その衝撃的なまでに熱くたぎる指揮が頼もしい、ジョヴァンニ・アントニーニさんが読響に初めて客演されるということで、楽しみに聴きに行きました。ヴィクトリア・ムローヴァさんのヴァイオリンも注目です!

 

 

読売日本交響楽団第616回名曲コンサート

(サントリーホール)

 

指揮:ジョヴァンニ・アントニーニ

ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ

 

ハイドン/歌劇「無人島」序曲

ベートーベン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調

ベートーベン/交響曲第2番ニ長調

 

 

 

ジョヴァンニ・アントニーニさんは1990年代後半にイル・ジャルディーノ・アルモニコと来日された時に、ヴィヴァルディ/四季のアグレッシブな演奏を聴いて、腰を抜かした経験があります。春夏秋冬、どれもエキサイティングな演奏でビックリしましたが、「冬」なんて、外は雪降る中、暖炉の温かさが心地よい音楽、という感じが、もう暖炉がバチバチ燃えて、ほとんど家が火事になってしまいそうな(笑)、それはもう凄い演奏でした。

 

また、2009年にアイゼンシュタットで、アグレッシブなハイドンを聴いたのも思い出深い出来事。交響曲第82番と第86番でしたが、見事なまでにスリリングなハイドンに非常に魅了されました。今日のハイドンとベートーベンも楽しみで仕方ありません!

 

 

 

1曲目はそのハイドン。もう1音目からニュアンスの込められた雰囲気のある演奏!フレーズの歌い方や強調が見事。さらに立体的な演奏でとても魅了されます。またハイドンが何といい曲なのか!読響も初めてのアントニーニさんの指揮にピタリと着けて見事。序曲だけですが、そのまま全曲聴いてみたくなりました。素晴らしいハイドン!

 

無人島は一度オペラで観たことがあります。2003年の新国立劇場の小劇場公演。シンプルな舞台でしたが、松尾香世子さんのシルヴィアが素晴らしく、とても観応えのある公演でした。このようになかなか上演されない珠玉のオペラを小劇場でぜひまたやってほしいです。

 

 

2曲目はベートーベン/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリンはヴィクトリア・ムローヴァさん。CDは持っていますが、実演はおそらく初めて。とても楽しみです。

 

第1楽章。冒頭は比較的穏当なテンポですが、いつの間にか速くなって、やはりメリハリや強調を利かせた小気味の良い演奏。ムローヴァさんはため息が出るほど美音。素敵なヴァイオリンの音色に魅了されます。カデンツァは1960年生まれのオッターヴィオ・ダントーネさんによるものですが、ベートーベンの音楽に馴染んでとてもいいですね。

 

第2楽章。今日は第3楽章への間奏という感じでなく、とても緊張感をはらんだ演奏。深淵を見せる大きな振幅。オケとヴァイオリンのバランスがいつもと違って、非常に聴き応えがありました。

 

第3楽章。ここに来て、ムローヴァさん、美音をかなぐり捨てて、グシャッとしたような音など、いろいろな音を聴かせます。ヴァイオリニストの表現力って凄い!追い込む際など、信じられないような凄みのある音も聴こえてきて非常にスリリング。カデンツァのみならず、途中でも通常の演奏では聴いたことない旋律も聴かれました。ダントーネさんによるカデンツァもまた素晴らしい。生命力に溢れた、素晴らしいベートーベンでした!

 

 

アンコールはバッハのサラバンド。ヴァイオリン協奏曲のアンコールは、前後の曲の流れに関係なくバッハになることが多く、もちろん協奏曲を弾くこと自体が大変なこととは言え、もう一工夫ほしいと思うこともありますが、今日はアントニーニさん指揮の古楽の香りのするハイドン、ベートーベンと来て、ピタッとはまったバッハ!ムローヴァさんの素晴らしいバッハでした。

 

 

 

後半はベートーベンの2番。今年はお正月に、ウィーンでフィリップ・ジョルダン/ウィーン交響楽団のキレキレの素晴らしい2番を聴いて、一年をスタートさせました。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.1.1 フィリップ・ジョルダン/ウィーン交響楽団のベートーベン2番&9番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12349644549.html

 

 

第1楽章。冒頭からやはり緊張感に満ちた演奏。メリハリ、リズムの切れ、強調、本当に見事な演奏です。そのスリリングな展開の波の乗りながら、「ああ、いま世界最高レベルの、活きたベートーベンを聴いているんだ!」と、喜びが沸々と湧き上がり、いつの間にか涙が流れていました…。アントニーニさんはリズミカルなところだけでなく、繊細な弱音を持続させてから第1主題に戻る場面なども、本当に素晴らしい。

 

第2楽章。ここはゆったり穏やかにくるのかな?と思いましたが、途中にガツンと強奏が入って、なかなかホッとさせてくれません(笑)。弦のフォルテに続いて木管が牧歌的に上がりながら歌った後、静かに主題に戻るところの処理など本当に見事。隅々まで血の通った演奏です。ハイリゲンシュタットの小川を男女が賑やかにおしゃべりをしながら闊歩していく光景が目に浮かびました。

 

第3楽章。交響曲史上初めてスケルツォと表記された楽章です。ここもそれを意識してか、ビックリさせるような強弱のメリハリが素晴らしい。繰り返しが続くので、少しは変化を付けるのかな?と思いましたが、構わず同じ強弱で突き進むところに、むしろ萌えました(笑)。

 

第4楽章。軽快な冒頭からめくるめく展開となる楽章。スピーディな展開の中で、メリハリを利かせたスリリングな演奏です。何と活き活きとしたベートーベン!

 

この楽章は途中、木管がポパパポ、ポパパポと神秘的な音で呼応するシーンが好きで、ゆっくりやっても味が出るのですが、アントニーニさんはあっと言う間に通り過ぎて(笑)、ほとんど鳥たちが「いま何か通った?」と呆気に取られたような木管!

 

最後の方もフォルテの持続で大いに盛り上げて、小ぶりな編成のオーケストラとはとても思えない、迫力の盛り上がりを見せてから終わりました。

 

 

何このスリリングで活き活きとしたベートーベン!!!2番最高!!!

 

 

そうなのです。ベートーベンの交響曲は他にも名曲が目白押しで、なかなか2番が最後に来ることはありませんが、今日のジョヴァンニ・アントニーニさんと読響の2番を聴けば、「2番、ラストで全然行ける!」と、きっと思われることでしょう。お正月に聴いたフィリップ・ジョルダン/ウィーン交響楽団と甲乙付けがたい、最高に素晴らしい2番!非常にエキサイティングなコンサートでした!

 

 

いや~、ということで、またまた素晴らしいコンサートを聴くことができました!9月下旬のサー・サイモン・ラトル/ロンドン交響楽団の3つのコンサートは本当に見事でしたが、その後、ユベール・スダーン/東響、大野和士/都響、ヘルベルト・ブロムシュテット/N響、そして今日のジョヴァンニ・アントニーニ/読響と、いずれも素晴らしいコンサート。

 

こんなにハイレベルなオーケストラの演奏を短期間に立て続けに聴けるまち、東京以外、世界中どこにもありません。本当にありがたい限り。オーケストラのみなさま、指揮者のみなさま、ソリストのみなさま、心よりお礼申し上げます。

 

 

 

さて、先日、都響の来シーズンの話をしましたが、読響も来年2019/2020シーズンのラインナップを既に発表しています。曲目を見た感想は「おお~、攻めてるな~!」でした。

 

事前の予想では、来シーズンは常任指揮者がシルヴァン・カンブルランさんからセバスティアン・ヴァイグレさんに変わるので、ドイツ・オーストリア系の比較的オーソドックスな曲目が多いのかな?と思っていました。

 

ところが、もちろんセバスティアン・ヴァイグレさんの重厚な曲目のコンサートもそれなりにありますが、カサド、グリエール、パウエル、プフィッツナー、リゲティ、アダムズの珍しい協奏曲があったり、スークの傑作アスラエル交響曲があったり、先月のモーツァルト/レクイエムが名演だった鈴木優人さんが何とストラヴィンスキー/ペトルーシュカを振ったり、非常に攻めたラインナップ、という印象です。

 

中でもやはり、モートン・フェルドマン/On Time and the Instrumental Factorや、グバイドゥーリナ/ペスト流行時の酒宴などを演奏する、下野竜也さんのプログラムが特に目立ちますが、下野さんご本人が読響の「ゲテモノ担当」(笑)を公言されているので、これは通常運転なのかも知れません(笑)。

 

今日のジョヴァンニ・アントニーニさんの速いテンポで振幅の激しい指揮にもピタピタッと着けたように、読響は目下、絶好調。来シーズンも引き続き、大いに期待できます。私も都響に続いて定期会員になることを検討中です。みなさま、素晴らしいコンサートを楽しんで幸せになりましょう!