ペーザロから長い時間をかけて移動して、この日にどうしても観たかったオペレッタとは、パウル・アブラハム/ハワイの花、でした!オーストリアの温泉保養地バート・イシュルは、レハール・オペレッタ音楽祭の公演です!
LEHAR FESTIVAL BAD ISCHL
PAUL ABRAHAM
DIE BLUME VON HAWAII
Musikalische Leitung: Marius Burkert
Regie: Thomas Enzinger
Ausstattung: Toto
Choreografie: Ramesh Nair
Lichtgestaltung: Sabine Wiesenbauer
Choreinstudierung: Gerald Krammer
Suzanne Provence & Prinzessin Laya: Sieglinde Feldhofer
Prinz Lilo-Taro, ihr Verlobter: Clemens Kerschbaumer
Raka, eine Hawaiierin: Susanna Hirschler
Kapitän Reginald Harold Stone: René Rumpold
Jim Boy, ein amerikanischer Jazzsänger: Gaines Hall
Bessi Worthington, Nichte des Gouverneurs: Nina Weiß
John Buffy, Sekretär des Gouverneurs: Ramesh Nair
Paul Abraham & Lloyd Harrison, Gouverneur: Mark Weigel
Kanako Hilo, eine Hawaiianer: Stefan Jovanovic
Franz Lehár-Orchester
Chor des Lehár Festivals Bad Ischl
パウル・アブラハム(1892-1960)はハンガリーのオペレッタの作曲家。代表作は「ヴィクトリアと軽騎兵」そして「ハワイの花」です。オペレッタ大好物の私もこれまで知りませんでしたが、めちゃめちゃ素晴らしい音楽!特にフォックス・トロットの音楽が沢山出てきて、非常に魅了されます。
「ハワイの花」の物語ですが、ハワイを中心とした舞台に、ハワイ王国のラヤ姫と貴公子リロ・タロ、そこにアメリカ軍のキャプテン、ハロルド・ストーンとその姪のベッシー、ジャズ・シンガーのジムボーイなどが絡む物語です。
女優スーザン・プロヴァンスとして身分を隠してハワイに戻ったラヤ姫は、キャプテンに惹かれますが、キャプテンはアメリカによるハワイの支配のため、姪のベッシーをラヤ姫の許嫁のリロ・タロとくっつけよう画策します。
リロ・タロはラヤ姫を想っていますが、ラヤ姫の心がキャプテンにあることを知り、それなら仮でもいいので自分と結婚して、ハワイ王国を取り戻してほしいとラヤ姫に願います。ラヤ姫がハワイの民衆の想いと自らの想いの葛藤に揺れる物語です。
開演前。この音楽祭は地元の方が大勢、この地方の民族衣装で来られます。これが雰囲気があって、非常にいいんです!小さなお子さんまで民族衣装で来ていて、お母さんに後ろから紐を締めてもらったりして微笑ましい光景。別のお父さんは少しお酒が進んじゃったのか、階段でよろめいて着席したり(笑)、とにかくオペレッタを楽しみに来ている雰囲気に満ち満ちて、いい感じ!
開演前から舞台にはカモメと波の音。第3幕を先取りした、モンテカルロのハワイアンのバーの舞台。第1幕。冒頭からとろける音楽に大いに魅了されます!最初にパウル・アブラハム自身の役のMark Weigelさんが出てきて、狂言回しのように周りの人々に役をつけて行きます。ベッシーの軽快な「マイ・リトル・ボーイ」の歌。ミュージカル畑のNina Weißさんのキレキレのダンスにのっけから痺れます!
Clemens Kerschbaumerさんのリロ・タロが登場、「海の楽園よ」を歌います。貴公子リロ・タロはハワイの女性陣に大人気。自身のPR映像が流れますが、ハワイらしいムキムキの裸の水着姿の映像に女性陣が黄色い声で「キャー!」と歓声を上げます。さらには、何と!相撲の雲竜型の土俵入りの写真も!(笑) しかも明らかに顔だけKerschbaumerさんのコラの貼り付け!(笑) 何にしても日本人にとっては嬉しい。そして、ハワイアンの歌「ハワイの花」も雰囲気があって、とてもいい感じ。
続いてGaines Hallさんのジムボーイの歌。タップダンスを踊り、ジム・パ!ジム・パ!の歌を軽快に歌って楽しい!続くフーフーフーの歌もいい感じ。Susanna Hirschlerさんのラカのコミカルな演技に観客が大いに受けていました!
惹かれ合うラヤとキャプテンのしっとりしたドゥー・ドゥー・ドゥーの2重唱。ここぞとばかりにワルツが雰囲気を盛り上げます。このオペレッタはフォックス・トロットの軽快なリズムの曲が多いですが、ワルツって、ここぞとばかりにムードを盛り上げて本当に凄い!飲み物を供するお盆を持ったバレエもいい感じ。
ハワイのみなが登場するシーン。東洋風の音楽が大迫力。リロ・タロの「海の楽園よ」「ハワイの花」の歌とキャプテンのワルツの歌が交錯、とても泣かせる場面。背景では音楽に合わせて、みな揺れていました。とうとう身元が分ってしまったラヤ姫。ここから新たな展開を見せます。
第2幕。ジムボーイのハーバイの歌、ラカといい感じで踊って歌います。ラヤとリロ・タロが序曲の神秘的なメロディを伴った悲しいやりとり。そしてキャプテンの勇ましい行進曲の歌。アメリカの国旗がたなびきます。
ベッシーとジョンのドゥドゥ~ドゥドゥ~のやりとりの歌は、小さな傘を小道具に使って楽しく踊ります。Nina Weißさん、めっちゃ実力派!キラリと光っていました。最後はジムボーイのメロディで、みなでタップダンス。ベッシーはタップダンスも上手い!大人数による大迫力のタップダンスで前半を終えました!
後半。ラヤの心揺れる歌が素敵。ジムボーイとベッシーの歌とダンスが再び舞台を盛り上げます。このオペレッタはサイドストーリーのこの2人が大活躍!ハワイの女王になることを諦めるようにキャプテンから誓約を強いられるラヤ。署名しちゃダメだと引き留めるハワイの民衆。
しかし愛するキャプテンにつれなくされることに耐えられなくなったラヤは、とうとう署名してしまいます。悲しい女心…。Sieglinde Feldhoferさんの迫真の演技、そして歌。そして、ハワイの将来に絶望したリロ・タロが、「ハワイの花」を寂しげに歌いながらその場を去って行きます。最後はラヤの「リロ・タロ!」の叫びで終わり。ラヤの心、確実に動いているようです!
続いて第3幕。舞台は一番最初のシーン、モンテカルロのハワイアンのバーに戻ります。ヤケになったのか、酔っ払ったラヤとラカが2人して笑いながら可笑しな歌。ここまで指揮をするなど、黙役に徹していただMark Weigelさん扮するパウル・アブラハム自身が境遇を語り始めました!
不遇な時期、大ヒットの時期、そして後年、作曲家として忘れ去られた哀しさ、などなど。様々な想いを歌うアブラハム、とても感慨深いシーン。そして、最後はアブラハムの音楽の力によって、ラヤとリロ・タロ、ベッシーとジョン、ジムボーイとラカの3組のカップルができてメデタシメデタシ、となりました!(ラヤはキャプテンとも腕を組んでいたので、もしかして、そういうことかも?笑)
と思いきや、最後にアブラハムと医師のシーンに。何と、全てはアブラハムの幻想だったのです!アブラハムが晩年、精神疾患だった史実を再現した演出。スクリーンにもアブラハムの過去の写真がいろいろ映し出されます。その上で、最後はみんなで大団円の歌で終わりました。
何この、めちゃめちゃ楽しくかつ涙を誘う公演!!!パウル・アブラハムの音楽の素晴らしさ!!!
まだこんなに素晴らしいオペレッタがあったなんて!そして、この素晴らしい作品が、忘れられていて久しぶりの公演だなんて、オペレッタの世界って、どんだけ凄いんだ!と思い知らされた、感動の公演でした!
(写真)バート・イシュル・オペレッタ音楽祭のプログラム。この音楽祭はザルツブルク音楽祭やバイロイト音楽祭に比べれば知名度は高くありませんが、大好きな音楽祭。今回で4回目の参加です。
(参考)私が観た「ハワイの花」公演のダイジェスト。途中で30秒くらい解説が入りますが、全体的に楽しい雰囲気は見て取れると思います。最後の赤い傘を持っているのがキレキレのダンスが光っていたNina Weißさんのベッシーです。
https://www.youtube.com/watch?v=emKzJCITvfY (1分)
※ザルツカンマーグートTVの公式動画より
(追伸)なお、バート・イシュルはオペレッタが終わった後に食べに行くところが限られるので、観劇の前に食事をするのが基本となります。トラウン川を眺めながらの食事は最高!対岸のお店ではバンドが音楽をやっていて、たまにヨーデルも披露されたり、雰囲気たっぷりでした!
(写真)赤かぶのカルパッチョ
(写真)ヨーグルトのムース ラズベリーソース
(写真)バート・イシュルは綺麗でロマンティックで風情のあるまち。皇妃エリーザベトが愛したまちでもあります。