幻のシャンパーニュとも言われるシャンパン・ハウス、アンリ・ジローの試飲会に行ってきました。


 

アンリ・ジロー スペシャルテイスティングイベント

(エノテカ銀座店)

 

①オマージュNV

②コード・ノワールNV

③フュ・ド・シェーヌ マルチ・ヴィンテージMV10

④フュ・ド・シェーヌ マルチ・ヴィンテージ・ロゼ

⑤アルゴンヌ2004

 

 

以前は幻のシャンパーニュと言えば、サロンの代名詞でしたが、今はこのアンリ・ジローなんですね。シャンパンは大好きで(何しろ「こうもり」を始め、数々のオペレッタやオペラを盛り上げます)、いろいろな銘柄をいただきましたが、アンリ・ジローは初めてです。

 

最初にアンリ・ジローの12代当主、クロード・ジローさんのプレゼンテーションがありました。シャンパーニュをリニューアルするため意識して闘っている、産業革命より前のシャンパーニュを復活させなければいけない、と並々ならぬ意欲を話されていました。

 

 

①は美しいやや薄い金色、そして銀色のニュアンスも入っています。甘い香り!フルーツの香りや熟成香を感じます。味は非常に繊細、酸もしっかり乗っていますが心地良いです。これがアンリ・ジローのスタンダード・シャンパンの位置づけになりますが、非常にエレガントなシャンパンです!名前はアンリ・ジローの創始者、フランソワ・エマールに対するオマージュ。1625年にぶどう栽培を始め、史跡に名前が残っているそうです。アイ村のテロワールを活かすことが重要とのことでした。

 

②は色は①よりやや薄く、香りは①よりやや黒ぶどうの香りが強いように感じ、何か独特な雰囲気です。味はとてもふくよかで、①~③の中では一番丸みを感じました。ピノ・ノワールの亜種でアイ村の土着品種のプティ・ドレという黒ぶどう100%で作られたブラン・ド・ノワールです。コード(遺伝子)・ノワール(黒)の名前。黒ぶどうに敬意を表してこの名前にされたそうです。

 

③は①と同じくらいの色。香りは最初こもっていましたが、後に蜂蜜の香り。始めはやや酸味を強く感じましたが、しばらく置くと、上質なピュリニー・モンラッシェのような味わいです。シャンパーニュでは複数のヴィンテージを組み合わせるのでノン・ヴィンテージ(NV)という言い方をしますが、このシャンパーニュはマルチ・ヴィンテージ。2010年のぶどうを2/3、残り1/3は様々な年のぶどうを使っているそうです。マルチ・ヴィンテージという言い方をするのは、こことクリュッグの2つ?シャンパーニュはぶどう栽培の最北端と微妙な地域なので、毎年ミレジムを作れるかどうか分からない。なので、混ぜ合わせるのがシャンパーニュの知恵、個性だ、とのお話でした。

 

④は色は綺麗なサーモンピンクですが、琥珀色のニュアンスもあります。香りはオレンジやなぜかコンテ(チーズ)の香り?①~③に比べると、やはり赤ワインのニュアンスの強い、非常に美味しいロゼシャンパーニュです!ロゼシャンパンはオシャレな雰囲気とは裏腹に、お値段の割にはクオリティが追いつかず、シャンパン好きからは敬遠される傾向にあるように思いますが、これは本当に美味しいロゼシャンパーニュでした!2007年がベースでMVと同様に複数の年のぶどうを使っており、7%の赤ワインをアッサンブラージュしているとのことでした。

 

いよいよ⑤、アンリ・ジローの最高級キュヴェです。色は①より遥かに濃い黄金色。香りは甘い香り、熟成香、熟したフルーツの香りなどが渾然一体となってウワッと迫ってきます!どう表現して良いか分からないような怪しげな香りすらします(笑)。ショスタコーヴィチのオペラ「鼻」ではないですが、グラスに鼻を置き去りにして、いつまでも香っていたい気持ちになります!味は極めて繊細でエレガント、旨味・甘味・酸味が完璧なバランス、2004年のヴィンテージなので13年経っていますが、飲み頃としてドンピシャでは?もう最高という言葉しか浮かんでこないくらい、素晴らしいシャンパーニュです!

 

このシャンパーニュは、ランスの東のアルゴンヌの森の樫の木の樽で作られ、アルゴンヌとアイ村のテロワールを象徴するシャンパーニュとのことでした。毎年、樹齢200年の木を切り出すことはできないので、もっと研究が必要。森を守る活動もしていて、フランスの森林庁と契約をして、トレースと資金援助をしている、とのことでした。非常に貴重なシャンパーニュなんですね!

 

 

素晴らしいシャンパーニュの数々に、感無量の試飲会でした!せっかくクロード・ジローさんが来日されているので、おもてなしで何か1本購入することに。(このセリフ、今年もう何回、同じこと言ったでしょう、笑) どれにしようかと思いましたが、特に素晴らしかった⑤はお値段的にとても手が出ず…、ラベルに一目惚れして、ダム・ジャンヌという名前の、別のロゼシャンパーニュにしてみました。

 

(写真)アンリ・ジロー ロゼ ダム・ジャンヌのラベル

 

このラベル、女性の豊かさに敬意を表してのものですが、私が惹かれたのは、一見、大好きなウィーンの自然史博物館にあるヴィレンドルフのヴィーナスを連想させたからです。


(写真)ヴィレンドルフのヴィーナス(ウィーンの自然史博物館所蔵)

※ウィキペディアより
 

このヴィーナス像、約2万5000年前に作られたもので、人類最古の芸術作品という指摘もあるそうです。それにどこか似た感じのラベルのロゼシャンパーニュ。自ずと時空を超えたスケール感を感じさせます。開けるときが本当に楽しみ。クロード・ジローさん、素晴らしい試飲会を本当にありがとうございました!(エノテカ銀座店のみなさまも、笑顔の素晴らしい対応、超GJでした!)