みなさんはハイドンの交響曲は聴かれますか?「モーツァルトは好きだけど、ハイドンはちょっと苦手」「沢山あって、どの曲を聴いたらいいか分からない」という方もいらっしゃるかも?

 

かく言う私も以前はハイドンには何か堅苦しいイメージを持っていて、積極的に聴こうとはしていませんでした。コンサートの前半に交響曲があっても、予習もせずに何となく聴き、後でどんなだったかよく思い出せない、ということが続いていました。

 

そんな状況を一変し、ハイドンの愉しさを教えてくれたのはマエストロ・スダーンと東響です。この素晴らしきコンビは2007年にハイドン・チクルスを敢行。何と他の指揮者も含む全ての定期演奏会でハイドンを取り上げることとしました!私はスダーンさんが指揮の時のハイドンを全て聴きましたが、最初に交響曲第1番ニ長調を聴いた時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。ハイドンって、こんなに楽しかったんだ!こんなにウキウキ、ワクワクできる音楽だったんだ!

 

それ以来、ハイドンの交響曲にはまってしまい、CDで104番(及びA・Bの計106曲)まで一通り聴くようになりました。特に好きな交響曲は、第1楽章の鮮やかな対位法と第4楽章のメルヘンが魅力的な、モーツァルトへのオマージュと言われる98番、第1楽章の凛とした清々しさと第4楽章のウキウキ感が堪らない88番(何とヘヴィメタにもアレンジされたそうです!)、ドラマティックで正に「悲しみ」が疾走する44番がトップ3です。

 

今ではコンサートのプログラムに交響曲が2曲入ろうものなら、必ず駆けつけるくらいに好きになりました。そんなコンサートがあったので、先週に引き続き、新日フィルのコンサートに行きました。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団アフタヌーン・コンサート・シリーズ

(すみだトリフォニーホール)

指揮:クレメンス・シュルト

ヴァイオリン:パク・ヘユン

 

ハイドン/交響曲第83番ト短調「めんどり」

バッハ/ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調

ハイドン/交響曲第93番ニ長調

 

 

1曲目はハイドン/交響曲第83番。いわゆるパリ交響曲6曲の中の1曲ですが、勢いがあって、好きな曲の1つです。この曲、「めんどり」という標題が付いています。ハイドンの交響曲の標題は内容に関係のない他愛もないものも多く、「めんどり」も第1楽章第2主題が「コッコッコッ」とめんどりを連想させる響きが聴かれるために付けられたものです。沢山曲がある中で覚えやすいのはいいのですが、この曲の場合、標題に引きずられて、他のところも「コケコッコ」とかニワトリの鳴き声をついつい連想してしまい、全く迷惑な話です(泣)。

 

第1楽章、シュルトさんはキビキビしつつも新日フィルから柔らかい響きを引き出します。メリハリのついたとてもいい感じのハイドン。展開部冒頭の和声には痺れます。第2楽章はヴァイオリンの優しい音色が心地良い。第4楽章はとても晴れ晴れしい音楽。そう言えば、今年に入ってからメシアンやシマノフスキなど、妖しい魅力の曲ばかり聴いてきて、ドイツ・オーストリア系のシンフォニーは3月にして今回がお初でした。何だかホッとします(笑)。

 

2曲目はバッハのヴァイオリン協奏曲。バッハは勉強不足で曲名から音楽が出てきませんが…、とても有名な曲でした。ハイドンの交響曲の間の選択として、とても気が利いています。

 

後半はハイドン/交響曲第93番。ザロモン・セットの最初の曲で、ハイドンの隠れた名曲です。この曲は2009年にアイゼンシュタットのハイドン音楽祭で、サー・コリン・デイヴィス/イギリス室内管弦楽団で聴いたことがあります。デイヴィスさんの指揮は格調高くも、お茶目で楽しいハイドン。第2楽章でファゴットがユーモラスな音を出すところを、顔をブルブルと震わせて指揮するなど、イギリス紳士のユーモアここに極まれり、という素晴らしい演奏でした。思い出の曲です。

 

第1楽章はもったいぶった慎重な入りから、すぐに活発な音楽。私は第1主題の後、「ラ~ソファ~、シドレミシラ~、ソラシドミレ~♪」の踊るような3拍子の部分が大好きです。ハイドンを聴く愉悦。第2楽章は強弱に工夫を凝らしていました。例のファゴットがかますところは意外にアッサリ。シュルトさん、まだ遠慮がありますね?師匠は躊躇せずにやってましたよ!(笑)(※プログラムの紹介でシュルトさんは「C.デイヴィスのもと、ロンドン交響楽団のアシスタント・コンダクターを務めた」とありました。)第3楽章は入りにためを作って雰囲気を作ります。第4楽章はノリノリで疾走する愉しいハイドン。やっぱり、めちゃいい曲ですね!

 

渋めの選曲にも関わらず、観客からの大きな拍手で、アンコールをしそうな雰囲気。第4楽章でも繰り返すのかな?と思ったら、第68番の第4楽章でした!この曲もファゴットがユーモラスな音を奏でるので、おそらくファゴットつながりで選ばれものと思われます。洒落っ気のあるチョイスですね!

 

 

シュルトさんは颯爽として勢いがありつつ、いろいろと工夫を凝らした指揮でとても良かったです!まだ30代半ばですが、こんなに魅力的なハイドンを指揮するとは…、

 

この方、必ずやブレイクすると思います!!!(断言)

 

今度は思い切ってハイドンの交響曲4曲でお願いします!(できれば~60番台で組むことを希望)モーツァルトやベートーベンも聴いてみたい。

 

新日フィルは2009年にフランス・ブリュッヘンさんと4日に渡りザロモン・セット12曲のコンサートを敢行しています。オラトリオ「天地創造」とともにハイドン・イヤーの国内のハイライトでした。そのDNAはしっかり引き継がれているようですね。とても素敵なハイドンでした。

 

以上、素晴らしいハイドンを聴いて、ウキウキした気分になった土曜日の午後でした。

 

 

(写真)アイゼンシュタットのエスターハージー城