前回のブログも、太田糸音さんの素晴らしい演奏で、またまた感想が長くなってしまいました(笑)。このコンサートは結局、3回シリーズでの感想アップとなりました。それだけ、心に残るものがあった素晴らしいコンサート&演奏だったということ。若手3人のご活躍は本当に頼もしい限りです。本日は、最後の尾崎未空さんの演奏を聴いた感想について、ご紹介したいと思います。

 

 

2016年 ピティナ・ピアノコンペティション特級入賞者コンサート

(カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」)

 

◆尾崎 未空

※写真はコンサート紹介のHPより

 

リスト/バラード第2番ロ短調

シューベルト=リスト/白鳥の歌より「愛の便り」

ショパン/アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22

 

 

(演奏終了) 

 

 ◆三好 朝香

 

プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第3番イ短調Op.28

ショパン/3つのマズルカOp.50

スクリャービン/幻想曲ロ短調Op.28

カプースチン:8つの演奏会用エチュードより「フィナーレ」

 

(参考)三好朝香さんの素晴らしい演奏の感想は以下をご覧ください。

http://ameblo.jp/franz2013/entry-12291811320.html

 

◆太田 糸音

 

バッハ/平均律クラヴィーア曲集第2巻より第23番ロ長調BWV892

スクリャービン/ピアノ・ソナタ第4番嬰ヘ長調Op.30

スクリャービン/ピアノ・ソナタ第5番嬰ヘ長調Op.53

 

(参考)太田糸音さんの素晴らしい演奏の感想は以下をご覧ください。

http://ameblo.jp/franz2013/entry-12292097980.html

 

※弾かれた順番は、三好朝香さん→太田糸音さん→尾崎未空さん、です。

 

 

3人目、尾崎未空さんの登場です。エメラルドブルーの綺麗なドレス、透き通るような白い肌や黒髪が映えます。この方はこの5月のリサイタルのチラシを見たことがあります。ショパン/ピアノ・ソナタ3番がトリで、リストやシマノフスキが並んでいて、とても興味を引かれましたが、都響のヴォーン・ウィリアムズと重なっていたので、泣く泣く断念しました。初めて聴くので楽しみです。

 

1曲目はリスト/バラード2番。尾崎未空さんは印象としては、キチッとした端正なピアノ。スクリャービンの後ということもありますが、リストがもはや格調の高い古典のように聴こえてきます。と言っても線が細い訳ではなく、凛としつつ豊かな響きの素敵なピアノです。

 

今回のコンサートは正直スクリャービンに惹かれて聴きに来ましたが、この名曲バラード2番を久しぶりに聴いて、リストの音楽も本当に偉大だと改めて思い知らされました。リストはオケのコンサートではあまり取り上げられず、例のリストの演奏で失神する貴婦人を皮肉ったカリカチュアの絵の影響か、「外面的な華やかさだけで内容のない音楽」と一方的に勘違いされ、海外での極めて高い評価に比べて、日本で最も過小評価されている作曲家のように思います。ここは全力で否定したいと思います!!!

 

今日の尾崎未空さんの音楽自体の魅力を100%伝える澄み切ったリストを聴けば、その理由は自ずと分かるはず。リストの純粋な魅力を伝える素晴らしい演奏でした!それにしても、ロ短調の曲って、何でこんなに魅力的なのでしょう?三好朝香さんの弾いたスクリャービン/幻想曲ロ短調しかり、尾崎未空さんが5月に弾いたショパン/ピアノ・ソナタ3番ロ短調しかり、そして、リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調しかり。

 

2曲目はリスト/愛の便り。これも優しさのこもった瑞々しい演奏で、とても楽しめました。実は私、復習を間違えて、同じ白鳥の歌でもセレナーデの方を聴いてきてしまいました…。シプリアン・カツァリスさんが協奏曲のアンコールでよく弾く曲ですが、カツァリスさんとどう違うのかな?とか、カツァリスさんのように即興も入れるのかな?とか、予め楽しみポイントを設定していたのですが、曲が始まったら、あれっ!?と思って。大変失礼しました…。

 

そして3曲目はショパン/アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。私、この曲は2010年のショパン・イヤーに、ポーランドはブロホフ村、ショパンが洗礼を受けた聖ロフ教会でのコンサートで聴いています。ショパンの生誕地ジェラゾヴァ・ヴォラを巡礼した際に合わせて行ったコンサート。ポーランド人の若手の女性ピアニスト(Karolina Nadolskaさん)が胸を張って意気揚々と、魂の込められた熱い演奏を展開して、非常に感激した思い出の曲です。映画「戦場のピアニスト」でもエンディングに使われていて、非常に印象的でしたね。

 

ここでも尾崎未空さんは格調の高い端正なピアノ。前半のアンダンテ・スピアナートはひたすら美しく可憐で、続く大ポロネーズもリズム感でノリノリというよりは、端正に小気味良く聴かせます。ポーランドのうら若きマダムがパリの街を凛としつつ小粋に散歩している情景が目に浮かびました。私はこの曲の場合、陽のポロネーズなので、どちらかと言うと、感情を十二分に込め、民族性たっぷりの弾けた演奏の方が好みですが、こういうスタイルで聴かせてしまうのは、なかなかできることではないと思います。

 

私、尾崎未空さんのこの端正なショパンを聴きながら、いつかぜひ幻想ポロネーズを聴いてみたいと思いました。きっと凛としつつも陰影をつけた味わい深い演奏となることでしょう。ドビュッシューやベートーベンのワルトシュタイン・ソナタなどもとても良さそう。素晴らしい演奏に、観客も大きな拍手で応えていました!

 

 

3人の素晴らしい演奏を聴くことができ、繰り返しとなりますが、3人とも、今後、大きく羽ばたいて行ってほしいと心から思いました。本当に心に残る演奏をありがとうございました!これからも頑張られてください!応援しています!