渋谷のBunkamuraはザ・ミュージアムで開催されているバレル・コレクション展を観に行きました。

 

この美術展はスコットランドの海運王、ウィリアム・バレルが収取した、印象派を中心とした絵画の美術展です。グラスゴー郊外にあるバレル・コレクションが改修工事を行っている期間に、英国外には貸し出さない条件のある中、特別に貸し出された大変貴重な展示です。特に印象に残った絵は以下の通りです。

 

 

 

(写真)アンリ・ル・シダネル/雪

※美術展で購入した絵葉書より

 

薄く白で覆われたボカシ絵のよう。淡い筆致、非常に魅せられました。北仏ピカルディー地方の雪景色。白い広がりにはバラ色をはじめとする他の色が混ざり合っているのが印象的。

 

 

(写真)フランソワ・ボンヴァン/スピネットを弾く女性

 

大きな帽子と散った花が印象的。ここのコーナーの解説には、「かつては寓意が込められたものもあったが19世紀にはそういった側面は払拭され」とありましたが、この絵には何かありそう(笑)。マグリットの絵を思わせる雰囲気があります。

 

 

 

(写真)アーサー・メルヴィル/グランヴィルの市場

 

メルヴィルの絵は薄めた亜鉛白を紙に染み込ませて、絵の具がにじみ、亜鉛白と混ざり合って生じる「ブロテスク(しみ風の)」という表現形式が特徴、ということでした。確かに「ホワイトホース・インの目印」という絵では幻想的でノスタルジックな効果を覚えました。こちらの「グランヴィルの市場」ではそこまでの効果は感じませんでしたが、建物のファザードや道のまだら模様っぷりがいい感じ。

 

 

 

(写真)エドゥアール・マネ/シャンパングラスのバラ

 

透明で細長いシャンパングラスと色あざやかで広がりのある2色のバラを上手くまとめた作品。何とも言えない不思議なバランスを感じます。

 

 

 

(写真)アンリ・ル・シダネル/月明かりの入り江

 

再びシダネルの絵。幻想的な緑青の闇夜に浮かぶ淡い色の船が美しい。夜の港町の熱気まで伝える素敵な絵。舞台は南仏ニースとモナコの間にある港町ヴィルフランシュ=シュル=メール。ジャン・コクトーが愛した港まちです。

 

 

 

その他、絵葉書はありませんでしたが、以下の絵が印象に残りました。

 

テオデュール・リボー/勉強熱心な使用人

掃除の手を止め、熱心に本を覗きこむ使用人の絵。筆致こそ違えども、フェルメールの絵にも出てきそうです。ただし窓と光はなく、全体的に薄暗い印象です。

 

◯アンリ・ファンタン=ラトゥール/入浴する女性

◯カミーユ・コロー/耳飾り

そこはかとないエロティシズムを感じる絵。「耳飾り」はGWの旅行でウィーンのVienna 1900展でも似た雰囲気の素晴らしい絵を観ました。

 

◯サミュエル・ジョン・ペプロー/コーヒーとリキュール

バランスの良い構図、コーヒーカップの白が印象的な絵。1898年の作品ですが、リキュールの瓶が今と変わらないことに嬉しさをおぼえました。粗めの筆致にも関わらず、絵の切れ味を感じる不思議な絵です。

 

◯アドルフ・モンティセリ/庭で遊ぶ子どもたち

ほとんどタペストリーを思わせるような独特な絵。モンティセリはロマン主義から印象派、象徴派への架け橋となったそうです。そのどれにも属さない、観たことのないような質感の絵。

 

◯ヤーコプ・マリス/ドルドレヒトの思い出

暗めの色を使った沢山の船と淡い建物、明るい空の対比が印象的な絵。この絵一発でドルドレヒトに行ってみたくなる素敵な絵。船の筆致はジョルジョ・ルオーを思わせるような力強さを感じました。

 

◯ヨハネス・ボスボーム/スヘーフェニンゲン

海岸中貨物船が打ち上がった絵。貨物を引き取ると思われる馬も見える。繊細で柔らかい輪郭。スヘーフェニンゲンは「スケベニンゲン」とも言われる気恥ずかしさを感じる地名。オランダを旅した時に名前の愉快さだけで少し立ち寄りました(笑)。

 

 

 

バレル・コレクション展、印象派など新しい絵画と出逢えて、とても貴重な機会となりました!今年前半は毎日忙しくて旅行も入り、美術展を観に行くのは遅れがちでしたが、これでほぼキャッチアップできたかな?という感じです。

 

そして、GWの旅行記の方では、あと2回、珠玉の美術館の記事をアップする予定です。乞うご期待!