この日、朝一番でバート・イシュルからザルツブルクに来たのは、ヘルベルト・ブロムシュテットさんとウィーン・フィルによる、ザルツブルク音楽祭のマチネのコンサートを聴きに行くためでした。

 

 

SALZBURGER FESTSPIELE 2018

WIENER PHILHARMONIKER

(GROSSES FESTSPIELHAUS)

 

Wiener Philharmoniker

Herbert Blomstedt, Dirigent

 

JEAN SIBELIUS

Symphonie Nr.4 a-Moll op.63

 

ANTON BRUCKNER

Symphonie Nr.4 Es-Dur WAB 104 - “Romantische”

 

 

 

(写真)開演前のザルツブルク祝祭大劇場

 

 

 

ヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィル!おそらく、いま世界で一番聴きものの相思相愛のコンビによるコンサート。昨年に続いて、ここザルツブルクで聴くことができるのは大いなる喜びです。この10月のN響のプログラムには、「(マエストロは)80歳を迎えてからはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と『恋に落ちた』」、と書かれていましたが、正にそんな雰囲気を感じます。

 

(参考)2017.8.20 ヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルのR.シュトラウス&ブルックナー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12325050132.html

 

 

今回はシベリウスとブルックナーの交響曲。奇しくも同じ第4番です。シベリウスはブロムシュテットさんの十八番ですが、ウィーン・フィルで、しかも4番を聴くのは初めて。どんな演奏になるのか、本当に楽しみです。

 

 

前半はそのシベリウスの4番。第1楽章。冒頭のコントラバス!何と深く幽玄な響き!拍を全く感じさせず、漆黒の闇の中に浮遊して、まるで時間さえも存在しないかのよう。続くチェロのソロも素晴らしい。ひたすら孤独感を感じます。金管がコラール風の音楽を奏でますが、4番にこんなにも宗教的な印象を持ったのは初めてです。

 

ヴァイオリンが細かく刻むシーン。始まる前にヴァイオリンが練習で繰り返していた場面ですが、ゆっくり噛み締めるように進みます。まるで天使が背後で、何かの準備をしているかのよう。金管がゆっくりの長調を見せる2回目のシーンの前のティンパニを強調!痺れます。

 

ウィーン・フィルのオケの音色もあってか、宗教的な響きを強く感じた見事な第1楽章でした!

 

第2楽章。第1楽章からアタッカで入ります。ここは自然体な演奏。ウィーン・フィルの温かい音色に、いつものフィンランドのオケで聴く第2楽章よりも円やかな印象を持ちます。最後のファドド~のトゥッティをかなり強調。ドー!あの第3楽章につながる印象を強く持ちました。

 

そして第3楽章。ここはチェロを中心にひたすら幽玄な響き。シベリウスの交響曲の中で最も厳しい旋律の連続とも言える第3楽章ですが、キンキンせずにとても円やかな響き。ウィーン・フィルの素晴らしい音色を堪能します。

 

弦がより一層アクセルを踏む、途中一番盛り上がる場面は、そこまで強烈なフォルテで押してはいませんでしたが、この辺りのシベリウスのえぐい和声を、美しく奥深い響きで聴かせるウィーン・フィルに感動!何というオーケストラ!

 

第4楽章。くすんではいますが、明るい響き。クラリネットが喜びの跳躍、チャーミングな鈴の音。つましい長調の音楽ですが、厳しい第3楽章の後に聴くと心底ホッとします。

 

フィンランドのオケで聴く素朴な響きよりも、古く懐かしい響きを感じるのはウィーン・フィルならでは。まるでリアルタイムではなく、過去の喜びを思い出すかのよう。自然体かつ充実の響きの素晴らしい4番でした!

 

私はシベリウスの大ファンなので、シベリウスの交響曲はどれも大好きで大切な曲ですが、特に4番と5番と7番をこよなく愛しています。その4番をブロムシュテット/ウィーン・フィルで聴けて、こんなに嬉しいことはありません!かけがえのない思い出になりました!

 

 

 

ところで、私の席のお隣はインスブルックにお住まいのオーストリア人のご年配のご夫妻でしたが、開演前にご挨拶とともに意見交換が始まりました(笑)。海外のコンサートでは、私はなぜかよく話かけられるのです。いつもニコニコしているから?お話の内容は以下の通りです。

 

◯このチケットをよく取れたね!オーストリアでも大変なプラチナチケットだよ。

◯ウィーン・フィルの演奏は感情が込められいて、温もりがあって本当に素晴らしい。◯◯◯◯・フィルも聴いたことがある。完璧な演奏で素晴らしかったけど、機械による演奏のようで感動できなかったよ。

 

(フランツ注)オーストリアの方は、どうやらピッチリ合った演奏を敬遠する傾向にあるように思います。2009年にウィーンでマルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーブル-グルノーブルのキレキレの素晴らしいハイドンを聴きましたが、その時も1曲目の交響曲の第1楽章を聴いただけでスタスタ帰っていった猛者?もいたくらい(笑)。

 

ところで◯◯◯◯・フィルってどこ???ご想像にお任せします(笑)。

 

◯(私が日本人であることに反応して)小澤征爾さんの2002年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは素晴らしかった。

◯ヘルベルト・ブロムシュテット氏を聴くのは初めて。

 

えっ!?ブロムシュテットさんを聴くのは初めてなんですか!?確かにウィーン・フィルに登場し始めたのは比較的最近なので、そうなのかも知れませんね?私からは、以下のことを教えて上げました。

 

◯ブロムシュテットさんのシベリウスは特別なもの。ブルックナーも非常に大切にされている至高のレパートリー。今日はきっと素晴らしいコンサートになる。

◯ブロムシュテットさんは毎年のように東京に来られていて、素晴らしい指揮で聴衆を魅了している。日本には熱心なファンが多い。私もその一人。だから今日ここにいる(笑)。

 

なお、音楽の話題以外にも、インスブルックの貴重な情報をいろいろ教えていただきました。こういう現地にお住まいの方からの情報は本当にありがたい。次回インスブルックに行く時、大いに参考にしたいと思います。

 

 

 

後半はブルックナーの4番。第1楽章。冒頭の弦による世界一のトレモロ!朗々としたホルンも素晴らしい。盛り上がりでトレモロがギアを上げる瞬間の感動!早くも涙…。コラール風の金管の連続はかなり強めの演奏、痺れます。

 

2回目の第1主題に掛け合うフルートの清らかな響きに魅了されます。最後のトゥッティの迫力と調和、ウィーン・フィルを聴く至福!

 

第2楽章。冒頭のチェロの音色!たびたびやられている大好きなウィーン・フィルのチェロの音色です。ピツィカートで内省的な音楽が続く場面も、その一音一音に痺れます。2回目の第1主題に戻る前、ヴィオラが敢えて諧謔的な音色の音を出していたのが印象的。

 

後半の一番の盛り上がりの前は、ブロムシュテットさん、大きく溜めました!その後の弦楽の絡み合う響きの相乗効果が凄い!非常に魅了された第2楽章でした。

 

第3楽章。比較的ゆっくりの入り。ホルンを始め金管が活躍するこの楽章をウィーン・フィルで聴くと、見事なまでにピタピタッとはまります。昨年のオットー・ネーベル展でパウル・クレーの「ホルン」という作品がありましたが、正にこの演奏のよう。第2主題の高原の清らかな草原と花々のような響きも素晴らしい。

 

第4楽章。第3楽章とは打って変わって早めの入り。森羅万象が聴かれる音楽、それを自然な響きで紡ぐブロムシュテットさんとウィーン・フィル!

 

私は4番では第4楽章が一番好きですが、そのめくるめく音楽を素晴らしい音色で聴いて、涙涙、ずっと至福の時間でした。最後のトレモロが始まる前の雰囲気あり過ぎの静寂、そして圧倒的なコーダ!感動の4番、素晴らしかったです!

 

 

感動的な演奏に観客はみなすぐに総立ちになってブロムシュテットさんとウィーン・フィルを讃えます。多くのブラボーが飛んでいました!お隣のオーストリア人のご夫妻もかなりご満足されたようで力強い拍手。私とも笑顔でガッチリ握手です。こういう瞬間は本当に好き。

 

いわゆる一般参賀では、ブロムシュテットさんは観客の喝采に対して、既に舞台裏に下がったウィーン・フィルの、空いた席に向けて拍手!こういうシーンに立ち会えるのは本当にいいものですね。昨年に引き続き、大いなる感動と喜びの最高のコンサートでした!!!

 

 

 

 

(写真)終演後は時間も限られたので、手早く食べられるフィンガーフードのお店でランチを取りました。まずはザルツブルクのビール、ゲッサーで乾杯!ブロムシュテットさん、ウィーン・フィルのみなさん、最高の演奏を本当にありがとうございました!

 

 

 

(写真)そしてフィンガーフード2種類。下の写真は、何とヴィーナーシュニッツェルのフィンガーフードなんです!とてもおシャレで美味しかったですが、フィグルミュラーのお皿からはみ出すヴィーナーシュニッツェルを考えると、正直コスパはそんなには良くないかも…?(笑) でも、お店は非常に賑わっていました。