さあ、再びパーヴォ・ヤルヴィさんがN響に客演する楽しみな月間がやってまいりました!マティアス・ゲルネさんの歌も楽しみです!

 

 

NHK交響楽団第1915回定期演奏会Apro.

(NHKホール)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

バリトン:マティアス・ゲルネ

 

マーラー/こどもの不思議な角笛

ニールセン/交響曲第2番ロ短調「4つの気質」

 

 

 

前半はこどもの不思議な角笛。ゲルネさんによって選択された7曲が披露されます。マティアス・ゲルネさんと言えば、一昨年に観て超絶に感動したアルバン・ベルク/ヴォツェックのタイトルロール!人の良いヴォツェックをものの見事に好演していました。今日のマーラーも非常に楽しみです。

 

(参考)2017.8.17 アルバン・ベルク/ヴォツェック(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12317871044.html

 

 

1曲目は「ラインの伝説」。ワルツの楽しい曲。ゲルネさんの美声が心地良い。歌詞にはライン川とともにネッカー川が出てきますが、かつてドイツ南部のトゥービンゲンに行った時に見た、美しいネッカー川を思い出しました。

 

 

(写真)美しいトゥービンゲンのまちなみとネッカー川。トゥービンゲンは大学町、若い学生さんたちが川べりで並んで日なたぼっこをしていたのが印象的。詩人のヘルダーリンが長く住み、ヘルマン・ヘッセが書店で働いていたまちでもあります。

 

 

2曲目は「トランペットが美しく鳴り響く所」。愛し合う若い男女の朝方の別れの場面を、ゲルネさんが優しくも切なく歌います。そして男は戦場へと赴き…、最後に音楽が悲しい短調になるのが本当に切ない…。

 

3曲目は「浮世の生活」。お子さんに関わる悲しい事件の多い昨今、この曲を聴くと心が張り裂けそうになります…。最後の悲劇の節の前のヴァイオリンの弱音!今回のマーラーではパーヴォさんとN響による弱音の表現が絶妙で、ゲルネさんの柔らかい歌とよく合っていました。。

 

4曲目は「原光」。最初のコラール風の金管が交響曲第2番よりハッキリ聴こえて、神様の存在をより強く感じます。いつもはメゾ・ソプラノで聴きますが、ゲルネさんの柔らかいバリトンの歌声で聴くのもいいものですね。最後の方のオケの弱音の温かい響き!大いなる愛情を感じました。

 

5曲目は「魚に説教するパドヴァの聖アントニオ」。いろいろな魚が出てきて、楽しい内容の歌と音楽、そして皮肉の結末。以前は「小鳥に説教する聖フランチェスコ」も同様の風刺なのかと勘違いしていましたが、全く反対の内容でしたね。久しぶりにベリオ/シンフォニアを聴きたくなりました。

 

6曲目は「死んだ鼓手」。トララリ、トララライの勇ましい歌ですが悲しい結末…。子供の不思議な角笛はてっきり角笛交響曲の第2~4番のみに使われていると思っていましたが、第7番第2楽章の行進曲の音楽も聴こえてきて、おおっ!と思いました。

 

7曲目は「少年鼓手」。シリアスな音楽。N響の繊細な伴奏が素晴らしい!そして、ゲルネさんの見事な歌!

 

 

何この素晴らしい子供の不思議な角笛!歌手・指揮者・オケの見事に調和した、素晴らしい歌曲!

 

 

いや~、この完成度の高い歌とオケによる歌曲には痺れました!マティアス・ゲルネさんの美声を活かして、弱音を上手く使って、広~いNHKホールを感じさせない調和の取れた見事な世界観。観客のみなさんも静かに唸っていた雰囲気がありましたね。

 

 

 

後半はニールセン/交響曲2番。私はこの曲を初めて聴いた1995年のN響定期のことを昨日のようによく覚えています。それまでの曲想が全くなかったかの如く、はっちゃけた第4楽章の明るい音楽に大いに仰け反ったからです(笑)。何と聴くのは24年ぶり(笑)、とても楽しみです。

 

第1楽章。冒頭から大変勢いの良い音楽。響き的には既にニールセンという印象ですが、どこかしらヤナーチェクにも似ているように感じます。パーヴォさんとN響のニールセンはメリハリやキレが素晴らしい!途中、ショスタコーヴィチ/交響曲第4番第1楽章にそっくりな旋律が聴こえてきて、これは一体?と(笑)。

 

第2楽章。ワルツ風のリズムが何とも心地良い音楽。パーヴォさんとN響は第1楽章と打って変わって、ホンワカ感が満載。う~ん、この音楽はケセラセラでは?(笑) プログラムには「冷静で感情の起伏が見られない粘液質」とありましたが、もしかすると、他の要素もあるのかも知れません?

 

第3楽章。プログラムには「息の長い重苦しい旋律が続く」とありましたが、負のイメージよりも荘重で隅々まで充実の音楽、という印象を持ちました。久しぶりに聴いて、この楽章の素晴らしさに大いに魅了されました!N響の鳴りっぷりが素敵です。

 

第4楽章。冒頭からあっけらかんと明るい音楽!これです、これ!(笑) しかし今日はその愉快な音楽だけでなく、中間部のしみじみさを、パーヴォさんが弱音でじっくり聴かせていたことが印象的でした。そして、最後はええ~!?これで終わっちゃうの?という唐突な逃げ切り!

 

 

何この人を喰った終わり方!ニールセン、最高!(笑)

 

 

いや~、またしてもニールセンにしてやられた!(笑) 一体何なんでしょうね、この癖になる愉快さは。パーヴォさんとN響も、各楽章の表情をよく描き分けていて、さすがでした。こう見事なニールセンを聴くと、今年9月のフルート協奏曲も楽しみですね。そして、近い将来に、交響曲第4番「不滅」をぜひ!