チュラロンコン皇太子:アーロン・ティオ

フラ・アラック侍従長:ウィリアム・マイケル・リー

ルイ:ジャック・ドワイヤー、ルイス・ファーニー、ビリー・マーロウ

 

 

 

(写真)公演のプログラム。王様とアンナがシャル・ウィ・ダンスを踊る感動の場面。

 

 

 

この冬のニューヨーク旅行ではミュージカルを9本観て、とても親近感を持っているブロードウェイのミュージカル。今回は2015年のトニー賞を受賞した名作、そしてトニー賞の主演男優賞にもノミネートされた渡辺謙さんの凱旋公演、ということでチケットを取りました。

 

 

あらすじをごく簡単に。1860年代のシャム王国(現タイ)。幼い息子を連れてイギリス人の未亡人アンナがシャム王国の王家の英語の家庭教師としてバンコクにやって来ます。契約の家があてがわれず、王宮に住むことになり、王様とさっそくぶつかるアンナですが、王家の子供たちはすぐになついて王様の信頼を得ます。

 

西洋の列強がアジアに迫る中、これまでのしきたりと新しいやり方を模索して、いろいろと悩ましい王様。はっきり意見を言うアンナを難しがるも、しだいに惹かれていきます。2人の関係は果たしてどうなるのでしょうか?

 

 

 

前半は序曲から。シャル・ウィ・ダンスの旋律が聴こえてきて、期待感を高めます。舞台に大きく展開する船の上で、アンナと息子のルイがバンコクにやってくるシーン。オレンジ色の夕日と水上コテージのある川の背景が美しい!

 

ケリー・オハラさんのアンナの英語が見事なまでに美しい!聴いていて心地良く、うっとりします。最初の勇気を出すときには「口笛を吹いて」の歌がとてもいい感じ。陸に着いたら、船が分離して、建物に早替わりするのもシャレていますね。さっそく民衆たちが寄ってきますが、アンナは上手く施しを上げて切り抜けます。

 

初めてアンナが王様に会う場面。いきなり歳を聞かれて、怪訝になったアンナの「153歳」の答えが秀逸!(笑)。「では孫は何人だ?」と聞いて、アンナの回答を聞く前に打ち切り、「私の方が上手だ!」とほくそ笑む王様(笑)。このミュージカルの2人のやりとりは、一事が万事こんな感じです。渡辺謙さんの王様は王様然としてドッカリ!というよりは、こだわりがありミステリアスな雰囲気で役作りが半端ない!英語も見事です。

 

アンナによる、若い恋人たちを励ます歌「ハロー・ヤング・ラヴァーズ」は本当に素晴らしい!私もこのブログで、若い人たちはどんどん恋愛をした方がいいですよ、恋人を作って大切にして幸せになった方がいいですよ、と何度も書いて推奨していますが、心の底からの共感を覚えました。

 

アンナに子供たちが挨拶をする場面は、普通に挨拶する子、花をプレゼントする子、甘えて王様に抱きつく子、アンナのスカートをめくる子(笑)など、いろいろな子供がいて楽しい!

 

王様の悩みの歌「パズルメント」。王様として威厳を示すものの、列強に周りを囲まれて、アジアの近隣諸国ともどう付き合ったらいいか分からない心情を、ちょっとコミカルに歌います。音楽はウエスト・サイド・ストーリーのクラプキー警部に似ていた部分があって萌えました(笑)。

 

子供たちへの授業は楽しく進みますが、「私はサーバントではない」と王様と衝突し、アンナは先生を辞めると言い放ちます。お互いの親の喧嘩に、ルイとチュラロンコン皇太子が「大人は難しい」と「パズルメント」を歌うのは気が利いていて楽しい。

 

アンナが王様を揶揄する歌「私の気持ちは?」は、難しい歌詞の連発、王様への平伏服従のポーズを「カエル」のようでおかしいと批判します。ケリー・オハラさんの妙技の歌に盛り上がりました!

 

そこにチャン夫人が王様を助けてほしい、と感動の歌「サムシング・ワンダフル」!王様のお后なのにも関わらず、「あなたの愛で助けてほしい」と歌うチャン夫人!何という深い愛情!ルーシ-・アン・マイルズさんの感動的な歌もあって涙涙…。

 

チャン夫人の熱意に、アンナも王様に会うことにします。一方的にアンナが謝罪して、許す、という流れを作る王様!まったく!(笑) アンナが頭を下げないことが気にくわない王様は、平伏はしなくてもいいので、王様の頭よりは頭を低くしてほしい、と約束します。王様が頭をどんどん下げていって、アンナが追随するやりとりが楽しい!(笑)

 

エドワード・ラムゼイ卿がバンコクに来るので、晩餐会を開いて、王様が野蛮人という見方を修正しようと盛り上がる2人。準備期間が一週間しかないことに驚くアンナに、さっき自分から非科学的だとして却下した「モーゼは地球は6日間でできたと言った」を持ち出す王様!(笑) 何だかいい感じの2人になってきました。

 

最後はみんなで仏教のお祈りのシーン。王様「この卑しき女に家を与えたまえ、エトセトラ、エトセトラ」。セリフに眉をひそめるも、約束の念願の家が実現するので喜ぶアンナ。そんなプライベートなセリフをみんなで唱和するユーモラスなシーンで前半を終えました。

 

 

 

後半。晩餐会で着るための西洋のスカートを、シャムの女性たちが頑張って履く楽しい歌のシーンから始まりました。ラムゼイ卿が登場。ラムゼイ卿もアンナを好いていて、王様とのそれとないさや当てが楽しい。

 

タプティムとルンタの恋人の歌「アイ・ハヴ・ドリームド」が素晴らしい!それを引き取って、アンナの前半に歌った「ハロー・ヤング・ラヴァーズ」が続く流れは、ミュージカルを観る醍醐味です!

 

ラムゼイ卿をもてなすバレエは「アンクル・トムの小屋」。タイの舞踊もふんだんに取り入れられたバレエは非常に見応えがありました!特に暴君のサイモン王から逃げる奴隷のイライザが逃げていく片足のポーズが印象的。

 

晩餐会が上手く行ったとご機嫌の王様。ここで有名な「シャル・ウィ・ダンス?」をアンナが歌うシーンに。舞台で歌われるシャル・ウィ・ダンス!大いなる感動!そして、いよいよアンナと王様が踊るシーンに。始めは上手く踊れなくていらだつ王様ですが、アンナに教えてもらって、見事に踊れるように!2人が舞台を大きく回って踊るシーンは本当に素晴らしい!もう涙涙でした…。

 

しかし、逃げ出したタプティムが捉えられ、王様は鞭打ちの刑にしようとします。アンナから「野蛮人!」と言われた王様はショックを受け、心臓を押えて退出してしまいます。

 

国を出ることを決め、船着場のアンナにチャン王女が病床の王様からの手紙。感動的な手紙で、アンナは最後に王様に会うことにします。シャル・ウィ・ダンスの音楽がゆっくり流れて感動的。息子のルイに王様が好きなんだね、と言い当てられるアンナ。

 

死の床の王様ですが、アンナに「頭が高い」と言うなど、相変わらず(笑)。子供たちに「行かないで」と泣きつかれて、アンナは留まることにします。

 

王様から、新しい王になったらどうしたい?と問われ、チュラロンコン皇太子は、平伏のポーズを禁止するお触れを出すと切り出します。王様は息子が自分で考え出した立派な考えに満足げですが、アンナに「全くお前のせいだ」と冷やかしの一言(笑)。

 

その考えに、みんなが頭を上げて胸を張り、新しいシャム国の未来を予感させる中、王様は静かにお亡くなりになって、幕となりました。最後、アンナが王様のベッドにすがっていたのが感動的…。

 

 

 

いや~、さすが名作のミュージカル、しみじみ深い感動に包まれた素晴らしい公演でした!とにかくトニー賞で最優秀主演女優賞を受賞したケリー・オハラさんが、信念を持って毅然とした女性を演じて、圧倒的に素晴らしい!渡辺謙さんも意固地で、でもユーモアもある難しい役どころを見事に演じていました!ルーシー・アン・マイルズさんのチャン王女や若い役者さんたちも素晴らしく、大いに楽しめた公演でした!リチャード・ロジャースの音楽はどの曲も聴きやすく素敵な曲ばかり。オスカー・ハマースタインⅡの歌詞も心を揺さぶるものでした。

 

批判をするのは簡単ですが、責任ある立場で判断や決断をして、ものごとを成すのは本当に難しいこと。渡辺謙さん、王様の悩みや孤独をよく表わしていて、さすがでした。アンナは現代に近い考え方を示しますが、イギリスのやり方が必ずしも正しいとは限らず、逆にシャム王国の良さもある。セリフの一つ一つに、様々なことを考えさせれた奥深いミュージカルでもありました。

 

 

名作のミュージカル、8月4日(日)まで、渋谷の東急シアターオーブです。ミュージカルのお好きな方はぜひご覧になることをお勧めします!お楽しみに!

 

(参考)「王様と私」の東急シアターオーブ公演のPR動画

https://www.youtube.com/watch?v=uMwi_0BRx9A (1分)

※Bunkamurachannelの公式動画より

 

 

 

(追伸)ちなみに、この日はミュージカルが17:00開演だったので、午前中に2時間、午後に2時間、帰ってから2時間、計6時間たっぷりピアノが練習できました!スクリャービン/ピアノ・ソナタ第2番第1楽章はかなりいい感じに。最後の詰めの作業が楽しいです。ベートーベンも頑張りますよ~!