先月から今月にかけてのセバスティアン・ヴァイグレさんとの常任指揮者就任披露の3つのコンサート&サロメが素晴らしかった読響。今日は山田和樹さんの客演するコンサートを聴きに行きました。

 

 

読売日本交響楽団第589回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:山田和樹

ソプラノ:アルビナ・シャギムラトヴァ

 

伊福部昭/SF交響ファンタジー第1番

グリエール/コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲

カリンニコフ/交響曲第1番ト短調

 

 

 

最初は伊福部昭/SF交響ファンタジー第1番。ゴジラの音楽が有名な伊福部昭の6本のゴジラの映画音楽をまとめたものです。有名なゴジラの歯切れ良いリズムをサントリーホールで読響で聴くとゾクゾクしますね!途中の夜曲は情緒的で大いなる聴きもの、最後は爆裂盛り上がりで終わりました。楽しい!

 

伊福部昭をコンサートで聴くのはおそらく初めてですが、リズミカルな音楽でめっちゃいいですね!あの「ゴジラ、ゴジラ…」のリズムは3拍子、3拍子、9拍子だと思っていたら、最後は4拍子と5拍子だそうです。

 

なお、その6本の映画のタイトルは、「ゴジラ」「キングコング対ゴジラ」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「怪獣総進撃」「三大怪獣 地球最大の決戦」「宇宙大戦争」。タイトルのインフレっぷりに萌えました(笑)。

 

 

(写真)伊福部昭さんは何と北海道帝国大学農学部出身!ということで、昨年夏に行った札幌は北大から、札幌農学校第ニ農場。かのクラーク博士の構想によって明治9年に開設された畜産経営の実践農場で、国の重要文化財です。

 

 

続いてグリエール/コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲。歌詞のない、いわゆるヴォカリーズですが、2楽章からなる協奏曲です。アルビナ・シャギムラトヴァさんは高音を駆使して、スローなパートもじっくり聴かせて、素敵な独唱でした。

 

ヴォカリーズの曲は、ドビュッシー/夜想曲、プッチーニ/蝶々夫人のハミング・コーラス、コルンゴルト/死の都のピエロの歌の8人のソプラノによるヴォカリーズなどあって、これらの曲は歌詞がないことが必然のように聴こえますが、このグリエールの曲は歌詞が欲しくなるような、無くてもいいような、不思議な感覚になる曲。とても珍しいものを聴きました。

 

アンコールのアリャビエフ/ナイチンゲールもシャギムラトヴァさん、見事に歌って盛り上がりましたね。魔笛の「夜の女王」や「ランメルモールのルチア」のタイトルロールを歌われているそうです。いつかオペラでも聴きたいと思いました。

 

 

 

後半はカリンニコフ/交響曲第1番。大好きなロシアの交響曲で、これまでエフゲニー・スヴェトラーノフ/N響、アレクサンドル・ラザレフ/日フィルと素晴らしい実演を聴きました。今日はどうでしょうか?

 

第1楽章。冒頭から山田和樹さんは速めのテンポで進めます。この曲はしっとり聴かせる演奏もいいですが、私はこのくらいの軽快な進行の方が好き。展開部で旋律をいろいろな楽器が受け継いでいく場面とか、その見事な繋ぎやめくるめく感にゾクゾクしますね!

 

第2楽章は木管が次々とエキゾチックで叙情的な旋律を奏でていくのが素敵。第3楽章は打って変わって明るく爽やかな曲想に。リズミカルな進行が本当に心地よい。カリンニコフ1番は珠玉の交響曲だと思いますが、初演時にこの中間の2つの楽章がアンコールされた、というのも頷けます。

 

第4楽章。切れ味鋭く進む弦楽器の小気味よさ、管楽器が弧を描いてリレーする愉快さ、コントラバスがゆっくり落下するユーモア、慎重に上がっていくファゴットのおどけた感じなどなど、次々と音楽が流れる素晴らしい展開!チャイコフスキー1番の第4楽章と並んで民族のリズム感溢れるカリンニコフの良さを十分に引き出す絶妙な指揮と演奏!

 

そしてトドメはシベリウス5番の第3楽章の白鳥の主題に似た金管による3つの和音の後、いよいよアクセルを踏む場面でまさかの弱音!そして振り向きざまのアッチェレランド!今日の演奏の中で一番の驚き、これには痺れました!ラストの壮大な盛り上がりを前に、何か敬虔で真摯な気持ちになるような瞬間。山田和樹さん、見事な指揮でした!

 

 

 

山田和樹さんとアルギナ・シャギムラトヴァさんと読響による、多様な魅力の楽しいコンサートでした!年間の定期会員になると、必ずしも好きな曲、聴きたい曲だけはないコンサートに当たるので、逆に新しい曲との出会いがあり広がります。これからもそんな曲たちを大いに楽しんで行きましょう!