ウンベルト・エーコの原作が名著として名高い、映画「薔薇の名前」を観ました。

 

※DVDの紹介のHPより

 

この映画のあらすじですが、宗教裁判が激化している中世のヨーロッパで、イタリアの修道院での会議にイギリスの修道士ウィリアム(ショーン・コネリー)と、見習いのアドソ(クリスチャン・スレーター)が参加します。そこで不審な死を遂げた若い修道士の死の真相解明を任された2人が謎を探るうちに、再び殺人事件が発生する…、という修道院を舞台としたミステリーです。

 

まず、北イタリアの山の上にある高い塔を抱いた修道院が、映像的に非常にインパクトがあり、その中で仕える修道士たちも、みなひと癖もふた癖もある方々。その中を頭脳明晰な修道士ウィリアムと若くて純粋な見習い修道士アドソが軽妙な問答をしながら謎解きをしていく、非常に見応えのある映画です。

 

特に印象に残ったシーンについていくつかご紹介します。

 

まずは謎の解明の途中、修道士ウィリアムが盲目の長老ホルヘと、キリスト教と笑いについて問答をするシーン。笑いは罪だというというホルヘに対して、ウィリアムは聖書やアリストテレスを持ち出して、笑いを擁護します。「聖フランシスコは笑いを好みました」「喜劇は真実の道具」というウィリアムのセリフが印象的。血の通った教えです。そうです。笑いは人間が生きていくのに欠かせない、とても大切な要素です。クラシックが好きな人には、オペレッタという珠玉の作品がありますね。

 

次に、修道士にも関わらずアドソが村の娘と愛を交わしてしまい(不思議な感動を覚えるシーン)、それをウィリアムに懺悔するシーン。ウィリアムは聖書にある女性に対するやや厳しめの見方を披露する一方で、「女には何らかの美徳があるはずだ」「禁欲の生活は平和でいい、平穏と安泰がある、…退屈だが」とさりげなく女性を称賛し、アドソをフォローします。本当に素敵な師匠ですね!

 

えっ?私の見解ですか?そりゃあもう、カールマン「チャールダーシュの女王」の愛すべきボニのセリフで語り尽くされています(笑)。→「この世に女がいなけりゃすべては終り」

 

そして、殺人事件の謎が図書館にあると見たウィリアムとアドソが、遂に塔の中の迷宮の図書館を発見したシーン。おびただしい数の本の部屋の中で、「キリスト教世界で最大の図書館にいる!」と、いつも沈着冷静なウィリアムが感動のあまり喜びを爆発させます!非常に印象的なシーン。以前にオーストリアはドナウ川沿いのメルク修道院の図書館の、美しくかつ膨大な数の本に非常に感銘を受けたことを思い出しました。人類の知に対する並々ならぬ好奇心とその蓄積への惜しみない努力、本当に素晴らしいと思います。ああ…、本もいろいろ読まなきゃ、でも、時間が…(泣)。

 

あまり詳細に感想を言うのも何なので、この辺りまでにして、結末もご覧になられてのお楽しみ、ということにさせていただきます。ただ、最後のとある別れのシーンは本当に美しく感動的。そしてラストの「神よ、鋭い知性ゆえに本に執着したささやかな罪を許したまえ」というセリフが心に響きます。

 

おおげさかも知れませんが、今後の人生を生きていく上で、改めて大切なものを教えてくれた映画です。

 

さすがに名作だけあって、観応え十分でした!年齢を経てますます魅力的なショーン・コネリーと、若さと純粋さに溢れるクリスチャン・スレーターのコンビが素晴らしく、脇役の癖のある修道士たちもみな好演です。

 

そして、何と言っても、雰囲気あり過ぎる修道院がこの映画の魅力を下支えします。舞台は北イタリアですが、中世の趣を強く感じさせる修道院内部の撮影は、ドイツはエルトヴィレ近郊のエーベルバッハ修道院で行われました。エーベルバッハ修道院、どんなところだろう?行ってみたいものです!

 

 

ということで、巨大なフラグが立ちました(笑)。この続きは?しばしお待ちを。乞うご期待!?