先週末の6つのイベントが大変充実していたので少し空きましたが、冬の旅行の続きです。ウィーン国立歌劇場のこうもりのパブリック・ビューイング、もっと楽しみたいところでしたが、今夜は大切なコンサートがありました。フィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団のベートーベンを聴きに、コンツェルトハウスに行きました。
WIENER SYMPHONIKER
(Wiener Konzerthaus)
Dirigent: Philippe Jordan
Emily Magee, Sopran
Anke Vondung, Alt
Andreas Schager, Tenor
Dimitry Ivashchenko, Bass
Wiener Singakademie, Chor
Beethoven
Symphonie Nr.2 D-Dur op.36
Symphonie Nr.9 d-moll op.125
ウィーンでは毎年、年末年始にウィーン交響楽団による第九のコンサートがコンツェルトハウスであります。この年末年始は12月30日と1月1日。私は過去に2008年、2013年、2015年(全て1月1日)と聴いています。例年は9番だけですが、今年はなぜか2番も演奏されます。超ラッキー!
フィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団と言えば、昨年12月の来日公演が記憶に新しいところです。5番も素晴らしい演奏でした!否が応でも期待が高まります。
(参考)2017.12.3 フィリップ・ジョルダン/ウィーン交響楽団のベートーベン5番
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12333521704.html
※本演奏会にてフラグ回収その1
さらに、年末には第九をテーマとした映画「ダンシング・ベートーベン」を観たばかりです。モーリス・ベジャール・バレエ団や東京バレエ団の想いが込められた第九。映画の感動がまだ残る中で聴くのは大変ワクワクします。
(参考)2017.12.25 映画/ダンシング・ベートーベン
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12339228878.html
※本演奏会にてフラグ回収その2
前半は2番。第1楽章。メリハリ、ピーンと張り詰めた緊張感が素晴らしい!印象としては日本で聴いた5番の時と同じ雰囲気です。第1主題の飛翔!クラリネットの優しいフレーズは、以前にウィーン・フィルで聴いた時は、懐かしさに満ちていましたが、今回は推進力に満ちていて、新たな世界を切り開く、と言った心持ちを感じました。第2楽章。美しい演奏、特に弱音がとてもいい。一方で、振幅の激しいデモーニッシュな響きも聴かれ、メリハリが凄い演奏です。
第3楽章。リズム感が抜群で、切れ味鋭い演奏です。第4楽章。いよいよ来た!という感じ。流れるように展開し、途中、バーンと盛り上がった後に弱音の持続、そして再び爆発!新春からこのキレキレのベートーベンを聴く喜びたるや半端なかったです!
後半は9番。第1楽章。冒頭から圧倒的に切迫感を感じる演奏です。恐怖、追い詰められた感にぞくぞくします。まるで人類の困難を描いているかのよう。2番をメリハリつけて演奏したジョルダンさんですが、敢えて一本調子にすら思わせるくらいに、ひたすら切迫感を押し出した第1楽章、唸りました!
第2楽章。第1楽章よりテンポは速いものの、切迫感を感じません。凄く頼もしいもの、期待感、友情、長調そのものを感じます。あなたは一人ではない、そんな励ましの声が聞こえてくるかのよう。ただ、明るいところもややインテンポで、まだ解決には至っていない印象も持ちました。
第3楽章。もう最速の第3楽章!まるでベートーベンの愛した女性が走馬燈のように駆け巡るかのような演奏です。愛情を感じますが、速いテンポで感傷にひたりきらない、諦念すら端々に感じる演奏でした。女性への愛は素晴らしいが、あなたにはすべきことがある、そんなメッセージが聞こえてくるかのようです。この楽章、ダンシング・ベートーベンでは、吉岡美佳さんの踊りのシーンが大変印象的でしたが、重ね合わせて聴くともう涙涙です…。
第4楽章。冒頭はあっけないほどサラッと。途中のチェロの語りの場面は意味深長な響きで、哲学的ですらあります。同じくチェロによる歓喜の歌の始まりは聴こえるか聴こえないかくらい。ベートーベンの頭の中で、歓喜の歌の旋律がだんだん浮かんでくるかのような印象を持ちます。
再度の冒頭の音楽は打って変わって巨大な響き!4人のソリストはみな素晴らしい。合唱を含め、メリハリ、キレのある歌が、もの凄い迫力で迫ってきます!ボン、ボンの後のオケの迫り来る音楽は重厚感溢れる演奏。最後、Deiner Zauberのところの高揚感と言ったら!この歓喜の歌を書くのがあなたの使命なのだ。そのことを強く実感できるような演奏。最後は祝祭感のもと、最速で駆け抜けました。
何この圧倒的な名演!!!
2015年の時(指揮はトン・コープマンさん)には素晴らしい演奏に近くで1人が立ったのに、周りが立たなかったので逡巡しましたが、この圧倒的な名演を前にして、今回は真っ先に立って拍手しました!
フィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団のベートーベン、心の底から感動できる素晴らしい演奏でした!実は2008年の1月1日にウィーン交響楽団で第九を聴いた時の指揮者が、何を隠そうフィリップ・ジョルダンさんでした。当時はアルミン・ジョルダンさんの息子さん、くらいの認識しかありませんでしたが、大変勢いのある感動的な第九を聴いて、凄い指揮者がいるんだ!と感銘を受けたコンサートでした。
そして、当時はまだ第九の良さがそこまで分かっていなかったので、第九の魅力に開眼させてくれたのが私の場合、フィリップ・ジョルダン/ウィーン交響楽団だったのです。その2008年1月1日からちょうど10年となる2018年1月1日に、同じコンビで再び感動の第九を、しかも前にも増して素晴らしい演奏で聴けたことは本当に感慨深かったです!
(写真)開演前のコンツェルトハウス
(写真)コンツェルトハウスにはレナード・バーンスタインを偲ぶプレートがあります。レニーに加えて、もう一人、作曲家・指揮者のプレートがありますが、誰だか分かりますか?かのグスタフ・マーラーなんです!(写真はなし) ウィーンとマーラーとレニーの強いつながりを実感できる事象です。
(写真)終演後の食事。ウィーンに来てから3日連続、晩ご飯はウィーンのビールとサンドイッチでしたが(オペラの終演が遅かったため)、今晩は新年最初の日で、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートとウィーン交響楽団のベートーベン第九の後なので、気合いを入れました。オードブルはスモークサーモンとゼクト。ゼクトはオーストリアのスパークリング・ワイン。弾けるように活きの良い演奏だったフィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団に敬意を表して。
(写真)メインはヴィーナーシュニッツェルとグリューナーフェルトリナー。ヴィーナーシュニッツェルはミラノのコトレッタがウィーンに伝わったものです。今年のニューイヤーコンサートのテーマは「イタリアとの架け橋」。リッカルド・ムーティさんとウィーン・フィルに敬意を表して。
(写真)デザートはインペリアル・トルテとクルボアジェVSOP(コニャック)。デザートにブランデーやマール、カルヴァドスを合わせるのがフランツ流です。左はコンサートのプログラム。
(写真)帰り道にムジークフェラインに寄ったら、ライトアップされた美しいムジークフェラインの奥に、カールス教会が幽玄にそびえていて(右下、実物はもっと大きく感じます)、めちゃめちゃ感激しました!今回の旅のベストショットです。