樋口紀美子さんと脇岡洋平さんのピアノ・デュオのリサイタルを聴きに行きました。曲目は何と!全てドビュッシーの管弦楽曲の2台のピアノ版です!

 

 

樋口紀美子&脇岡洋平 ピアノ・デュオ・リサイタル

(浜離宮朝日ホール)

 

ドビュッシー/夜想曲(ラヴェル編曲)

ドビュッシー/イベリア(アンドレ・カプレ編曲)

ドビュッシー/牧神の午後の前奏曲(ドビュッシー編曲)

ドビュッシー/交響詩「海」(アンドレ・カプレ編曲)

 

 

 

ドビュッシーの管弦楽曲のピアノ版!今年10月にシプリアン・カツァリスさんによる「聖セバスティアンの殉教」のピアノ版を聴きましたが、昨年4月のカンブルラン/読響でも聴いたオケ版の素晴らしさを、またピアノ版が見事なまでに醸し出していました!

 

ドビュッシーの新しいピアノ曲に巡り会えたような喜びを感じました。今日聴く4曲もピアノ版は初めて。非常に楽しみに聴きに行きました。

 

 

1曲目は夜想曲。第1曲「雲」はピアノ版で聴くと、冬のパリのぼやーんとした雲というよりは、草原の上の瑞々しい雲が、風に吹かれて様々な形に変化していくかのよう。第2曲「祭」はリズミカルで歯切れの良いピアノ。途中の群衆が横切るシーンも雰囲気のある弱音の入りから、スペクタクルに盛り上げ聴き応え抜群!

 

第3曲「シレーヌ」はオケ版の女性合唱のヴォカリーズの旋律は波のようなピアノに。通りかかる船を誘惑するシレーヌというよりは、一人のシレーヌの悲哀の物語、という印象を持ちました。

 

 

2曲目はイベリア。全般的にスペインの踊りの音楽、リズムが心地良い演奏です。しかし、ところどころでドビュッシー特有の解決しないアンニュイな和声をピアノによって直接的に感じるので、むせ返えるような熱気むんむんのスペインというよりは、より透明感を感じる演奏でした。

 

 

 

後半は牧神の午後の前奏曲から。あのフルートの浮遊するような旋律を、ピアノがどんな風に聴かせるのでしょうか?

 

冒頭のその旋律は、そのままピアノに移したシンプルなもの。すぐに音域の広いアルペジオが続き魅了されます。全体的にアルペジオとトレモロを効果的に使ったピアノが素晴らしい!

 

オケの演奏だと、途中のハープとフルートがたゆたう中、弦が印象的な旋律を奏で高まる場面。ここは2台のピアノが抜群にはまり、素晴らしい聴きもの!時に1台でオケをも凌ぐ迫力を見せるピアノですが、2台の効果は非常に聴き応えありました!

 

素敵な演奏でしたが、一点、あの冒頭の旋律だけは、やはりフルートによる演奏が忘れられません。フルートにしか出せない味わい、フルートと切っても切れない関係ということを実感しました。オケ版のフルートもいいですが、今年5月に梶川真歩さんのフルートと工藤セシリアさんのピアノで聴いた牧神の午後の前奏曲こそが、究極の演奏のように思います。

 

(参考)2018.5.8 梶川真歩さんのフルート・リサイタル(ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12374529501.html

 

 

最後は交響詩「海」。ドビュッシーの管弦楽曲で最も好きな曲。第1楽章の冒頭の神秘的な響き、最後の太陽の日差しの盛り上がり、第2楽章の波の移ろい、第3楽章の風と波の対話のめくるめく展開、果たしてピアノでどんな風になるのか、非常に楽しみです。

 

第1楽章。冒頭は低い音域、高い音域、それぞれのオクターブのトレモロで表現します。ここはピアノの方が味が出るかな?ここはオケの方が魅力的かな?聴き比べながらの鑑賞の楽しいこと!第1楽章最後の盛り上がりは、レ~~~~ミ~ミファ~♪の旋律よりも、副旋律の波の方を響かせていたのが印象的でした。

 

第2楽章から第3楽章にかけても、ピアノ版の魅力を堪能できる演奏。とにかくドビュッシーの独特な和声をより直接的に体感できるのが嬉しい。第3楽章最後の、オケだと金管がトレモロで吹くところは、ピアノのトレモロの方が一音一音のメリハリが利くので、より魅了されました!最後は盛り上がりましたね!

 

 

 

ドビュッシーの管弦楽曲のピアノ版のリサイタル、非常に楽しめました!今年はドビュッシー没後100周年ということで、様々な企画を楽しんできましたが、記念年ならではの凝った企画を体感すると、その作曲家の新しい姿を感じたり、より一層魅了を体感できたりします。

 

「わたしたちはいま、彼の作曲家としての驚くべき考察と手腕をよりはっきりと目の当たりにする。」 プログラムの解説が説得力を持った素敵なリサイタルでした!

 

 

 

(追伸)ところで今日はダブルヘッダー。夜はN響のロシア・プロを聴きに行きました。スヴィリドフ・スクリャービン・グラズノフの3曲ですが、これがめちゃめちゃ素晴らしい演奏!指揮者もピアニストもN響も文句なしに素晴らしい!明日2日(日)に2日目があるので、ぜひぜひ聴きに行かれることをお勧めします!

 

特にスクリャービン/ピアノ協奏曲が凄すぎた!!!ピアニストのアンドレイ・コロベイニコフさんはほとんど当代最高のスクリャービン弾きと思われます。アンコールもめちゃめちゃ凄い!スクリャービン好きの方は聴き逃せない、感動の体験になること請け合いです。ぜひ聴きに行かれてみてください!(既に他で感想がアップされているようですが、そんなのは一切無視して、ぜひご自身の耳で聴かれてみてください!)