ライン川とモーゼル川の合流、黒人のカップルのご結婚と、とても幸せな気持ちになれたコブレンツ観光も終わり、時刻は18:00近く。列車でリューデスハイム方面に戻りましょう。帰りの列車の車窓からも、川下りで見た風景を見ることができ、とても得した気分でした。

 

さて、今宵の夕ご飯をどこでいただくか?旅程の検討時に悩んだところでした。オーソドックスにはリューデスハイムに戻って、有名なつぐみ横丁で飲んで歌って踊っての楽しい夜で、大変惹かれるのですが、もう一つ、魅力的な選択肢のまちがありました。

 

そのまちの名前は、アスマンスハウゼン。

 

アスマンスハウゼンはリューデスハイムの隣まち、赤ワインであるシュペート・ブルグンダーの産地です。その昔、ゲーテをはじめとする18・19世紀の後期ロマン派の詩人、芸術家たちがアスマンスハウゼンに集まり、シュペート・ブルグンダーを飲みながら議論に花を咲かせたそうです。

 
 

 

ならば、その雰囲気を少しでも体感すべく、アスマンスハウゼンでシュペート・ブルグンダーを飲まない訳にはまいりません!

 

 

アスマンスハウゼンでは、クローネというホテルが最も格式の高い老舗ホテルで、そこのレストランも大変評価が高いそうです。真っ直ぐそのレストランに向かいました。


(写真)ホテル・クローネ。非常に雰囲気のあるホテルです。

 

(写真)シュペート・ブルグンダー。Krone Spätburgunder 2010ルビー色がきらきらと輝き、香り高いワインです。

 

(写真)牛肉のフィレのポートワインソース、カボチャとヌードル添え


 

アスマンスハウゼンでいただくシュペート・ブルグンダー、とても感慨深く、かつ美味しかったです!お肉ともとてもいい感じ。


 

せっかくなので、もう一杯いただくことに。ワインリストをよくよく見たら、何と!シュペート・ブルグンダーのアウスレーゼ(甘口のワイン)があるではないですか!初めて目にする珍しいワイン、ぜひいただきましょう!

 


(写真)シュペート・ブルグンダーのアウスレーゼ

Assmannshäuser Höllenberg Spätburgunder Weissherbst, Auslese 2013

 

シュペート・ブルグンダーのアウスレーゼは、色は赤みがかったように見える黄金色、蜂蜜の香り、味は上質な甘さです。シュペート・ブルグンダーは黒ぶどうですが、このワインの場合、作る過程で果皮をすぐに取り除き、白ワインのようになりますが、果皮の色が少し残るので、このような赤みのかかった独特の色になるんだと思います。美しさといい、佇まいといい、極めて感動的なワイン!

 

あまりお客さんもいないので、このワインをお供に、その昔シュペート・ブルグンダーを飲みながら議論したゲーテにあやかって、ゲーテの詩集を楽しんでみましょう。ヘルマン・ヘッセの詩集は近年も親しんでいましたが、ゲーテの詩集は久しぶりです。

 

(写真)シュペート・ブルグンダーのアウスレーゼとゲーテの詩集
 

 

 

花を与えるのは自然。

編んで花輪にするのは芸術。

 

⇒まずは芸術に関する詩についていくつか。ゲーテは芸術に関する詩が多く、中には音楽に最高の価値を置いているものもあります。

 

 

形づくれ!芸術家よ!語るな!

ただ一つの息吹だにも汝の詩たれかし。

 

⇒何かしらの真実が含まれているような気がします。一方で、ワーグナーのように語りまくりつつ、形づくりまくった芸術家もいます。

 

 

かの一なるもの永遠にして、多に分かたる、

しかも一にして、永遠に唯一つなり。

一の中に多を見出し、多を一のごとく感ぜよ。

さらば、芸術の初めと終りとを会得せん。

 

⇒何か禅問答のようですが、言いたいこと、何となく分かります。シェーンベルクがブラームスから学んだことに「節約、それでいて豊かであること」を挙げていることを思い出しました。

 

 

かつて鳴り出でしもの、時を経てまた鳴り出ずれば、

幸福も不幸も歌となる。

 

⇒これは深いですね!ゲーテの人生観が表れているようです。

 

 

みずから勇敢に戦った者にして初めて

英雄を心からほめたたえるだろう。

暑さ寒さに苦しんだものでなければ

人間の値打なんかわかりようがない。

 

⇒これは非常に考えさせられる詩です。私もブログにいろいろとしたためるに当たり、心したいと思います。

 

 

シュタイン夫人へ

(私たちはどこから)

 

私たちはどこから生れて来たか。

愛から。

私たちはどうして滅ぶか。

愛なきために。

私たちは何によって自分に打ちかつか。

愛によって。

私たちも愛を見出し得るか。

愛によって。

長いあいだ泣かずに済むのは何によるか。

愛による。

私たちをたえず結びつけるのは何か。

愛である。

 

⇒やっぱり結局は愛なんですね!ゲーテは名前の響きの印象もあり、知らないとインテリでお堅い人なのかな?と思われがちですが、常に女性への愛に溢れていた方です。

 

 

いましめ


いや遠くさまよい出でんとするか。

見よ、善きことはまこと近きにあり。

幸福をとらえる術を知れ、

幸福は常に手近にあれば。

 

⇒自分が旅に出ておきながら何ですが、とてもいい詩ですね。帰ってから日常生活を送る上での戒めにしたいと思います。

 

 

そして、最もアスマンスハウゼンでシュペート・ブルグンダーを楽しみながら味わうに相応しい詩として、以下の詩を挙げさせていただきます。

 

 

(中略)

ブドウの花は形も色もすぐれざれど、

その実、熟しては、人と神とを酔わすものを。

 

⇒高橋健二さんの訳が素晴らし過ぎます!歳を取ると、あちこち痛くなったり、マイナスのイメージを持ちがちですが、一方で、若い頃にはとうてい到達できなかった境地に達することもあります。歳を取ることは、決して良くないことではないのです。
 

 

 

私のそばのテーブルで、いい感じに歳を取られた60代くらいのドイツ人のご夫婦が食事を楽しまれていました。ご主人は胸のポケットに真紅のバラの一輪挿し、ご婦人はお酒が進んだらシューベルトの歌曲をハミングで歌ったりしてとても可愛らしい。笑顔を絶やさない、非常に雰囲気のある食事風景でした。こういう風に素敵に歳を取りたいものです。


 

アスマンスハウゼンはホテル・クローネでの美味しい食事と最高のシュペート・ブルグンダー、味わい深いゲーテの詩の数々との交流と、一生忘れることのない素晴らしいものとなりました!2日目もおかげさまで充実の一日、旅はまだまだ続きます。

 

 

 

 
 

(おまけ)1時間後のリューデスハイム。まだまだ飲む気満々の私(笑)。


(写真)エルダーベリーのワイン。8%もあります。一杯1Euroと安く、試してみました。美味い!知らないドイツ人のおじさんが”Prost !”と言ってコップを合わせてきました。楽しい!


(写真)つぐみ横丁の老舗レストラン「ドロッセルホーフ」の鐘。21:00にはローレライの旋律の鐘が鳴りました!もう感動ものです。


(写真)あちこちから音楽が聞こえ、踊る人もいて、大変賑やかなつぐみ横丁。夜はふけていきます。