素晴らしい名演だった先週のドビュッシー/海。シルヴァン・カンブルランさんが読響の常任指揮者として最後となる定期演奏会を聴きに行きました。

 

 

読売日本交響楽団第586回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:シルヴァン・カンブルラン

 

ヴァルデマル:ロバート・ディーン・スミス

トーヴェ:レイチェル・ニコルズ

森鳩:クラウディア・マーンケ

農夫・語り:ディートリヒ・ヘンシェル

道化師クラウス:ユルゲン・ザッヒャー

 

合唱:新国立劇場合唱団

 

シェーンベルク/グレの歌

 

 

この日は別会場で、ダニエル・ハーディング/マーラー・チェンバー・オーケストラのモーツァルト39番・40番・41番のコンサートもありました。ハーディング/MCOのこの曲目(2006年のモーツァルト・イヤーに全く同じ曲目を聴きました)だったら名演間違いなしですが、何と言ってもカンブルランさんの定期のフィナーレを飾るグレの歌。ここは選択を間違ってはいけません。迷わずこちらのチケットを取りました。

 

グレの歌はこれまで一度だけ聴いたことがあります。1995年のN響の定期演奏会、指揮者は若杉弘さんでした。その時はまだシェーンベルクにはそんなに目覚めていませんでしたが、とにかく凄い曲を聴いた!という印象が残っています。今日はどうでしょうか?


 

第1部。冒頭から繊細で陶酔的な演奏。夕闇に下降して静まるチェロの音色が美しい。ロバート・ディーン・スミスさんのヴァルデマルの立派な歌、そして迎えるトーヴェのレイチェル・ニコルズさんも素敵な歌。高まる2人の愛の音楽に魅了されます。

 

浄夜に次に手がけられたシェーンベルクの音楽は、ワーグナーやR.シュトラウスを思わせる音楽。途中、短調でまんまローエングリン(第2幕)の音楽が聴かれて、ニヤリとさせられます(笑)。

 

トーヴェが愛の死を歌い、ヴァルデマルが不思議なトーヴェと歌う歌、そして官能的・陶酔的な後奏。高まる音楽は感動的、大いなる聴きものでした!もう涙涙…。この辺りの高音のきらめきはR.シュトラウスを思わせますね。

 

トーヴェの死を歌う森鳩はクラウディア・マーンケさん。2014年にバイロイト音楽祭のワルキューレのフリッカで聴きました。堂に入った、さすがの見事な歌!

 

 

第2部のヴァルデマルの嘆きと怒りの歌の迫力!そして、カンブルランさんの、もうこれしかない、という堂に行ったテンポ!最後もビシッと締めました。素晴らしい前半!

 

 

休憩の後、第3部。ヴァルデマルが臣下たちに狩猟に行くぞ!と力強く歌いますが、その後の旋律がウォルトン/交響曲第1番にそっくりな件(笑)。スペクタルな合唱の場面は新国立劇場合唱団による見事な歌!透明感と迫力とが見事に同居するオケの響きは、カンブルランさんの真骨頂です。

 

亡きトーヴェを求めてさまようヴァルデマルの歌。スミスさんの思いの込められた歌に心打たれます…。そしてシェーンベルクの半音階の音楽にもう涙涙

 

その後は道化師の歌。このシーンを聴くとリア王を思い出します。ユルゲン・ザッヒャーさんの歌はミーメを彷彿とさせるものがあり、ワーグナー/ジークフリートでミーメがジークフリートにお前を育てたんだぞ!と歌う場面にそっくりな下降旋律が出てきて、ほとんど爆笑しそうになります(笑)。

 

合唱による死者の歌の場面は不思議な和声。シェーンベルクが無調の時代に入ってからもこの曲を作曲していたことを思わせます。ディートリヒ・ヘンシェルさんの語りではシュプレヒゲザングが出てきますが、観念的な内容のシュプレヒゲザングが長調に転じると伸び伸びとした歌詞になり、最後シュプレヒゲザングから歌になる場面は感動的!

 

そしてラストの合唱!合唱とオケが転調を入れつつ大迫力で盛り上がりますが、何という透明感と救済の音楽!涙が溢れて仕方ありませんでした

 

 

(アッシジの聖フランチェスコに続いて)またカンブルランさんと読響がやってくれた!!!歌手と合唱も素晴らしい!!!

 

 

いや~、感動的でもの見事なグレの歌でした!大いなるカタルシス、聴き終わった後の清々しさたるや半端なかったです!

 

観客も盛大な拍手、カンブルランさんに一斉にブラボーが飛んで感動的!もちろんいわゆる一般参賀となりましたが、最後カンブルランさんが支持してくれた観客たちにお礼をしているかように、手を合わせて、たっぷり応えられていて、さらに感動的でした!

 

 

常任指揮者としての最後の定期演奏会は大大大成功!カンブルランさん、見事なフィナーレ、最高でした!(お~い、まだ後3公演ありますよ~、笑)

 

 

 

(写真)ウィーンのアーノルド・シェーンベルク・センター(青い旗)。コンツェルト・ハウスの裏にあります。中にはシェーンベルクに関する楽譜を始めとした様々な展示があって魅了されましたが、最も印象に残っているのは、グレの歌の演奏の映像が流されていたこと。引き込まれて1時間くらい観てしまいました。

 

行ったのは2013年。奇しくもグレの歌がフランツ・シュレーカー指揮によりウィーンで初演されてから100周年のことでした。