2月28日(木)のサントリーホールに続いて、クリスチャン・ツィメルマンさんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。

 

 

日本・ポーランド国交樹立100周年記念事業

ポーランド芸術祭 2019 in Japan 参加公演

 

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

(東京オペラシティコンサートホール)

 

ショパン/4つのマズルカOp.24

ブラームス/ピアノ・ソナタ第2番嬰ヘ短調Op.2

 

ショパン/スケルツォ第1番ロ短調Op.20

ショパン/スケルツォ第2番変ロ短調Op.31

ショパン/スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39

ショパン/スケルツォ第4番ホ長調Op.54

 

 

(参考)2019.2.28 クリスチャン・ツィメルマンさんのピアノ・リサイタル(ショパン/スケルツォ全曲)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12443512178.html

 

 

 

あれ!?フランツさん、同じ曲目のコンサートやリサイタル、同じ演目のオペラやバレエには行かないようにして、いろいろな公演を楽しみたい、とか言ってたのでは?言ってることとやってることが違うのでは?

 

いや~(笑)、基本的にはそうなんですが、クリスチャン・ツィメルマンさんのリサイタルの場合はもう特別なんです。あたかも伝説の目撃者となるかのような瞬間を体感できる、何度でも味わいたくなるスペシャルな時間なんです。

 

 

そもそも、この日は当初はリサイタルの予定がありませんでしたが、サントリーホールのリサイタルが発売当日にあっという間に売り切れたので、追加公演が実現したものです。もちろん、即決でチケットを購入しました。そして、会場に入ると、満席のサントリーホールに続いて、1600席の東京オペラシティコンサートホールも満席!特にピアノを練習されてそうな、若い学生さんたちが多かったように思いました。

 

 

まずはショパン/マズルカ。Op.24-1は右手と左手がまるで連動しないような揺らし方や、3小節目までは真っ直ぐ行って、4小節目にたっぷり歌うところなど、ニュアンスに溢れるマズルカに早くもメロメロに!Op.24-2は急ぎ足なピアノ。敢えてつんのめるように刻む途中の3連符には、抑えられない気持ちの高鳴りを感じます。

 

Op.24-3もOp.24-4もニュアンスに溢れた素晴らしいピアノ!この得も言えぬ味わいのピアノは、もはやポーランド人にしか表現できないマズルカのようにすら思えます。

 

 

続いてブラームスのピアノ・ソナタ。先週は3番でしたが、今日は2番です。冒頭から激情の和音の連続!しかし音が濁らず見事なまでにクリア。どうやったらこんなに綺麗なフォルテが弾けるのでしょうか?

 

キラキラとしたピアノの瑞々しさ、そして弱音の儚さやいじらしさ、最後の勿体ぶった歌い方。まるでピアノの表現の見本市のよう。ツィメルマンさんのブラームス、今日も大いに堪能しました!この曲はクララ・シューマンに献呈された曲。ピアノ協奏曲第1番にも通じるものを感じます。

 

 

 

後半はスケルツォ全曲。28日(木)と同じ曲目で、今回のツアーのハイライトです。前回はショパンの人生を投影した曲のように聴こえましたが、今日はどうでしょうか?

 

 

第1番。冒頭からの主題は1回目、2回目、3回目とだんだん強くなっていきます。左手が「タ~ンタタ~ン」と大きく刻みを入れますが、その位置が先週と変わっていました。その日のインスピレーションで表現されているようです。

 

最後の緩め方も前回と違う。前回はただ力なく緩めた印象でしたが、今回は緩めた上で、こぶしの置き場を最後壁にぶつけるような強い終わり方。違う感情、という印象を持ちます。

 

 

第2番。長調の主題は前回と同じでやはり端正でスマート。ここはテンポを揺らしたり、右手と左手をズラしたりしない演奏の方が逆に難しいような気も?聴いていて、何だか綺麗だけど、つれなくスタスタ歩いて行ってしまう女性の印象のように聴こえてきました(笑)。

 

中間部の印象的な右手の3連符に左手が呼応する旋律は、2回目は強調を入れる音をズラして、聴いたことのないような裏旋律を作っていました!とても印象的なピアノです。

 

3回目の長調の主題の最後の盛り上がりは、盛り上がりの始まりの転調する最初の和音をごく弱音に!これには痺れました!そしてラストの追い込みは前回よりも劇的に。やはり前回とは異なる印象です。

 

 

第3番。この曲の冒頭の短調の和音の連打を聴いて、何かの啓示のように、ビビビッと反応しました!これは前半のブラームス2番と同じ世界観の音楽のように聴こえます。すると、前回はショパンの波瀾万丈の人生を描いているように聴こえてきたこの曲が、まるで女性に対する情熱を曲にしたかのように聴こえてきました。

 

第1番も第2番も前回とは少し印象が異なるので、ショパンの人生のステージを描くというよりは、あたかもスケルツォ全曲で4人の女性、そしてその女性とのやりとりや葛藤を描いているように感じました。今日の第3番のラストの燃焼度合いは、前回よりも高かったように思います。精緻さよりも情熱をピアノにぶつけるような音楽!

 

 

その流れで、第4番の聴こえ方も前回とは違ってきます。前回はファルスタッフをも思わせる達観の境地の音楽に聴こえてきましたが、今日は不思議なことに、長年連れ添った夫婦を描いた音楽のように聴こえてきます。冒頭からの明るく可愛らしい旋律は、チャーミングで朗らかな愛妻を思わせます。

 

中間部の深い音楽は、旦那さんが一人で黄昏れて、人生を振り返るかのよう。中間部最後に昇る前のツィメルマンさんのたっぷりした溜め!主題に戻ってから、黒鍵を含むトリルを強調したのは、夫婦のおだやかな日常に舞い込むさざ波のよう。

 

う~ん、4番はスケルツォの中で一番馴染みが薄かったですが、もしかすると幻想ポロネーズやバラード4番のような「神曲(かみきょく)」なのかも知れません。イメージがいろいろ膨らむ、本当に表情豊かなピアノです。

 

 

アンコールのブラームス/バラード3曲も弱音を利かせて別世界。クリスチャン・ツィメルマンさんのリサイタル、今日も素晴らしいの一言でした!ホールと座席の違いにより、ピアノの聴こえ方が違うだけなのかも知れませんが、同じ曲でもその日によって、表現付けやニュアンスが異なって聴こえてきます。さらに前半の曲目が異なることによっても違う印象。曲目は同じでも、繰り返し聴きに行く喜びがありますね!

 

そして、さらに嬉しいことに、クリスチャン・ツィメルマンさんのリサイタル、あともう1回聴きに行く予定なんです!(笑) 3月16日(土)はまっすぐ横浜へGo!今から本当に楽しみです!!!

 

 

 

 

(写真)会場で購入したクリスチャン・ツィメルマンさんのシューベルト/ピアノ・ソナタ20番&21番のCD。音響の素晴らしい柏崎市文化会館アルフォーレでの録音。何と、ツィメルマンさん25年ぶり!(笑)のソロ・アルバムです。

 

CDをなかなか出さないツィメルマンさん。今回のショパン/スケルツォ全曲もCDが出るかどうかは分りません。ならば、ライヴを聴きに行かないとですね!