クリスティアン・アルミンクさんの東京への凱旋公演となる、リエージュ・フィルの来日公演を聴きに行きました。小林愛実さんのピアノも楽しみです!

 

 

ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団

(サントリーホール)

 

指揮:クリスティアン・アルミンク

ピアノ:小林 愛実

 

ルクー/弦楽のためのアダージョ

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調

ブラームス/交響曲第1番ハ短調

 

 

 

みなさんはリエージュと聞くと何を連想しますか?地理が好きな方は、ベルギーは北のフランドル地方(フラマン語)と南のワロン地方(フランス語)があり、ワロン地方の中心都市がリエージュ、と覚えているかも知れません。

 

私が即座に連想するのは、ワッフルです!(笑) リエージュ・ワッフル。丸形で砂糖のザラ目が付いているワッフルで、日本でもよく見かけるものです。ちなみに、もう1種類のブリュッセル・ワッフルは長方形で砂糖が付いておらず、ホイップクリームやフルーツを付け合わせて食べます。

 

 

え~、コンサートの感想にまいりましょう(笑)。

 

 

まずはベルギーの作曲家、24歳で夭折したギョーム・ルクー(1870-1894)の弦楽のためのアダージョ。初めて聴きますが、シューマン2番第3楽章、シェーンベルク/浄夜、シベリウス/トゥオネラの白鳥などに似た響きを途中で感じました。

 

しかし、トータルではそのいずれとも異なる不思議な響きの曲。明快な和声が続く中、フランクの魅惑の和声がこだまする瞬間に魅せられました。師事するも1年で亡くなってしまったフランクを追悼するために作られた、とも言われる曲。大変感慨深いものがありました。

 

 

続いてモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。第1楽章。モーツァルトになるとリエージュ・フィルのいい意味で古めかしい響きの弦を感じます。高らかに響く、というよりはマイルドで独特な味わい。

 

小林愛実さんは初めて聴きますが、まるでゴムまりのように弾ける溌剌としたモーツァルト!かなり抑揚を付けていて、最初の主題に帰るところでは思い切った強調を入れるなど、ある意味で大胆不敵(笑)なモーツァルト!聴き応え満点です。

 

第2楽章はオケの響きが一変して、チャーミングな雰囲気に、独特なオーボエもいい感じ。小林愛実さんは中間部を迫力のピアノ。第3楽章はハッキリ打ち出された短調の後、長調で走る場面は小気味良く素敵なモーツァルト。

 

この第3楽章後半を聴くと、歴史的なまちリエージュを舞台に、チャーミングで奔放な(笑)日本人女性が巻き起こす楽しい騒動を思い浮かべます。小林愛実さんのモーツァルト、リエージュ・フィルの音色と相まって、とても素敵な聴きものでした!この演奏だと、ベートーベンの1番も楽しそう。聴いてみたいですね。

 

 

アンコールのショパンのマズルカも大変ユニーク。大きく抑揚を付けたり、溜めを入れたりしますが、これは即興でやっているんでしょうか?ご自身の世界をしっかり持っている印象。ピアノ・ソナタ第3番なども聴いてみたいです。

 

 

 

後半はブラームスの1番。第1楽章、冒頭の弦とティンパニはゆったりしたテンポ。最近速めに入る演奏が多いですが堂々たる入りです!

 

プログラムにはドイツ風の音も、という案内でしたが、低弦をしっかり出していたところにその片鱗を感じました。しっかりとした足取りで進む第1楽章。アルミンクさんの熟成を感じたような第1楽章でした。

 

第2楽章。ここはリエージュ・フィルの弦楽のフランス風の明るめの音色を感じ、曲想によく合った演奏でした。明るい陽光がキラキラ差し込む第2楽章。聴いていて、あの長調が弾ける第2番と間違えそうになるくらい(笑)。大いに惹き込まれた第2楽章。

 

第3楽章。引き続き明るい雰囲気が素敵な演奏。独特なクラリネット、素朴なフルート、木管楽器の響きにも惹かれます。この辺りは新たなオケを聴く醍醐味ですね。中盤の3拍子の場面はオケを豊かに鳴らして迫力満点!ここまでの盛り上がりはなかなか聴かれないかも。その後の弦楽のノスタルジックな響きにも魅了されました。

 

第4楽章。この楽章も明るいオケの音色に魅せられます。途中までは悠々と進めていたアルミンクさん、この楽章は走ったり、ゆったりにしたり、テンポを意欲的に揺らします。最後の方のジャジャジャンの4連発はたっぷり、あたかも大きなサイズの悲劇の宗教画のよう!ラストも悠々と終わりました。

 

 

まさかの骨太なブラ1きた~!アルミンクさんの堂々たる凱旋!

 

 

いや~、聴く前はいい感じにこじんまりまとまった演奏にでもなるのかな?リエージュ・フィルの音色を体感できれば十分かな?くらいの期待感で聴きに行きましたが、まさかの骨太のブラ1!大いに魅了されました!

 

 

リエージュ・フィルの独特な音色や響きから醸し出される雰囲気にブラームスの音楽が重なって、何とも言えない魅力に溢れた演奏でした。リエージュ・フィルは今回が29年ぶりの来日。普段耳にすることのないヨーロッパの地方都市のオーケストラを聴くのは本当に楽しいものです。

 

それぞれのオケにはそれぞれの良さがある。それをしっかり見極め、汲み取るのが、「本当の」クラシック音楽のファンだと思います。サントリーホールは大勢の人たちによる熱心で温かい拍手に包まれて、胸が熱くなりました。

 

ということで、リエージュ・フィルの29年ぶりの来日公演は素晴らしいコンサートとなりました!調布国際音楽祭に行ったので聴きに行けませんでしたが、日曜のすみだトリフォニーホールの公演も良かったようですね。

 

 

こうなると、次に期待したいのは、クリスティアン・アルミンクさんの新日フィルへの客演です。私はアルミンクさんの音楽監督時代に2009年のフランツ・シュミット/7つの封印を有する書など、素晴らしかった新日フィルの公演をいくつも聴きに行き、大いに魅了されました。

 

困難な時期の出来事で、もちろん当事者同士にしか分からないこともあるとは重々承知の上ですが、東京の一人のクラシック音楽のファンとして、近い将来、アルミンクさんがぜひまた新日フィルの指揮台に上がることを大いに期待しています!

 

 

 

(写真)とても感激したコンサート、ということで、平日ではありましたが、終演後についついベルギービールをば(笑)。大好物のレフ・ブロンド先生。私はベルギーはまだブリュッセルだけしか行ったことがありません。ワロン地方の中心のまちリエージュ。いつか行ってみたいです。