東急シアターオーブで始まったアルゼンチンを舞台にした物語、エビータを観に行きました。

 

 

エビータ

(東急シアターオーブ)

 

作詞:ティム・ライス

作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー

演出:ハロルド・プリンス

 

エヴァ・ペロン:エマ・キングストン
チェ:ラミン・カリムルー
ホワン・ペロン:ロバート・フィンレイソン
マガルディ:アントン・レイティン
ミストレス:イザベラ・ジェーン
エヴァ・ペロン/アンサンブル:LJ・ニールソン、ダニエル・ビトン

 

 

私はGWの旅行で、サウンド・オブ・ミュージックに超どハマりしたように、ミュージカルもオペラやオペレッタと同様に大好きです。しかし、東京でミュージカルまで観に行くと生活が破綻してしまうので、海外限定にしています。(なので、この後に公演のある、コーラスラインやレント(現代版ラ・ボエーム)にも非常に惹かれますが、我慢我慢) しかし、このエビータはなかなか観る機会のないミュージカルということで、例外的にチケットをとりました。

 

 

 

客席に着くと、貧しい民衆を踏む台にして君臨する軍人の絵の幕がかかっていました。第1幕冒頭は映画のシーン。映画が途中で止まり、アルゼンチン大統領夫人のエビータが亡くなったと訃報が入り、泣き叫ぶ民衆たち。

 

そして多くの民衆が葬儀に参加しますが、そこにエビータを批判する役どころのチェが、この女が何をしたんだ、何もしていないじゃないか、と言いがかりをつけます。それになびかず、民衆により真摯に歌われるサルヴァ・レジーナに感動!

 

 

時を遡ってエビータの娘時代。閉塞感のある地方からブエノスアイレスに出て、大きく羽ばたきたいの!とリズミカルな歌「ブエノスアイレス」を歌います。クラシック音楽だと、ピアソラを思わせる音楽。エマ・キングストンさんによるエビータの歌もタンゴの踊りも素晴らしい!

 

タンゴ歌手マガルディと一緒にブエノスアイレスに出たエビータは、男を変えて行きながらステップアップ。情事の後は寂しい、の歌を歌い、捨てられた7人の男性が悲哀を見せます。いえいえ、お別れはしてしまったものの、みなさんは少なくとも、エビータに相手にされるだけの魅力的な男性だということ。十分立派だと思います。

 

その後は軍人たちの滑稽な歌。ユラユラ揺れるイスを使った、軍人の中での出世を思わせるイス取りゲームの演出がユーモラスで楽しい。勝ち残った軍人ペロンとの運命の出逢い。グイグイと積極的に迫るエビータが頼もしい(笑)。ペロンの寝室にいた若い愛人もテキパキと説得して追い出します。

 

ここでその追い出された若い愛人(ミストレス)が、ここまでで一番のピュアな感動の歌!もう涙涙です…。頭角を表すエビータを煙たがる、上流階級の人たちと軍人たちのシニカルな歌。青の軍服を着た3人×3列の軍人たちのユーモラスな踊りと歌がとてもいい。

 

ラストはアルゼンチンよ立ち上がれ!、の迫力の歌!まるで革命のシーンのよう。本心は引退して落ち着きたい、というペロンをエビータが鼓舞します。エビータの歌は高音の持続が素晴らしい!ラストは非常に盛り上がって終わりました!

 

 

 

第2幕。遂にアルゼンチン大統領になったペロン。民衆に就任の演説をします。ペロン、ペロンのコールが、いつの間にかエビータ、エビータのコールに。ここでエビータが感動の歌”Don't cry for me Argentina”!前奏の雰囲気でもう涙…、民衆もアルゼンチンの国旗を力一杯振って、極めて感動的です。アルゼンチーナ!アルゼンチーナ!

 

(写真)ペロン大統領就任のシーンで歌うエビータ。購入したプログラムより。

 

(参考)エビータ/Don't cry for me Argentina

https://www.youtube.com/watch?v=KD_1Z8iUDho (5分)

※何と歌手のマドンナさんの公式動画で見つけました!ペロン大統領就任時のイメージ動画です。3:44からのハミングがまた泣ける…。この歌は全英チャートでNo.1にもなったことのある歌だそうです。

 

 

しかしその後、エビータはどんどん民衆にサービス・トーク、それに民衆も熱狂。ポピュリズムとはこういうものか、と思わせます。続いて大統領夫妻のヨーロッパ遠征。スペインでは熱狂的に迎えられましたが、イギリスではバッキンガム宮殿による待遇はなく上手く行かず…。

 

その後、エビータは慈善活動にまい進します。ここでもケチを付け続けるチェ…。助けられた少女たちのサンタ・エビータの純朴な歌が心に沁みます。そしていよいよエビータとチェとの直接対決!勝利を納めたエビータですが、ここで病に蝕まれていることが分かってしまいます…。

 

愛してほしいと歌うエビータの優しい歌に感動!ペロンとの寝室でのやりとりのシーンでは、心配はするものの、もはや心からの愛情を感じられないペロンの言葉が悲しい…。国民のためにアルゼンチンそのものになるの、と気力を振り絞って歌うエビータ!しかし、とうとう病に倒れてしまいます…。

 

エビータが国民にラジオ放送で副大統領を断念する歌は、大統領就任の時と同じ歌のメロディを今度は弱々しく歌いますが、真実味を帯びた魂の歌に感動!そして、エビータは亡くなり、霊廟の解説を最後に幕を閉じました。

 

 

 

偉大なる女性の感動の物語!歌も踊りも素晴らしい、卓越した公演でした!とにかく、前向きに生きるエビータの姿勢に感動。見せかけだけ、との横やりもありましたが、貧しい人たちに尽くして、こうしてミュージカルにまでなったエビータの人生。私は素直に感動しました!

 

一方で、最初からずっと嫌悪感を抱いていたのが、チェという登場人物。プログラムでは狂言回し役、エビータの別の側面を提示、という解説もありましたが、要するに、エビータのやることなすことにケチを付けるだけの存在、非常にウンザリします。

 

私はこういうチェのような、自分では何もせず、また、何もできないのに、批判ばっかりしてる人が大嫌い。そんなにウダウダ文句言うなら、自分が代わりにやってみろ!自分でやってみてから言え!と思います。

 

音楽はさすがはアンドリュー・ロイド=ウェバーさん。泣かせるところ、コミカルなところ、緩急が見事。ハロルド・プリンスさんの演出は、初演版をさらにブラッシュアップした決定版とも言うべきもの。物語が流れるように進んで、随所で魅了されました。

 

役者も意志の強さをよく出していたアルゼンチン人の母を持つエヴァ役のエマ・キングストンさん、憎たらしいチェ、実力派のラミン・カリムルーさんを始め万全。終演後は客席も大いに盛り上がっていました!非常にお勧めのミュージカルです!

 

 

 

 

(写真)エビータを観劇、ということで、終演後はアルゼンチン料理を食べに行きました。1皿目はアボガドのサラダ。ワインはアルゼンチンの白。

 

 

(写真)続いて、アルゼンチンのお肉のパイ、エンパナーダ。ビーフとチキンを頼みましたが美味い!ワインはアルゼンチンの赤。

 

 

(写真)メインはアルゼンチンらしくお肉のグリル料理、アサード。はらみをいただきましたが、これが美味しいのなんの!赤ワインと抜群に合いました。アルゼンチン万歳!