輪島、金沢を楽しんだ後、私が今回の旅の中でぜひ行ってみたいと思ったのは、京都近郊は山崎にある、サントリー山崎蒸溜所です!

 

 

 

(写真)サントリー山崎蒸溜所

 

 

サントリーシングルモルトウイスキー山崎。私がこれまで人生で一番お世話になっているウイスキーです。お酒はワインが中心だった私がウイスキーを飲むようになったは2000年代はじめ。ウイスキーはスコットランドが本場なので、当時は何となくスコッチのシングルモルトを飲むのがおしゃれでカッコイイ、というイメージがありました。

 

しかし、私は飲み始めの頃から山崎12年に魅了されました。というのも、何しろ芳しい香りで美味しいから。美しい黄金色、甘く華やかな香り、甘さやコクなどバランスが良く円やかな味わい。飲んでいて、とてもしっくりなじみ心地良い。ウイスキーはとにかく美味しいものを飲めれば十分だったので、山崎12年ばかり愛飲していました。

 

たまに異なる産地のウイスキーを楽しむこともありますし、昨年蒸溜所を訪問した余市もいいなと思いますが、私の場合、ウイスキーと言えば山崎12年。一時は家に6本くらい常備していました(笑)。要するに、徹頭徹尾、山崎12年のファンなのです。昨年夏に金沢に来た時に、金沢から京都・大阪方面には、サンダーバードという特急でスムーズに行けることが分りました。これは行くしかないでしょう!

 

 

 

 

 

(写真)JR京都線 山崎駅。遂に来た!駅にも広告や案内が。

 

 

 

 

 

(写真)山崎蒸溜所に到着。入口には大きな蒸溜釜が。

 

 

 

(写真)ウイスキー館。ここで山崎蒸溜所やシングルモルトウイスキー山崎に関する様々な展示を見ることができました。

 

 

 

今回、蒸溜所ツアーに参加し、その後、ウイスキー館を見学、試飲をしました。素晴らしかったツアーはみなさま行かれた時のお楽しみ、ということにして、主にウイスキー館の展示について、特に印象に残ったことを以下に記します。

 

 

◯創業者 鳥井信治郎「日本人の繊細な味覚にあった、日本のウイスキーをつくりたい」

 

◯蒸溜所の地に山崎が選ばれたのは、以下の2点から。

①良い水(竹林から豊富に湧き出る良質の水/千利休の茶室/万葉の歌にも詠まれた名水の里/山崎にある水無瀬神宮の湧水は「離宮の水」と呼ばれ日本の名水百選)

②湿潤な気候(木津川、桂川、宇治川の3本の川が淀川に合流し、温度差で蒸発/湿潤で濃霧が発生しやすい/樽の熟成に優れた環境)

 

◯当時は社員、財界人、学者まで反対。本格的なウイスキーづくりはスコットランドやアイルランド以外では不可能と考えられていた。しかし、「やってみんことにはわかりまへんやろ」

 

◯1923年10月に日本初となるモルトウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」の建設に着手、1924年11月に蒸溜所誕生

 

◯国産第一号ウイスキー「サントリーウイスキー白札」のボトルの展示

⇒当時の日本人の嗜好には合わなかったようで、「煙くさい」「焦げくさい」などと言われ評判はいまひとつだったそうです。

 

◯「白札」の売れ行きは低迷したが、1937年「サントリーウイスキー角瓶」はうまいと評判に。1940年にできたダルマの愛称で親しまれる「サントリーオールド(黒丸)」は太平洋戦争があったため1950年に発売。

 

◯山崎蒸溜所は戦火にも無傷で、峡谷の穴倉に退避させた原酒は無事だった。期せずして戦争中に熟成を重ね香味がよくなった原酒が、後のウイスキーづくりに欠かせないものとなった。

 

◯1960年、鳥井信治郎はマスターブレンダー最後の作品として「サントリーウイスキーローヤル」を発売。翌年、社長とマスターブレンダーを佐治敬三に譲る。佐治敬三は大阪大学の理学部で有機化学を専攻。化学者としての熱い思いがウイスキーにも託されている。

 

◯1950年代になると、仕事帰りに気軽に立ち寄ってちょっと一杯飲んでいくスタイルのトリスバーがまたたく間に増加。トリス広告のキャラクター「アンクルトリス」、コピー「人間らしくやりたいナ」「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」。

 

 

(写真)アンクルトリスが珍しく山崎を飲んでいる、の図。

※購入した絵葉書より

 

 

◯「洋酒天国」の冊子40冊の展示。トリスバーなどで読まれました。発行部数10万部。編集発行人は開高健、柳原良平、山口瞳、坂根進など。ウイスキーは酒という枠を超え、戦後の文化を牽引する存在となっていった。

⇒私はコンサートや美術展の後に楽しんだお酒をせっせとアップしていますが(笑)、芸術文化とお酒は切っても切れない素晴らしい組み合わせだと固く信じています。

 

◯シングルモルトウイスキーとは、「一つの蒸溜所で蒸溜されたモルト原酒だけでつくられたウイスキー」

山崎蒸溜所では様々なタイプのモルトをつくり分け、その多彩な原酒を組み合わせることで、繊細で複雑な香味を生み出している。

 

◯山崎蒸溜所では初溜と再溜で16基の蒸溜釜。使用する釜の形状やサイズにより出来上がるニューポットの味わいも違うものになる。蒸留釜の途中に丸い膨らみがあるとピュアな成分が蒸溜され、ストレートだと重厚になる。

 

◯同じニューポットでも詰める樽の大きさ・形状・材質、貯蔵庫内の保管位置など、ウイスキーが熟成される環境によってその香味は複雑に変化する。樽はシェリーバット、ミズナラ、パンチョン、バーレル、ボッグスヘッドの5種類。樽による熟成では、1年間で分量が2~3%減る。「天使の分け前」

 

 

(写真)ウイスキー館の樽のディスプレイ。樽の偉大さを改めて感じました。

 

◯山崎の文字には寿の漢字が入っている、寿屋から受け継がれる想いと、ジャパニーズウイスキーの門出を祝う気持ちが込められている。

⇒私は喜ばしい場で飲むに相応しいお酒、という意味も感じます。

 

◯山崎の初期の広告:

わたしの国には、ほんとうによいウイスキーがあります。

サントリー160余万のモルト樽ひとつひとつに脈々と流れるのは、日本でなければつくれないハーモニー。

どこの国のピュアモルトにも似ていない、日本のピュアモルトの魅力を味わってください。

ウイスキーは、日本でハーモニーをみがきました。

なにも足さない。なにも引かない。サントリーピュアモルトウイスキー山崎

 

⇒私はこの「日本でなければつくれないハーモニー」「どこの国のピュアモルトにも似ていない」のフレーズが好きです。私がどうしてここまで山崎に惹かれるのか?それもこの辺りに理由があるのかも知れません。

 

そして、私はこのフレーズの中に、近年素晴らしい演奏が聴かれる東京のオーケストラの理想型が先取りされているようにも感じます。

 

◯山崎のバリエーションのボトルが25本並んでいて圧巻でした!!!私はこのうち、5種類くらいを購入しました。ああ、もっと買っておけば良かった…。

 

 

山崎だけでなく、同じサントリーのブレンデッドウイスキーの傑作、響の展示もありました。

 

 

◯「響」の甘く華やかな香味を織り成すのは、山崎蒸溜所、白州蒸溜所、知多蒸溜所によってつくられた原酒たち。サントリーが持つ百数十万の貯蔵樽の中から「響」に相応しい数十種類の希少な長期熟成原酒を厳選し、繊細な感性と匠の技を持つブレンダーの手によって生み出されたサントリーブレンデッドウイスキーの最高傑作です。

 

◯「響」の中味をつくり出した当時のチーフブレンダー稲富孝一は、長年ヴィオラを嗜んでいたため、多彩な原酒が響き合う香味を創造するにあたり、ブラームスの交響曲第1番第4楽章をイメージしていたといいます。

⇒何とブラームス1番第4楽章の楽譜までありました!

 

 

◯海外のウイスキーの専門家の評価

「ジャパニーズウイスキーは、絶妙としか言いようのない深み、香りのバランス、そして独特の味わいを見事に現していると思います。グラスに口を付けた瞬間、このすべてが口の中で軽やかに踊り出すのです。」(ウイスキーマガジン編集長、デイブ・ブルーム氏のコメント)

 

 

 

さて、せっかく山崎蒸溜所まで来たので、取っておきのお楽しみ、山崎の試飲とまいりましょう!

 

まずは、ここ山崎蒸溜所でしか試飲することのできない、山崎12年の原酒となるパンチョン、シェリー、ミズナラの3つの樽の原酒から。

 

 

(写真)左から山崎12年原酒パンチョン、シェリー、ミズナラ

 

◯山崎12年原酒パンチョン

色:山崎に近い黄色だが、若干緑がかっている

香:甘くて円やか、温かみ、まったり感

味:香り同様に丸さ、円やかさ、人懐こい雰囲気、ブルゴーニュの白ワイン

 

◯山崎12年原酒シェリー

色:山崎25年近い琥珀色

香:濃厚で焦げたニュアンス、熟成した果物、ドライフルーツ、芳醇な雰囲気

味:甘苦い、カラメル、赤ワイン

 

◯山崎12年原酒ミズナラ

色:山崎と山崎12年の間、美しい金色

香:ピュアで繊細な柑橘系、柚子、キリッとした日本美人

味:ピンと張り詰めた雰囲気、エレガント、線が細い、後から甘み、ボルドーの白ワイン

 

これらの個性のある樽による原酒が絶妙にブレンドされて、非常にバランスの取れた山崎12年になることがよく分りました!さらに、樽で熟成される前、蒸留器で蒸溜された後のニューポットも試飲してみました(写真はなし)。

 

◯山崎蒸溜所ニューポット

色:当たり前ですが無色透明(笑)

香:甘い麦の香り、アルコールの香り、グラッパやスリヴォヴィッツの香り

味:ピュアな味わい、アルコールの甘さ、やはり甘みの強いグラッパやスリヴォヴィッツという印象

※スリヴォヴィッツとは、J.シュトラウスⅡのオペレッタ「こうもり」第3幕でフローシュがフランツ・ヨーゼフ1世の肖像画の後ろにお代わりのビンを隠し持っていた(笑)プラムの蒸留酒です。

 

ニューポットは大麦由来の雰囲気は感じるものの、純粋なアルコールに近い印象です。樽による熟成の偉大さを感じました。やはりウイスキーは時を飲むお酒ですね。

 

 

そして、お待ちかね、山崎の試飲です!

 

 

(写真)左から山崎12年・山崎18年・山崎25年。はう~、幸せの3ショット!

 

◯山崎12年

色:黄金色に茶色のニュアンスが入り、熟成させたソーテルヌのよう

香:桃、芳醇なブルゴーニュ、ヴァニラ香、まったり円やか、一番飲み慣れているウイスキーなのでとにかく落ち着きます

味:円やか、甘み、何というバランスの良さとスムーズさ、スルスル入る、落ち着く、鉄板のマイ・フェイバリット・ウイスキー

 

◯山崎18年

色:これはもう茶色、熟成したトカイのよう

香:熟したイチゴやラズベリーのジャム、バランス良く構築感のある香り

味:幾層にもクッションがあるような円やかさ、引っかかるものが全くない、溢れる旨味、凄いウイスキー

 

◯山崎25年

色:美しい琥珀色、悠久の時を感じる

香:熟したジャム、オレンジやプラム、どこかしら木造家屋の香り、複雑にしてピュアという不思議

味:もはや何もコメントできないようなスケールの大きさ、偉大なウイスキーをいただく静かなる感動、ひたすら旨味しか感じない

 

この3つはどれも本当に素晴らしい!それぞれ熟成のステージは違いますが、それぞれの段階で完成されている、という感じです。偉大なウイスキーをその蒸溜所で味わえた、私のウイスキー人生の中でも特別な時間でした!

 

 

なお、この他にも、ここでしか試飲できないものも含め、せっかくなのでいろいろいただきました。山崎蒸溜所、あまりの素晴らしさに感無量!もともとファンでしたが、ますます大ファンになりました。山崎、最高!!!

 

 

 

 

 

(写真)なお、ツアーでも嬉しいことに最後に試飲がありました。4杯目は贅沢なことに山崎のハイボールを各人で作りますが、これが超絶に美味い!山崎をハイボールにしてしまって本当にいいの?とおっかなびっくりでしたが、もはや今後、他のハイボールは飲めなくなるくらいの素晴らしさ!

  

 

 

(写真)そして、お土産もバッチリ(笑)。山崎蒸溜所に行けた余韻のもと、いろいろ楽しめそうです!