フィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団の来日公演があったので、ベートーベンとブラームスの回を聴きに行きました。

 

 

ウィーン交響楽団

(サントリーホール)

 

指揮:フィリップ・ジョルダン

 

ベートーベン/交響曲第5番ハ短調「運命」

ブラームス/交響曲第1番ハ短調

 

(アンコール)

ブラームス/ハンガリー舞曲第5番

J.シュトラウスⅡ/トリッチ・トラッチ・ポルカ

 

 

フィリップ・ジョルダンさんは情熱的な指揮で大胆に表現付けをするタイプ、もう大好きな指揮者です!私は過去に3回聴くことができました。2008年のウィーン交響楽団とのベートーベン第九、2013年のリエンツィ、今年のニュルンベルクのマイスタージンガーで、いずれも素晴らしく感動的な指揮でした。

 

(参考)2013.8.14 ワーグナー/リエンツィ(ザルツブルク音楽祭)

(参考)2017.8.15 ワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガー(バイロイト音楽祭)

 

今日はベートーベンの5番にブラームスの1番という、これ以上ない、ど真ん中のストレートのプログラム。大いなる期待感を持って聴きました。

 

 

前半はベートーベン5番。第1楽章、冒頭からウィーン交響楽団の豊かな響きに魅了されます。盛り上がる前の緊張感のある弱音の持続が見事!最初の3分でジョルダンさんがただ者でないことが伝わってきます。ホルンを強調したり、細かくニュアンスを入れつつ、メリハリ、キレ、オケから素晴らしい響きを引き出します。最後、第1主題が戻るシーンは弦を控えて、これまで聴いたことのないような響き!とても新鮮でした。

 

第2楽章。冒頭から懐かしい響き、ラ~ドミ~ド~♪のミ~を強調して、懐かしさをより一層際立たせていて絶妙でした。泉が湧くが如くヴァイオリンの流れる旋律に木管がポッパッと呼応していくシーン、意外にも第2ヴァイオリンを強調して、とても新鮮な響きです。最後は懐かしい旋律を敢えてたっぷりやらずに、弱音でしんみりと締めました。

 

第3楽章。第2主題はコントラバスを強調、キレが申し分ないです。ラストは一体、本当にこの後上昇するんだろうか?と心配になるくらい、ギリギリまで繊細な弱音で低空飛行、そして急激に上昇!感動的な第4楽章の幕開けです!冒頭は金管を主体に展開。後はめくるめく音楽の大きな流れ。ジョルダンさんはメリハリ、楽器のバランス、至るところにニュアンスを込めて、感動的な指揮!ラストもテンポを急激に上げるというよりは、メリハリと響きで勝負。活き活きとした素晴らしい5番でした!

 

 

 

後半はブラームス1番。第1楽章。冒頭はゆっくり目の堂々たる入り、最近速い入りの演奏が多いので、「これ!これを聴きたかった!」と早速唸ります。その後は弱音を利かせた演奏。ピーンと張り詰めた緊張感の持続が素晴らしい。第1主題はとにかく低弦を充実させた響き。ミレド!、ミレド!のところも低弦を中心にキレ、メリハリ共に素晴らしい。低弦がド~レファと立ち上がっていくところもたっぷりで堂々とした間合い。木管のフレーズを急激に弱めて、他の旋律を浮かび上がらせたり、新鮮な音楽の連続に、ただただ魅了されます。ラストも充実の響き。素晴らしい第1楽章!

 

第2楽章。クラリネットのソロは強弱をたっぷりつけて歌います。ヴァイオリンのソロがしみじみ美しい。途中、たっぷりルフトパウゼを入れて雰囲気を出していました。第3楽章。自然体で進みましたが、後半は弦と木管の弱音での絡み合いが何とも言えずに美しい。ラストは弦がたっぷりの懐かしい響きで終わりました。

 

 第4楽章は第3楽章からアタッカで入りますが、少しだけ間を取って、その間の緊張感に痺れます!冒頭の弦のピィツィカートは弱音でゆっくり刻み、その後の弦のうねりは低音を強く響かせて聴き応え十分。そしていよいよ美しいホルンの登場、続いて呼応するフルートを強調、まるでブラームスからのアルプスのホルンの旋律の葉書を受け取ったクララの胸の高鳴りのようです。いよいよ第1主題が出現、もうこれしかないという絶妙なテンポ!

 

後はめくるめく展開!もう圧倒されまくったのでよく覚えていませんが、ジョルダンさん、いろいろな表現付けをして、それがピタピタッとはまります。メリハリとキレが素晴らしく、特に低弦を強く弾かせて充実の響きでした。後半ひとしきり盛り上がった後、ファ~ミ~レ~ド~と始まる直前の音楽は、弦の余韻をたっぷり伸ばして感動的。最後はスピードアップしてそのまま駆け抜けました!何と言う興奮と感動!

 

 

何この堂々たる本格派の圧倒的な名演!!!

 

 

アンコール1曲目はブラームスのハンガリー舞曲。抑揚を付けてたっぷり歌い、芝居っ気もある素晴らしい演奏!2曲目はトリッチ・トラッチ・ポルカ。ウィーン交響楽団は、実はヨハン・シュトラウスのワルツやポルカをよく演奏している印象はありませんが、さすがはウィーンのオケ、抜群に上手い(笑)。ウィーン・フィルの上品なポルカに対して、より大声でぺちゃくちゃお話をしているような、賑やかで楽しいポルカでした!

 

 

ただただ期待しかないコンサートでしたが、やっぱり素晴らしかった!というより、もう圧倒されました!ウィーンで聴いた第九の時にも感じましたが、フィリップ・ジョルダンさんの場合、曲の本質を十分に捉えた上で大胆に表現付けをするので、唸ることしきりです。私の中では、クリスティアン・ティーレマンさんのベートーベンとともに、別格の存在です。また、ブラームスの1番は間違いなく生涯最高のブラ1でした!

 

 

ひたすら感動だったフィリップ・ジョルダンさんとウィーン交響楽団のベートーベン、ぜひ、もっといろいろと聴いてみたいです!(あれ~?これ何だかフラグっぽいかも?笑)

 

 

(写真)ウィーン交響楽団の本拠地、ウィーンのコンツェルト・ハウス。ユーゲントシュティールの内装が美しい、素晴らしいホールです。