この秋の東京のオペラ公演は、魅力的な公演がめじろ押しですが、その中でも、かなり楽しみにしていた公演を観に行きました。東京オペラ・プロデュースの伝家の宝刀、ドニゼッティ/ビバ!ラ・マンマです!

 

 

東京オペラ・プロデュース第101回定期公演

(新国立劇場中劇場)

 

-抱腹絶倒の喜劇オペラ 肝っ玉母さん、万歳!-

ドニゼッティ/ビバ!ラ・マンマ

 

指揮:飯坂 純

演出:馬場 紀雄

 

マンマ・アガタ:羽山 晃生

コリッラ:翠 千賀

ルイジア:羽山 弘子

プローコロ:米谷 毅彦

グリエルモ:上原 正敏

ビスクローマ:白井 和之

プロスペロ:岡戸 淳

インプレザーリオ:佐藤 泰弘

ドロテア:小野 さおり

イスペットーレ:鹿野 章人

 

東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団

東京オペラ・プロデュース合唱団

 

 

東京オペラ・プロデュースは今年の5月に第100回の記念公演を観に行きました。珍しいオッフェンバック/ラインの妖精の日本初演、コロラトゥーラが見事だったアルムガード役の梅津碧さんを始め、素晴らしい歌手のみなさんの歌歌歌!感動的な公演となりました。

 

(参考)2017.5.27 オッフェンバック/ラインの妖精(東京オペラ・プロデュース)

東京オペラ・プロデュースと言えば日本初演が代名詞ですが、今回のビバ!ラ・マンマは珍しく過去に何度も公演があります。言わば、東京オペラ・プロデュースのドル箱のコンテンツなのでしょう。今回のチラシがまた楽しそう!(笑)これ見ただけで、終演後の帰りの電車の中で思い出し笑いを堪えきれず、周りの人たちから不審な目で見られる自分の姿が容易に想像できます(笑)。

 

(写真)ビバ!ラ・マンマの楽しそうなチラシ

※東京オペラ・プロデュースのウェブサイトから

 

 

作品が作られた経緯ですが、ドニゼッティが30歳の時、ナポリのテアトロ・ヌーヴォから1幕の喜劇の依頼を受け「劇場における好都合」というオペラ作りますが、これが大成功。それに気を良くしたドニゼッティが同じ原本の続編「劇場における不都合」を新たに融合させ創作し直した作品です。その後、紆余曲折を経て、1969年にミュンヘンで再構築され、題名も「ビバ!ラ・マンマ」と改名し、再び脚光を浴びるようになったものです。

 

東京オペラ・プロデュースでは1982年に日本語訳詞上演で日本初演、5回の再演の後、1997年に原語(イタリア語)で日本初演、今回、20年ぶりの再演です。100回の記念公演を経て、初心に帰る思いが込められていると見ました。

 

 

プログラムであらすじを見たら、冒頭からオペラ公演に向けてのドタバタが繰り返され(笑)、めちゃめちゃ面白い!きっと第1幕はドタバタで、第2幕はそれにも関わらずまとまって素晴らしい公演になってメデタシメデタシかと思いきや、第2幕でも混乱は一向に収まらず(笑)、最後は意外な形でオチが付きました。ええ!?そう来るの?超楽しみです!ちなみに、「実は現代でも、全く似たようなことが行われているのだ。」との解説もあり、大笑いしてしまいました(笑)。

 

 

第1幕。序曲はロッシーニに似た音楽、ロッシーニ・クレッシェンドが聴かれてニヤリとさせられます(笑)。最初の翠千賀さんのコリッラの素晴らしいアリア!歌だけでなく、コミカルな演技も魅力的です。そばでライバル?のルイジアの羽山弘子さんが顔をぷうっと膨らませて嫉妬する演技が可愛いのなんの(笑)。その後のコミカルな7重唱は後ろで合唱のみなさんが大げさに可笑しい演技をつけるのが面白い。白井和之さんの作曲家ビスクローマとコリッラの会話はフラットが20、シャープが37もあって大変、というトンチンカンな内容。そんなのスクリャービンでも不可能ですよ(笑)。上原正敏さんのグリエルモ(外国人の設定)は歌の前にオケにチューニングを要求しますが、フルートの女性に名前を聞いたり、電話番号も聞いたりして、笑いを誘っていました(笑)。

 

いよいよマンマ・アガタの登場。何と、客席から登場です!いつもは正統派の羽山晃生さんが女装してマンマを歌うのが本当に可笑しい(笑)。マンマが舞台でドンと踏み込んだら、全員が跳ねたりして、とても楽しい舞台です。娘のルイジアとの掛け合いが絶妙のコンビネーションでとてもいい感じ。だってこの二人、ご夫婦ですもんね。マンマとコリッラの対決。マンマのコミカルな演技に、美人の翠千賀さんのコリッラがまた素晴らしいユーモアのある演技で切り返します!第1幕最後は手紙と新聞批評をきっかけにしたドタバタで、ロッシーニでよく聴かれる感じの、登場人物全員のアンサンブルによる大混乱で幕となりました。

 

 

第2幕。舞台にシーソーが登場し、それだけで可笑しな展開が予想されます(笑)。マンマと佐藤泰弘さんの興行主インプレザーリオのやりとりは、その木のシーソーが、マンマの重さでたわんだり(観客から「あー」の悲鳴が、笑)、衣装が偶然引っかかって焦ったり、もう可笑しいのなんの(笑)。第2幕はガラのような形で、それぞれの持ち歌を歌って進みます。ルイジアはドンジョバンニのツェルリ-ナの「ぶってよマゼット」を素っ頓狂な音程で歌ったり正確に歌ったり、羽山弘子さんの芸達者な歌が素晴らしい。その後にマンマがセビリアの理髪師のロジーナの「今の声は」を歌いました。岡戸淳さんの台本作家プロスペロを交えてのちょっとエッチで楽しいステージ。

 

そして、コリッラが何と!ノルマの「清らかな女神よ」を歌い始めました!翠千賀さんの素晴らしいCasta Diva!今日は笑って涙すると思ってましたが、ここでシリアスな歌で涙するとは思わなかった…。今年は7月にマリエッラ・デヴィーアさんのノルマも堪能しましたが、翠千賀さん、豊かな声でスケールがあって本当に素晴らしい歌でした!私、この公演で翠千賀さんを初めて聴いて、歌も演技も凄いことを思い知りました。今後も要注目です。コリッラはその後、観客に拍手を求めて、自ら手を叩いて「アンコール!」と盛り立てて(笑)。アンコールのノルマのカヴァティーナ「ああ!あなたの美しく誠実な初恋が」も見事!

 

そして、その後はまたドタバタが続きますが、最後はそんな状況に呆れた役人から、公演への援助はできないと打ち切りと宣言されます。そこで何と!それまで、グリエルモからタバコケースを巻き上げたり強欲だったマンマが、公演のために自腹を切ると宣言!みんなから「ビバ!ラ・マンマ」と讃えられて幕となりました!

 

 

活き活きとした音楽、笑いに溢れた素晴らしい公演で、心から楽しめました!カーテンコールでのマンマとコリッラの、自分が先なのよ!の寸劇もめちゃめちゃ楽しかったです!(笑) さすがは東京オペラ・プロデュースの伝家の宝刀かつドル箱コンテンツ。繰り返し上演されてきた理由がよく分かりました。最後は援助が十分得られない中でも、マンマが自腹を切って頑張って(日本では上演に恵まれない秀逸な作品をできる限りオリジナルな形で)オペラを上演するという、正に東京オペラ・プロデュースの心意気や矜持を示すような、感動的なラストでした!

 

 

東京オペラ・プロデュース、今回も大満足でした!今回のまたしても素晴らしかった公演における、関係者のみなみなさまの大いなる情熱と多大なるご努力に心より敬意を表させていただきます!今後も珍しい作品の上演、大いに期待しています!

 

 

(追伸)私が東京オペラ・プロデュースにどんだけお世話になっているかは、こちらをご覧ください。決して足を向けては眠れません(笑)。

なお、9日(木)にブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の横浜みなとみらいホールのコンサートを聴きに行って、それはもう素晴らしく感動の極みでしたが、どうしてリスクのある平日夜のみなとみらいのコンサートを選択した(今日(土曜日)のサントリーホールで同じプログラムがあった)のかと言うと、今日のビバ!ラ・マンマを観るためでした。

 

私の東京オペラ・プロデュース愛は揺るぎないのです!