昨日の秋山和慶さんとサイトウ・キネン・オーケストラのフランス・プロには大いに魅了されました。私の松本音楽祭の2日目、今日はオペラと室内楽のダブルヘッダーです。

 

 

セイジ・オザワ松本フェスティバル

小澤征爾音楽塾オーケストラによるOMFオペラ

(まつもと市民芸術館 主ホール)

 

プッチーニ/ジャンニ・スキッキ

 

指揮:デリック・イノウエ

演出:デイヴィッド・ニース

 

ジャンニ・スキッキ:ロベルト・ディ・カンディア

ラウレッタ:アナ・クリスティ

ツィータ:牧野 真由美

リヌッチオ:フランチェスコ・デムーロゲラルド:髙畠 伸吾

ネッラ:清水 多恵子

ベット:河野 鉄平

シモーネ:ドナート・ディ・ステファノ

マルコ:駒田 敏章

チェスカ:金澤 桃子

スピネロッチオ:佐原 壮也

アマンティオ・ディ・ニコラーオ:寺田 功治

ピネッリーノ:松澤 佑海

グッチオ:松田 亜蘭

 

演奏:小澤征爾音楽塾オーケストラ

 

 

 

オペラが始まる前に、楽器の紹介コーナーがありました。楽器が紹介されると、その楽器のグループがさまざまな曲を演奏しながら登場します。

 

みな工夫を凝らした曲で楽しかったですが、特に笑点の曲をユーモラスに吹きながら出てきたファゴット(GJ!音をもっと外しても良かった、笑)と、あのダースベイダーのテーマ曲を征圧的でなく、オビ・ワン・ケノービーに瞬殺されそうなくらい悲壮感漂う雰囲気で吹いたテューバ(しかもベイダーのマスク付き)が可笑しかったです。チェレスタとハープは楽器を移動させながら弾いて難しそう。さらにハープは天使のコスプレまで!よく似合っていました。

 

 

 

さて、オペラが始まりました。最初のブオーゾが亡くなる演技がど派手で大笑い(笑)。ロッシーニに比べるとプッチーニの音楽は、ブッファでも乾いてなくて、しっとり情緒的な印象です。

 

ラウレッタのアリアはアナ・クリスティさん、たっぷり歌っていい感じ。歌詞にはポンテヴェッキオ。いま夏のイタリア旅行の記事を書き進めていますが、実は今回の旅で、少しだけですがフィレンツェに滞在しました。つい先日に実物を見てきたので、実感を持ってイメージできます。

 

(写真)ポンテヴェッキオとアルノ川(フィレンツェ)

 

偽のブオーゾが回復したと言うと、医者がボローニャ大学の医学のおかげと言うシーン。確かにフィレンツェは商業と芸術のまち、ボローニャはヨーロッパ最古の総合大学のあるまち、という印象がしますね。ジャンニ・スキッキが大見得を切る場面辺りは、トスカの音楽に似ていると思いました。

 

ブオーゾの身代わりとなり偽の相続書を作るジャンニ・スキッキに、「◯◯の土地は私にください!」と群がる相続人のみなさん(笑)。私、大した貯えがある訳ではありませんが、こりゃ、死ぬ時には何も残さないで使い切って死ぬに限るな~、と得心。今回松本に来て、またお金を使ってしまった自分をそれとなく正当化(笑)。

 

さらばフィレンツェの歌、そして騒動が終わった後に舞台でフィレンツェの背景のセットがぐっと前に来るシーンは、ドゥオーモにジョットの鐘楼と、やはり、つい先日見てきたフィレンツェのまちが脳裏に浮かんで感動的。

 

 

 

(写真)ドゥオーモとジョットの鐘楼(フィレンツェ)。ドゥオーモはファザードだけですが、奥にあるクーポラも非常に迫力があります。まちなかにドーンとあり、隣の建物との距離がないので、全体を写真に撮ることは不可能なんです。

 

その前の遺言状を書かせるシーンで、お葬式は(質素に)金貨2枚の範囲で、とブオーゾに変装したジャンニ・スキッキが話すと、相続人たちが「立派な人だ」など口々に話すのが可笑しいのなんの(笑)。

 

さらに、ジャンニ・スキッキに騙されて家を取られて、相続人たちがそれならせめて家財道具だけでも、とみんな持って行ってしまい、ジャンニ・スキッキが「泥棒たちめ!」と言うシーン。「あなたが一番の泥棒でしょ!」と会場から無言の突っ込みが入る雰囲気をひしひしと感じました(笑)。

 

なくなってしまった家財道具ですが、ダンテの像だけは残って、最後は地獄に落ちないようにダンテに祈る締めが素敵。非常に楽しめた公演でした!

 

 

ブッファは屈託なく楽しめていいですね。歌手のみなさんはみないい感じ、アンサンブルが揃って良かったです。中でも、ロベルト・ディ・カンディアさんはブッファの第一人者でさすがの至芸。12月の新国立劇場のファルスタッフも楽しみです。

 

若手のオケのみなさんも伸び伸びとした演奏でとても良かったです!きっと一番緊張する楽器紹介を無事に乗り切ったからではないかと?(笑)

 

 

 

オペラの公演に続いて、会場を松本駅からJR大糸線で2駅の島内駅近くのコンサートホールに移して、室内楽のコンサートを聴きに行きました。

 

 

セイジ・オザワ松本フェスティバル

ふれあいコンサートⅢ

(ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール))

 

モーツァルト/5つのディヴェルティメント第2番変ロ長調

クラリネット:山本 正治、濱崎 由紀/ファゴット:吉田 

 

ドビュッシー/神聖な舞曲と世俗的な舞曲

ハープ:篠﨑 和子/ヴァイオリン:小森谷 巧、白井 圭/ヴィオラ:大島 亮/チェロ:辻本 

 

レスピーギ/ドリア旋法による弦楽四重奏曲

ヴァイオリン:白井 圭、小森谷 巧/ヴィオラ:大島 亮/チェロ:辻本 

 

ブラームス/ピアノ三重奏曲第1番ロ長調

フルート:ジャック・ズーン/チェロ:イズー・シュア/ピアノ:児玉 

 

 

 

普段、室内楽を聴かないので、私にはこういうコンサートはとても貴重な機会です。なお、4曲とも聴いたことがない(と思う)曲。どんな感じになるのでしょうか?

 

 

1曲目はモーツァルトのディヴェルティメント。やはりモーツァルトは屈託なく楽しめていいですね!特に5曲目のファゴットからのリレーが楽しい。プププー(笑)。濱崎由紀さんは昨年10月のコダーイ/ガラーンタ舞曲の素晴らしいソロに魅了されましたが、今日も素敵な演奏でした。

 

 

2曲目はドビュッシー。前半の神聖な舞曲は、牧神の午後の前奏曲、月の光、雪が踊っている、などドビュッシーのいろいろな曲がこだま。後半の世俗的な舞曲は、ペレアスとメリザンドの第2幕最後の洞窟の場面の音楽を連想しました。

 

7月に金沢で最高のオペラを観ましたが、もう観たくなっているほど好きな繊細で好きな音楽です。ハープは近くで見ると前後に結構揺れるんですね。それで、よくピタッと合うものだ、と感心していました。

 

 

3曲目はレスピーギの弦楽四重奏曲。激しくて何と言うかカッコイイ曲。この4人は普段から一緒にカルテットを組んでいるんでしょうか?ぴったりと息が合っていました。熱演に観客も盛り上がっていました。

 

 

後半はブラームスのピアノ三重奏曲。私、室内楽は、曲と曲名がさっぱり合いませんが(笑)、この曲は出だしを聴いて、「これは知ってる!しかもかなり好き!」と興奮。その出だしの音楽。久しぶりに聴きましたが、こんなにも凛とした旋律はなかなかないのでは?と思うくらいの素晴らしさ。ブラームス、天才と言うしかないですね!特に最初のピアノに続いてチェロが出てくるところ、ピアノがダダッダ、ダダッダと合いの手を打つところに痺れます。

 

(参考)ブラームス/ピアノ三重奏曲第1番ロ長調第1楽章

https://www.youtube.com/watch?v=f4BTVfTIuuE (11分)

※Emerald Piano Trioの公式動画より。良くご存じの方が多いと思いますが、念のため。この曲の出だしの凜とした雰囲気は本当に好き。この動画も雰囲気があって素敵な演奏です。

 

聴き進めていくと、第1楽章はブラームス/ピアノ協奏曲の1番と2番があちこちこだましますね。児玉桃さんはフランスもののスペシャリストのイメージがありましたが、ブラームスも素敵な演奏。第2楽章の第2主題、第3楽章の冒頭、第4楽章の第2主題などにも非常に魅了されました!

 

 

松本フェスティバルの室内楽のコンサート、非常に楽しめました!私は普段室内楽を聴きに行きませんが、あまり詳しく聴き込まないで、今回のように音楽祭の機会に楽しんだり、何かの企画で楽しんだり、そんな感じの楽しみ方の方が合っているかな?と思いました。作曲家自体はオケの曲やオペラで親しんでいるので、十分楽しめそうです。

 

最後に出演者のみなさま、素敵な演奏を本当にありがとうございました!