(写真)夢見るシューマン像。ツヴィッカウはロベルト・シューマンが生まれたまちです。
この日は、ベルリンから列車で南下して3時間半のツヴィッカウに来ました。
(写真)乗り換えのライプツィヒ中央駅で食べた朝食。旅行中の体調管理に朝食のヨーグルトは欠かせません。
ツヴィッカウ。ライプツィヒの50kmくらい南にあるまちです。もう50kmくらい南に行くとチェコになる位置。クラシック好きにはシューマンの生誕地とともに、ツヴィッカウ交響曲で聞き覚えがあるかも知れません。このまちは地球の歩き方には取り上げられていません。こういうまちこそ、探索のしがいがあるというものです。
まずは冒頭の夢見るシューマン像。まちの中心のハウプトマルクト広場にあります。これは本当に愛情のこもったブロンズ像ですね!シューマンの特徴をよく表わしているとともに、大いなるロマンを感じます。
そして、シューマン像の後に真っ先に訪れたのは、もちろんロベルト・シューマンハウス、シューマンの生家です!
(写真)シューマンの生家、ロベルト・シューマンハウス。コンサートも時々開かれているようです。
まず、1階では、昨年2017年の宗教改革500周年にちなんで、シューマンとマルティン・ルターの企画展をやっていました!1月7日までの展示だったので、ギリギリ間に合いました。特に気になった展示は以下の通りです。(ドイツ語の解説だったので、少々怪しいかも知れません?)
◯シューマンが使っていたのはルターがドイツ語翻訳した聖書(その実物の展示がありました)
◯シューマンのモットー集にはルターの言葉
◯シューマンはNeue Zeitschrift für Musik 1843にルターの記事を掲載
◯バッハの44 Kleine Choral vorspiele fur die Orgel 1845に、シューマンはルターのコラール“Gelobet seist du, Jesu Christ”を採用(その楽譜もありました)
◯Ferdinand LeekeによるTraumereiの絵。情熱的にピアノを弾く男性、傍らに女性がいるものの、夢なのか現実なのか分からない、とても不思議な絵。
そして、一昨日にジャコモ・マイアベーアの記事を書いたばかりですが、こんな展示もありました。
◯マイアベーアのオペラ「ユグノー教徒」序曲には、ルターのコラール“Ein feste Burg”が使われている。
◯シューマンは義理の姉テレーゼに「ユグノー教徒」を観るべきだ、と勧めている。
シューマンも勧めるマイアベーア、やはりもっと探求する必要がありそうです!
そして、2階はいよいよシューマンの生涯についての展示です。シューマンとともに、クララの展示も多数ありました。非常に充実していて、作曲家の生家での展示では、最も充実している、と言っても過言ではないかも知れません。特に気になった展示は以下の通りです。
(ロベルト・シューマンの展示)
◯シューマンの交流のあった作家は、ギスベルト・ローゼン、ジャン・パウル、ハインリッヒ・ハイネ。
◯シューマンがバイロイトまでジャン・パウルを訪問したパネル。バイロイトは今でこそワーグナーの音楽祭で有名ですが、ジャン・パウルにもゆかりのあるまちです。
◯シューマンによる、ショパン作曲の「ドン・ジョバンニ」お手をどうぞによるヴァリエーションの批評記事。ドイツ語を注意深く読みましたが、ここでは有名な「諸君、天才だ。帽子を取りたまえ!」の言葉は確認できませんでした。
◯ハイデルベルク滞在の時に使ったカバンやパガニーニのポートレイト付のカレンダー帳。シューマンはハイデルベルクに法律を学びに行きましたが、アマチュアの音楽家との交流に明け暮れたそうです(笑)。
◯有名な2つのペンネーム、フロレスタンとオイゼビウスの記事。
◯Autographfragment Widmung op.25/1。「ミルテの花」の「献呈」のドードドミーラシドー、ラーララファーミレドシー♪の旋律の自筆譜にめちゃめちゃ感動しました!
◯子供の情景の冒頭の自筆譜。
◯シューマンとクララの子供たちの遊びのためにチェスやドミノ。この時、「ドミノ」という言葉に大いに反応しました!その理由は近く明らかに。
◯ブラームスについて書いた有名な「新しい道」の記事!
◯ヨアヒム、シューマン、ブラームスの3人のポートレート。この並びには、もうクラクラしました!
◯シューマンのオペラ「ゲノフェーファ」の初演時のプログラム。2011年に東京室内歌劇場の公演、天羽明恵さんのゲノフェーファで観た感動の思い出がよみがえります。
◯シューマン/交響曲第4番ニ短調のパート譜。大好きな交響曲です。愛聴盤はレナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(やっぱり、笑)。
もちろん、自筆譜など、作曲家としての展示もありましたが、作家との交流の展示、批評家としての活動の展示も多かったのはシューマンならではと思いました。下の記事の通り、クララはコンサートのプログラムの展示が多かったのに対し、シューマンは見かけなかったのは、2人のピアノの実力を物語っているのかも知れません…。
(クララ・ヴィーク&クララ・シューマンの展示)
◯クララ・ヴィークが1828年10月20日、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでのデビューのプログラム(Moses-Variationen von Friedrich)。クララが9歳の時のことでした。
◯クララ・ヴィークが作曲したピアノのための4つのポロネーズ(1831)の楽譜。クララが9~11歳の時に作曲した曲です。天才少女ですね!
◯クララ・ヴィークの1835年12月6日のツヴィッカウのコンサートでは、シューマンのトッカータもプログラムに載りました。
◯クララ・ヴィークの1838年1月7日のウィーンのコンサートのプログラム。何と、ベートーベンの熱情ソナタがプログラムに!クララの熱情ソナタ、めちゃめちゃ聴いてみたいです!
◯ヨーゼフ・ヨアヒム(ヴァイオリン)、クララ・シューマン(ピアノ)が演奏しているAdolph Menzelの絵!この2人の演奏、めっちゃ聴いてみたい!
◯クララの手の石膏。クララの手は結構大きく、10度(ド→ミ)が届く私と同じくらいの大きさでした。
とにかく、クララの展示はピアノのプログラムの展示が多く、クララがどれだけ素晴らしいピアニストか、改めて実感できました!また、クララの肖像画もいろいろありましたが、どれもとても綺麗。ワーグナーの絵で有名なフランツ・フォン・レンバッハによる絵もありました。クララ、ピアニストとして尊敬しているのはもちろんですが、私、女性としてもかなり好きかも知れません。
そして、最後の展示は、シューマンが生まれた部屋でした!バッハとヘンデルの胸像、ベートーベンとシューベルトのポートレートが飾られています。ピアノはAndré Stein(ウィーン)のもので、クララがライプツィヒ・ゲヴァントハウスで初めてコンサートを行った時の、実物のグランド・ピアノだそうです!
さて、この2階にはピアノが計4台置いてあります。ベーゼンドルファーが1台、W. Wieck Dresdenが3台。何と、そのうち、ベーゼンドルファーとW. Wieck Dresdenの内の1台は、試しに弾くことができるのです!
私はシューマンハウスではピアノを試すことができる、ということを事前にうすうす知っていました。昨年夏の旅行では、リューデスハイムでみすみすベヒシュタインを弾く機会を逸した苦い経験がありました。失敗を繰り返したくはありません。
(参考)2017.8.13 リューデスハイム観光(ブレムザー館の自動演奏楽器)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12308082501.html
ということで、今回はシューマンの曲を事前に練習して、準備してツヴィッカウ訪問に臨みました。練習した曲は「子供の情景」の第1曲「異国から」と第7曲「トロイメライ」、そして大好きなピアノ協奏曲イ短調の第1楽章第2主題です。
とは言っても、誰もいない部屋(係の方1名のみ)でこれらの曲をまるまる弾くのも、いざその場面になってみると意外と気後れするもの…。そこで3曲それぞれのさわりだけ、試してみました。ベーゼンドルファーはさすがベーゼンドルファーという感じでやや重厚な魅惑の音色、W. Wieck Dresdenは初めて弾きましたが、何と言うか、夢のような、魔法のような、宝物のような、懐かしい音色がして、とても魅了されました!特に「子供の情景」は、こちらで弾く方が雰囲気が出るように思いました。
さわりだけではありましたが、ツヴィッカウのシューマンハウスでシューマンを弾いたことは、貴重な思い出になりました!実はこれまでシューマンの曲をそこまで熱心に弾いてきた訳ではありませんでした。過去、一番力を入れたのは、シューマンが原曲ではあるものの、リスト編曲の「献呈」。今回の経験から、シューマンのピアノ曲をもっと勉強して、自分としてこれを弾きたい、と思える曲を探求していこう。こう決意をしたシューマンハウス訪問となりました。
シューマンハウス、2時間の予定でしたが、結局3時間も滞在しました(笑)。係の方も熱心な日本人だな~(笑)と思ってたかも?途中、シューマンのピアノ協奏曲をバックにかけていただいて、真摯な演奏に非常に魅了されましたが、ピアニストを聞いたら、トビアス・コッホさんというドイツのピアニストでした。
せっかくの記念にと、シューマンハウスのガイドブックとシューマンの生まれた部屋に置いてあったAndré Stein(ウィーン)のピアノの演奏も入っているCDも購入しました!CDを聴いてみたら、André Steinのピアノ、まるでオルゴールのようにキラキラした音色、ほとんどツィムバロムではないかと思えるような響きも。非常に雰囲気がありました!(曲はシューマン/8つのポロネーズ第1・7・8番、東洋の絵)
(写真)シューマンハウスで購入したCD。一番左がクララが初めてのリサイタルで弾いたAndré Steinのピアノです。
さて、お腹が空いたので、ハウプトマルクト広場でランチを取りましょう。シューマンハウスでシューマンを弾いた後に、美味しい料理とお酒、窓の外には夢見るシューマン像。とても幸せな気持ちに包まれたランチでしたが、さらに何と!サービスの女性の方が、クララにそっくり!(これ脚色とかでなく本当の話) 心臓ドキドキものでした!(笑)
(写真)トマトとクリームのスープ。ツヴィッカウには地元のビールがないそうなので、5kmくらい離れたところのドゥンケルビール。結構、スープと合いました。
(写真)魚のフライ、ポテトとタルタルソース。こういうのは鉄板で美味しいですね。
ツヴィッカウ滞在、シューマンで既にお腹いっぱいですが、残りの時間はまちをぶらぶら散策しました。
(写真)マリエン教会。シューマンが洗礼を受けた教会です。
(写真)教会のそばにあった木の置物。これもプレゼピオなのでしょうか?
(写真)ツヴィッカウのゲヴァントハウス。ゲヴァントハウスはライプツィヒが有名ですが、「織物会館」という意味なので、ライプツィヒの専売特許ではありません。 奇しくも今年2018年はツヴィッカウの900周年です。
(写真)この道はトラムが建物ギリギリを通るので、ヒヤヒヤしました…。
(写真)シューマン・プラッツにあるグロッケンシュピールが鳴る部屋。時間になると、シューマン/子供の情景の「異国から」などが鳴るようです。
シューマンの故郷のツヴィッカウ観光、非常に意義深い一日となりました!シューマンはもともと交響曲とピアノ協奏曲、オペラ「ゲノフェーファ」は大好き。今年は秋にクリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンの交響曲チクルスもあるので、図らずもシューマンに非常にご縁のある年となりそうです。
ところで、この人はシューマンだけが目的でツヴィッカウに来たのではありませんでした。今回の旅行でこの1月5日は一番じっくり旅程を検討した日。夜の観劇は、ベルリンではベルリン・ドイツ・オペラでトスカ(トスカはソーニャ・ヨンチェヴァさん)、ハンブルクはくるみ割り人形(振付は先日の来日公演が超感動だったジョン・ノイマイヤーさん!)などの魅力的な演目もありました。
しかし、もっと好みの演目がないかと、検討の範囲を広げたところ、ツヴィッカウの演目を見つけて、「これだ!」と飛び付き、併せてシューマンも付いて来た、という感じでした。
私の好みがめっちゃストレートに表れた夜の観劇の演目、さて、一体どんな作曲家のどんな作品でしょう?(1回聴いただけで心にしみる、素晴らしい旋律の曲が出てきます!) 次の記事をお楽しみに!