名指揮者シルヴァン・カンブルランさんの読響の常任指揮者としての最後のコンサートのシリーズが始まりました。今日はイベールにドビュッシー、フランス・プロです!

 

 

読売日本交響楽団第620回名曲シリーズ

(サントリーホール)

 

指揮:シルヴァン・カンブルラン

フルート:サラ・ルヴィオン
 

イベール/寄港地

イベール/フルート協奏曲

ドビュッシー(ツェンダー編)/前奏曲集(日本初演)

ドビュッシー/交響詩「海」

 

 

 

私がシルヴァン・カンブルランさんと読響のコンビで真っ先に思い出すのは、あの日本のオーケストラにおけるエポック・メイキングな出来事となった、2017年11月のメシアン/アッシジの聖フランチェスコの公演です。

 

今日のプログラムにカンブルランさんの退任を迎えてのインタヴュー記事がありましたが、読響とはカンブルランさんの5つ目の「アッシジ」のプロダクションで、その中でベストの演奏だったこと、その前の2017年1月のメシアン/彼方の閃光の公演で手ごたえを感じたこと、などを話されていました。

 

読響との9年間の集大成となるコンサート、とても楽しみです。

 

(参考)2017.11.19 シルヴァン・カンブルラン/読響のメシアン/アッシジの聖フランチェスコ(日本初演)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12329807449.html

 

(参考)2017.11.26 シルヴァン・カンブルラン/読響のメシアン/アッシジの聖フランチェスコ(2回目)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12331622167.html

 

(参考)2017.1.31 シルヴァン・カンブルラン/読響のメシアン/彼方の閃光

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12244460156.html

 

 

 

まずはイベール/寄港地。静寂から始まり、途中にリズミカルな音楽、最後の静かな余韻が素敵な第1曲「ローマ-パレルモ」。エキゾチックなオーボエが雰囲気を作る第2曲「チュニス-ネフタ」。活発な踊りの音楽が楽しい第3曲「バレンシア」。とても繊細で味わい深い寄港地でした。

 

次にイベール/フルート協奏曲。フルート独奏が少々不可思議とも思える旋律を刻む第1楽章。サラ・ルヴィオンさんの叙情的なフルートの歌に痺れた第2楽章。快活なフルートに引っ張られて賑やかに盛り上がる第3楽章。サラ・ルヴィオンさんのフルートの妙技を存分に堪能できました!

 

アンコールはドビュッシー/シランクス。後半につながる素敵な流れ。揺らめく嘆きのフルート。最後は牧神の午後への前奏曲の旋律がこだまして魅了されます。小粋なアンコール、いいですね!

 

 

後半はドビュッシー/前奏曲集のオーケストラ版。何と日本初演です!作曲家・指揮者のハンス・ツェンダーさん(都響との「無字の経」を聴いたことあり)が、ドビュッシー/前奏曲第1集・第2集から「帆」「パックの踊り」「風変わりなラヴィーヌ将軍」「雪の上の足跡」「アナカプリの丘」の5曲を選んで、オーケストレーションをした曲です。

 

私はラヴェルの曲ではオケ版よりピアノ版の方が好きな曲が多いので、ドビュッシーのオケ版もどうなのかな?と思っていましたが、これがかなり雰囲気のあるオーケストレーションで、非常に面白かったです!意表を突くような楽器を当てたり、打楽器を多用したり、不思議な音色を出したり、曲想がよ~く出ていました。どちらかと言うとややマイナーな曲を選んだのも良かったのかも?

 

それにしてもトランペットのミュート、そしてコントラファゴット先生の破壊力!(笑) 特に、「風変わりなラヴィーヌ将軍」が最高でした!

 

 

最後はドビュッシー/海。もう大好きな曲です。第1部「海の夜明けから真昼まで」。フルート、トランペットと読響の印象的なソロ。長調に転換する場面は、何とも言えないニュアンスの込められた温かいチェロ!

 

最後の盛り上がりは、ゆっくりのヴァイオリンから、たっぷりなイングリッシュ・ホルン、そしてあざやかに浮かび上がるハープ!素晴らしいリレーに涙涙…。そして、スケール感の半端ない日の出!

 

第2部「波の戯れ」。第1部に引き続き、読響の各セクションの名人芸の連続に魅了されます。色彩感が豊かにして動的な演奏。後半の3拍子の陶酔の音楽では、自分からは全く意識していなかったのに、自然と波間で人魚たちが踊る光景が思い浮かんできました!

 

第3部「風と海との対話」。この楽章はめくるめく世界。自然の厳しさを思わせる不安げな場面、深い海の神秘さを印象づける場面、風と波の勢いを感じる場面、もうピタピタッとはまります。

 

最後の方の、嵐の前の静けさの月夜に照らされた海を思わせる場面は、じっくりたっぷり進みます。何という雰囲気のある演奏!涙止まりません…。ラストもスケール感のある盛り上がり。繊細さと色彩感と迫力とが同居した、類い稀なる演奏!

 

 

何この圧巻の名演!シルヴァン・カンブルランさんと読響の集大成!

 


いや~、凄いドビュッシーでした!私は海はシャルル・デュトワ/N響の繊細で色あざやかな演奏が好きですが、それがカンヴァスにカラフルに絵具を塗って、第1級の風景画を思わせる演奏とすれば、カンブルランさんと読響の演奏はもっと動的で、実際に自分がその場で海の様々な情景を目撃しているかのように感じる、ものの見事な演奏でした。

 

 

シルヴァン・カンブルランさんと読響のフランス・プロ、素晴らしかったです!常任指揮者を退任されるのは本当に惜しまれますが、今月の最後のシリーズはあと3回、もちろん全て聴きに行きます。今から本当に楽しみです!

 

 

 

(写真)私がドビュッシー/海を聴いて思い出すのは、地中海の海の景色です。写真はモナコから見た地中海の光景。特にパリからニースにフライトで飛んで、モナコに移動する途中、列車の車窓から初めて見た地中海にはめちゃめちゃ感動しました。