この日の夜はウィーン国立歌劇場で「こうもり」を観ることにしました。大晦日の「こうもり」は過去に一度フォルクスオパーで観たことがありますが、シュターツオパーでは初めてです。指揮・演出・主なキャストは以下の通りです。


Patrick Lange | Dirigent
Otto Schenk | Regie

Adrian Eröd | Gabriel von Eisenstein
Juliane Banse | Rosalinde
Elisabeth Kulman | Prinz Orlofsky
Clemens Unterreiner | Dr. Falke
Daniela Fally | Adele
Peter Simonischek | Frosch
Alfred Šramek | Frank
Norbert Ernst | Alfred
Peter Jelosits | Dr. Blind
Annika Gerhards | Ida


さすがは大晦日の公演、着飾った方々で溢れていて、入口入ってすぐの中央の階段はさながら撮影会の様相、とても華やかな雰囲気です。特に女性は素敵なドレスの方が多かったように思いました。

1幕は有名な序曲から。ウィーン国立歌劇場のオケのどことなく懐かしい音色が客席に響くと、「やっぱりウィーンのJ.シュトラウスは最高!」と、この時点でかなり幸せな気分に。幕が開くと舞台はとてもきらびやか、溜息が出るような綺麗なセットです。オットー・シェンクさんの演出はとてもオーソドックス。安心して「こうもり」の世界に浸ることができます。

歌手の方々はみな歌に演技にレベルが高かったです。エリザベス・クルマンさんのオルロフスキー公爵は今まで観た中で一番しっくりくるオルロフスキーで非常にさまになっていました。アルフレートはバイロイトの指輪でローゲを歌ったノルベルト・エルンストさん。観る前はどうしてもアルフレートと結びつきませんでしたが、なかなかいい感じ。そう言えば、両方とも三の線でした。フランクやブリントも「これぞフランク!」「これぞブリント!」といい味出していました。

と、実力派の歌手の方々の中でも飛び抜けて素晴らしかったのは、やはりアデーレのダニエラ・ファリーさん。この方、バイエルン国立歌劇場の来日公演の「ナクソス島のアリアドネ」でも魅力的なツェルビネッタを歌っていましたが、コケットな役柄を歌わせたら天下一品。本人のホームページに「この役を演じるために生まれてきたといえる程に適役であるアデーレ」と日本語で書いてありますが、適役どころか…もはやアデーレそのものにしか見えません!

2幕ではオルロフスキー公爵の余興として、ゲスト歌手が登場しますが、この日はピョートル・ベチャワさんが登場。最初に歌ったヴェルディ/仮面舞踏会の1幕の漁師の歌も良かったですが、「ドイツ語の歌を」とオルロフスキーから促されて歌ったのが何とレハール/微笑みの国の「君は我が心のすべて」!ゴージャスでトロ甘の伴奏に映える歌声、もう感動に打ち震えました!ウィーン国立歌劇場では普段この演目は公演にかかることがないので非常に貴重な機会でした!

3幕はやっぱり(笑)、フロッシュの独壇場。ウィーンの喜劇役者の方でしょうか?ギャグが冴えわたって、客席あちこちでドッカンドッカン受けまくっています。こういう時、ドイツ語が聞き取れず少ししか反応できない自分が本当にもどかしい…。でも、皇帝フランツ・ヨーゼフⅠ世の肖像画の後ろに隠していたおかわりのスリポヴィッツを取り出したり、ドアそばの帽子掛けに3回目にして初めて帽子が掛かった奇跡に十字を切ったりなどなど…、もう古典とも言うべきお約束のギャグは心底楽しかったです。

観る前は「フォルクスオパーよりもお行儀が良くて固いのかな?」とも思っていましたが、「こうもり」はやはり「こうもり」でした(笑)。素晴らしい歌と演奏と笑いを大いに楽しんで、幸せな気持ちで2014年の最後の時を過ごすことができました。



(写真)開演前のウィーン国立歌劇場