トゥガン・ソヒエフさんとN響によるプロコフィエフ/イワン雷帝のコンサートを聴きに行きました。

 

 

NHK交響楽団第1871回定期演奏会Cpro.

(NHKホール)

 

指揮:トゥガン・ソヒエフ

メゾ・ソプラノ:スヴェトラーナ・シーロヴァ

バリトン:アンドレイ・キマチ

合唱:東京混声合唱団

児童合唱:東京少年少女合唱隊

語り:片岡愛之助

 

プロコフィエフ(スタセヴィチ編)/オラトリオ「イワン雷帝」

 

 

イワン雷帝は2006年にジェイムズ・デプリースト/都響の演奏を聴いたことがあります。カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」よりも演奏頻度の少ない作品。ソヒエフさんの指揮で聴くことができるのはとても貴重です。

 

 

冒頭の片岡愛之助さんの語り。大きなNHKホールの中でもよく響く声で、さすがは歌舞伎役者です。この方、一昨年の大河ドラマ「真田丸」での冷静沈着な大谷吉継役が非常に良く、「それが真田左衛門佐の進むべき道じゃ!」の名セリフも残しています。今日も威厳のある語りで素晴らしかったです!今度、久しぶりに歌舞伎でも観てみたい。

 

第1曲「序曲」、スペクタクルな音楽で、期待感を高める壮大な響きです。第5曲「ウスペンスキー大聖堂(神は素晴らしきかな)」、大聖堂でのイワンの戴冠式のシーンで、非常に壮麗な音楽で聴き応えがありました。第7曲「聖愚者」、何とも雰囲気のある音楽。ボリス・ゴドゥノフでも聖愚者は別格の存在感を見せていますが、ロシアならではのキャラクターです。

 

第9曲「タタール人ども」、この曲からはタタールとの闘いのシーン。片岡愛之助さん「カザンに進軍するぞ!」の迫力のセリフ。第12曲「カザンへ」のめくるめく音楽、途中の「ああ、何て不幸な」から始まる叙情的な合唱が本当に見事。さらに「タタールの草原」では同じ旋律を合唱がヴォカリーズで歌ってめちゃめちゃ感動的!最初ピアノで歌って、徐々に高め、最後フォルテで歌う感動的なヴォカリーズ!今週も毎日バタバタの忙しい一週間、何とか乗り切って疲れ切った身には最高のご褒美で、涙なくしては聴けませんでした…。もうここ聴けただけで、このコンサートを聴きに来れて良かったと思える感動のシーン。

 

第13曲「イワン、貴族らに嘆願す」ではアイロニカルな弦の響きが印象的。イワン雷帝と言えども、思い通りに権限委譲できない閉塞感を、見事に表わします。第15曲「ビーバーの歌」。「ビーバー」という単語に動物好きとして反応してしまいます(笑)。ビーバーはNHK「ダーウィンが来た!」でも見て、そもそも北アメリカ大陸にいるイメージがありましたが、ロシアにもいるのでしょうか?と思って調べたら、アメリカビーバーとは別に、ヨーロッパビーバーという種類があって、ロシア、東欧、スウェーデン辺りに棲んでいるようです。黒いビーバーが捕まって皮にされて皇帝に献上される子守歌。ビーバーとは比喩で、貧しき人々が身ぐるみ剥がれて、結局は皇帝に仕える身、ということを示唆している曲なのかな?と思いました。

 

第18曲「フョードル・バスマーノフと親衛隊の歌」。野性的な響きで迫力のある音楽。ソヒエフさん、かなりゆっくりのテンポで始めて、途中で急速に速め、非常にメリハリの効いた指揮です。第20曲「終曲」は皇帝への嘆願を描いた再び非常にスペクタクルな曲。ボリス・ゴドゥノフの冒頭のプロローグのシーンを彷彿とさせます。オケと合唱が大変盛り上がって、終わりました。

 

 

ソヒエフさんの非常に見通しの良い的確な指揮、好演のオケとソリスト、熱演の語り、迫力の合唱と揃って、素晴らしいイワン雷帝、大変楽しめました!来年はユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団の来日公演でも取り上げられるようですね。プロコフィエフはオペラも含めて、あまり公演機会のない名作がいろいろあるので、上演大歓迎です!(マリインスキーやボリショイで、「戦争と平和」「炎の天使」「セミョーン・カトコ」など、ぜひぜひお願いいたします!)

 

 

(追伸)今日は金曜日。終演後に水曜日に続いてウォッカを飲みに行ったのは言うまでもありません(笑)。