ポーランドの名ピアニスト、クシシュトフ・ヤブウォンスキさんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。プログラムは嬉しいオール・ショパンです!

 

 

クシシュトフ・ヤブウォンスキ ピアノ・リサイタル

(東京オペラシティ コンサートホール)

 

日本・ポーランド国交樹立100周年記念事業

ポーランド芸術祭2019 in Japan

オープニングコンサート

 

オール・ショパン・プログラム

 

ポロネーズ第5番嬰ヘ短調

ワルツ第7番嬰ハ短調

ノクターン第13番ハ短調

エチュード第12番「革命」ハ短調

アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調

 

ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)

スケルツォ第2番変ロ短調

舟歌 嬰ヘ長調

バラード第1番ト短調

ポロネーズ第6番「英雄」変イ長調

 

 

このコンサートはショパン好きにとって嬉しいオール・ショパン・プロ、というだけでなく、日本・ポーランド国交樹立100周年を祝す「ポーランド芸術祭2019 in Japan」の開幕コンサートです。ショパンだけでなく、ポーランドも大好きな私にとっては特別な位置づけとなるコンサートです。

 

 

前半はポロネーズ第5番から。この曲はポロネーズのリズムにたっぷり浸れる曲(ショパンのポロネーズは実は必ずしも全ての曲がポロネーズのリズム満載、という訳でもありません)。最初からポーランドの雰囲気全開ですが、短調の音色には不安を強く感じます。中間部の素敵なマズルカ風の旋律には、民族衣装の女性たちが踊る情景を思い浮かびますが、再び出てくる短調のポロネーズに飲み込まれてしまいました。

 

ワルツ第7番。この曲は先日の新国立劇場バレエのレ・シルフィードでも出てきました。バレエでのオケの伴奏も良かったですが、やはりピアノの演奏は雰囲気ありますね!この曲も短調→長調→短調で、短調が印象的。次はノクターン第13番。神秘的な中、哀愁が立ちこめるノクターン。繊細でニュアンスに溢れた演奏に魅了されました。

 

革命のエチュード。ここまで悲しみの短調が続いて、この曲でトドメという感じ。ロシアのピアニストがよく弾くような劇的な革命、という感じのものではなく、悲しい事実を客観的に描いている、といった印象の演奏でした。

 

前半最後はアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。優しい音色に魅了されたアンスピ、ポロネーズのリズムに明るい希望を抱く後半。そこまで抑揚は付けずに真っ直ぐなポロネーズでしたが、どうしてこんなに雰囲気があるのか?やはりポーランド人のピアニストの弾くポロネーズは特別です!

 

 

後半は遺作のノクターンから。最初は切って軽く入り、前半はあっさり目。後半は抑揚を付けた演奏で雰囲気抜群。この曲はリサイタルにかかる機会が多いですが、ピアニストによって、本当にいろいろな表現付けがありますね。

 

スケルツォ第2番。冒頭は切らずにつなげて慎重な入り。長調の主題は右手がよく歌います。この場面での右手と左手のずらしは至福の瞬間。中間部の短調の3連符も歌いどころですが、ほとんど抑揚を付けずその前の夢見心地の場面を引きずっているよう、逆にその後の激しい場面を大きく盛り上げていました。3回目の長調の主題の最後、転調を繰り返す場面からの怒濤のラスト!

 

舟歌。ご存知、このアメブロでHaruさんが練習されている曲です。前半は伸びやかに入りましたが、中間部はかなり抑揚を付けた激しい演奏。主題が帰ってくる前の魅惑の長調の旋律はあたかも天使が舞い降りたかのよう!最後の方は一人でなく、伴侶を得ての船路のように聴こえました。

 

今日のヤブウォンスキさんの演奏で聴くと、ゴンドラのリズムを借りて、ショパンが自らの人生を語っているかのように聴こえてきます。舟歌は長らく苦手な曲でしたが、Haruさんの演奏を度々聴かせていただいて、かなりイメージできるようになってきました。Haruさん、本当にありがとう!

 

バラード1番。冒頭から比較的あっさり目のピアノ、愛の主題もそこまでは盛り上げず、逆にその後の加速する場面は速いテンポの中でニュアンスを込めた演奏で見事!ラストもかなりドラマティック。この曲のポイントは後半にあること、短調の曲であることを改めて印象付ける演奏でした。

 

ラストは英雄ポロネーズ。最初の和音の上昇を、何とグリッサンドのように聴かせていました!この曲は何度も聴いていますが、こんな冒頭は初めてです。その後の有名な旋律の場面は、これぞ正統派!という演奏。リズムやニュアンスが抜群にいい!中間部の左手のダダダダのオクターブ連打は比較的ゆっくり目。テンポを上げて疾走しない演奏であっても雰囲気出ますね。

 

そして、最後の方は何とペダルを踏みっぱなしに!ダダダダの音が重なって、あたかも最初は一騎の騎馬が集団になって、大騎馬軍団を形成したかのよう!ピアニストの表現力って凄い!その後のゆっくりのパートはそこまで揺らさずにあっさり目で却って雰囲気を感じる不思議。主題が帰った後は、再び正統派で格調高く。素晴らしい英雄ポロネーズ!

 

 

クシシュトフ・ヤブウォンスキさんのリサイタル、その素晴らしいショパンに大いに魅了された、とても幸せな、感激の時間でした!昨年11月に聴いたヤノシュ・オレイニチャクさんのリサイタルもそうですが、ポーランドのピアニストのショパンには、やはり特別なものがあります。ポーランド芸術祭2019 in Japanは最高のスタートとなりました!観客も大いに盛り上がっていましたね!

 

 

そして改めて思ったのが、これまで背伸びしながらでも、ショパンの曲をいろいろ弾いてきて本当に良かったということ。今日の曲目の中では、革命のエチュード、スケルツォ第2番、バラード第1番、英雄ポロネーズを過去に弾いたことがありますが、単に聴いただけの曲と違って、「あっ、ここでこう抑揚を付けた」「左手を強調した」「ルバートを入れた」「ここはこういうことをイメージして弾いているのかな?」など、プロのピアニストの演奏が手に取るように入っています。

 

曲と楽譜と1対1で対峙して、試行錯誤をして時間をかけた分だけ、得られるものもあるのかなと思いました。仕事しながらだと、ピアノの練習は疲れたり(特に目!笑)、忍耐が必要だったり、なかなか大変ですが、こうしていいことも沢山あるので、引き続き、練習に邁進できればと思います!今年は日本・ポーランド国交樹立100周年。これはショパンの曲も練習しないとですね。

 

 

 

(写真)ショパンが洗礼を受けたポーランドはブロフフ村の聖ロフ教会。ここでポーランドの女性ピアニストのアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズを聴けたのはいい思い出です。