ファビオ・ルイージさんが客演するN響定期に行ってきました。ルイージさんは前回、オルフのカルミナ・ブラーナとブルックナー9番を取り上げましたが、特にオルフは熱い指揮で非常に感銘を受けました。今回も大いに期待しています。

 

(参考)ファビオ・ルイージさんの前回客演時のコンサート

http://ameblo.jp/franz2013/archive4-201402.html

http://ameblo.jp/franz2013/archive5-201402.html

 

 

NHK交響楽団第1858回定期演奏会Apro.

(NHKホール)

 

指揮:ファビオ・ルイージ

ヴァイオリン:ニコライ・ズナイダー

 

アイネム/カプリッチョ

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調

マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

 

 

1曲目はアイネム。プログラムには「明瞭な作風は(中略)モーツァルトやヨハン・シュトラウスⅡ世に遡る伝統的なウィーン音楽を継承した一面を見せる。」とありましたが、このカプリッチョはほとんど南米の作曲家の曲?と思わせるくらいに楽しい響きの曲。こういうのを持ってこれるのはウィーンとドイツでの活躍が長いルイージさんならではでしょうか?アイネムは「ダントンの死」というフランス革命を題材にしたオペラも書いていますが、このような作風なら観てみたいものです。

 

2曲目はメンデルスゾーン。私はこの超有名なヴァイオリン協奏曲、お恥ずかしながら、最後まで起きていた試しがありません…。聴いている内に心地良くなってしまい、2楽章の記憶がなく、ハッと気付いたら3楽章の終盤ということがしばしば。曲が苦手だったり、演奏が響かなかったりではなく、相性的にどうしても途中で気持ち良くなって召されてしまいます。

 

しかし、この日はズナイダーさんのアグレッシヴでスリリングな演奏に引き込まれ、奇跡的に最後まで起きていました!ただ、具体的にどこがどうで、というのはどうにもよく覚えていないので、やはり召される一歩手前だったのかも?(笑)それにしても本当にいい曲ですね。

 

ズナイダーさんのアンコールはバッハ。前回ブッフビンダーさんの絶品のシューベルトのアンコールの際も、ルイージさんはドアに寄りかかって楽しそうに聴いていましたが、今回は指揮者がアンコールを楽に聴けるようにと、何と予めわざわざ椅子が用意されていました!(笑)ソリストへの敬意もあるかも知れませんが、ルイージさん、純粋に音楽が心底好きなんだと思います。こういうのは本当にいいですね。

 

後半はマーラー1番。第1楽章で最も印象に残ったのは中間部の短調の不安な場面。鳥の声を模した木管が1か所出なかったように思いましたが、出損なったというよりは、ただならぬ雰囲気を察して出るのを躊躇った、出るのが怖くなった、というような印象を持ちました。そのくらいにデモーニッシュな中間部。ここは一体何を描写しているのでしょうか?第2楽章は冒頭、アクセントをつけたり、スピードを早めたり、ルイージさんの工夫が見られました。

 

第3楽章の冒頭。普通はコントラバスのソロですが、この日は何とパート全体でユニゾンで奏でていました!国際グスタフ・マーラー協会の批判校訂版全集の楽譜に従ったとのこと。ここは通常ソロを弾くことのないコントラバスをあえて当て、ヨチヨチ歩きのソロにして、嘆きの印象を高めるのがマーラーの狙いではないか?と以前、公演プログラムか何かで読んだ記憶がありますが、逆に揃った演奏で聴くと、みんなで整然として葬式の列に加わっているような印象です。

 

そう言えば、この第3楽章はチェコのユダヤのゲットーでの物語で、死んだ仲間をかついで墓地へ行進しますが、ユダヤ人は集会が禁止されているので、巡視の目から息をひそめたり、逆に酔っぱらったふりをして大騒ぎしたり…(あの最後の乱痴気騒ぎのような音楽!)、というのがマーラーの意図・解釈だった、というのも以前に何かで読んだことがあります。揃ったコントラバスで聴くと、整然と悲しみを装いつつ、第4楽章の戦いに向けて虎視眈々と狙っている、そういう印象も持ちました。そう考えると、第4楽章であれだけ劇的に盛り上がるのも納得ですね。

 

曲が終わると、大喝采が起き、ルイージさんは多くのブラヴォーに応えます。弦との握手はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとはトップの2人とでしたが、コントラバスだけは8人全員と握手。きっと相当しっかりと練習したんですね。大変貴重な機会でした。

 

 

マーラーの交響曲は10代~20代前半に熱狂して聴いたためかやや耳タコ状態で…(特に1・2・4・5番)、今では3番と9番以外はほとんど聴きに行きませんが、この日の1番は、貴重なコントラバスのユニゾンもあり、聴きにきて本当に良かったです。ルイージさん、これからもどんどん客演していただけるとありがたいです!

 

 

(写真)ウィーンのコンツェルトハウスに掲げられているマーラーのプレート