ポートワインの第一人者、ラモス・ピントの試飲会に行ってきました。

 

 

ラモス・ピント スペシャル・テイスティング

(エノテカ表参道店)

 

①デュアス・キンタス・ブランコ2015

②デュアス・キンタス・ティント2014

③ラモス・ピント・ポート・ホワイトNV

④ラモス・ピント・ポート・ルビーNV

⑤ラモス・ピント・ポート・トウニーNV

⑥キンタ・ド・ボム・レティロ・ポート・20イヤーズ

 

 

ポートワイン、と聞いて、みなさまはどんな印象を持たれるでしょうか?

 

ポルトガルで造られるワイン?

→正解!さらにポルトガル北部のドウロ地域で造られるワインです。

 

食後に飲む甘いワイン?

→正解!ただし、食中酒あるいは食前酒としても飲まれます。

 

サントリーの「赤玉ポートワイン」?

→世代が分かってしまうかも知れませんね?(笑)

※なお、日本初の女性のヌードポスターは、この「赤玉ポートワイン」の大正11年のポスター。ドイツの世界ポスター展で1位を獲得したそうです。ご覧になられたことのある方も多いかも?

 

 

私は食事中に飲む通常のワイン(スティル・ワイン)も大好きですが、主に食後に飲まれるフォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)にも目がありません。世界4大酒精強化ワインは、シェリー、ポートワイン、マデイラワイン、マルサラワイン。以前に、大ファンのイタリアのソプラノ、デジレ・ランカトーレさんとパレルモ・マッシモ劇場の公演後に、シチリアに敬意を表してマルサラワインを楽しんだ記事を書いたこともありました。

 

(参考)2017.6.18 シチリア料理&シチリアワイン

 

今日試飲するのは、4つのうちの1つ、ポートワイン。ポルトガルのポルトを含むドウロ地域で生産される、非常に歴史あるワインです。ぶどうの発酵中にブランデーを添加して発酵を止め、ぶどうの甘味を残したワイン。アルコール度数は20度くらいとやや高めです。

 

生産者はポートワインの第一人者、ラモス・ピントです。この試飲会に併せて、CEOのホルヘ・ロサスさんが来日されました。ラモス・ピントはホルヘさんの曾祖父さんが1880年に設立。今でも家族経営を守られていて、特別なワインは特別なぶどう造りから、という考えから、多くを自社畑で生産されているそうです。

 

ポートワインが造られているドウロ地域はフランスやイタリアよりも古い、世界で最も古いアペラシオン。急な斜面ばかりで、まるでグランド・キャニオンでワイン造りをされているかのよう、だそうです。その美しい景観やワイン造りの文化的価値から、世界遺産にも登録されています。ホルヘさん、日本で最初に飲まれたワインは、ドウロのワインではないか?とのご見解でした。

 

(また、「カステラ」や「天ぷら」はポルトガル語から来ていることは有名ですが、何と、「ありがとう」が「オブリガート」から来ている説もある、とおっしゃっていました!確かに似ている!可能性は低いかも知れませんが、ポルトガルと日本の絆を考えると、ロマンを感じます。とにかく、ホルヘさん、日本が好きで好きでたまらない、と言った感じで、熱弁を奮われていました!笑)

 

 

さて、試飲を始めましょう!①と②はポートワインでなく、普通に醸造されて造られたスティルワイン。①は白ワイン。透明に近い色、野生味のある香り(イタリアの白の雰囲気)、味はかなりドライで焼け付くようでした。②は赤ワイン。赤紫色、スパイシーでなめし皮の香り、やや酸味が多く、プレーンなタンニンを感じます。

 

 

③からいよいよポートワインになります。③はポートワインの白。え!?ポートワインに白があるの?はい、そうなんです。しかもこれが抜群に美味い!色は黄色に近い黄金色、香りはブルゴーニュなどのフランスワインに比べるとエキゾチックな香り、味は甘い!円やかで優しい味。ホルヘさんはミディアム・ドライとおっしゃっていましたが、十分、食後酒でもいけそうな気がします。

 

④はポートワインの赤でルビー。色は赤紫、フレッシュで果実の香り、味は甘くて美味しい!アルコールの厚みを感じます。⑤もポートワインの赤でトウニー。色は④より薄い赤で、より熟成している印象。香りは④より円やかでとてもなじみます。味は甘味が円やかで、上品な雰囲気。ごく簡単に例えると、④がボルドーの甘口赤に対して、⑤はブルゴーニュのより熟成した甘口赤、というイメージです。トウニーの方が造られている場所、より長い熟成期間など、より細かい決まりがあるそうです。

 

 

そしていよいよ⑥は20年もののポートワイン!色は美しく完璧に調和した、赤茶色。美しい夕暮れをイメージします。香りはいつまでも香っていたい、非常にかぐわしい香り。熟成したフルーツやカラメルの香りがしますが、いろいろな要素が詰まっていて、一言ではとても言えない複雑な香りです。味は完璧なる調和!甘さといい、円やかさといい、質感といい、本当に素晴らしい!ウィーンのムジークフェライン(グロッサーザール)でウィーン・フィルを聴く時の、ピタッとはまる感覚を思わせます。

 

⑥のぶどうが栽培されるキンタ・ド・ボム・レティロという畑は、1789年に植樹。何と、フランス革命と同じ年からぶどうの栽培が始まったことになりますね!そして、20年の熟成ですが、それは平均値であり、様々なヴィンテージのワインが混ぜられていて、何と、ほんの少しですが、19世紀のワインも入っている、とのことでした。19世紀のワイン!!!

 

若いワインはフレッシュさやフルーツ感を、古いワインはアロマや複雑性を出すために、ほどよくミックスさせてバランスを取っている、というお話でした。若さには若さの、古いものには古いものの、それぞれ良さがある。それを上手く活かせば、素晴らしいものができる。ポートワインだけでなく、他のことにも当てはまりそうな、とても心洗われたホルヘさんの解説でした。

 

 

今回のおもてなし攻撃(ゲスト生産者のワイン購入による来日への敬意表明活動)は、何の迷いもありませんでした。完璧なポートワインの姿を見せてくれた、キンタ・ド・ボム・レティロ・ポート・20イヤーズにしました!ホルヘさんに聞いたら、ヴィンテージ・ポートは50年でも100年でも持つけれど、トウニーの年代物は出てから10年以内に飲んだ方がいい、とのこと。何年か後に、何かのお祝いの食事の席を6人くらいで囲んだ際に開けようと思います。食後酒として、きっと最高の1杯となることでしょう。

 
 
 

 

(写真)キンタ・ド・ボム・レティロ・ポート・20イヤーズ(ラモス・ピント)。ホルヘさんのサイン入り。以前にポルトガルを旅した時、一番気合いを入れた夕食の食後酒として選んだのが、ラモス・ピントのポートワイン(10年もののトウニー)でした。再会を果たすことができ、非常に感慨深かったです。