昨日の素晴らしかったカルロ・フェリーチェのオテロの余韻に浸りつつ、この日はジェノヴァからミラノに移動しました。

 ミラノは以前に一度来たことがあり、その時にだいたい見て周りましたが、今回どうしても行きたかったところがあります。地下鉄を乗り継いで行った先は…。


(写真)音楽家のための憩いの家


(写真)憩いの家の前にあるヴェルディ像


 そう、ヴェルディ最後の、そして最も社会的な価値のある作品とも言われる、「音楽家のための憩いの家」(Casa di Riposo per Musicisti)です。当時、引退した音楽家たちが悲惨な晩年を過ごしていることに心を痛めたヴェルディが、音楽家が人間の尊厳を持って晩年を過ごせるようにと設けた、音楽家のための老人ホームです。今は入居者から施設料を取っていますが、ヴェルディの死後50年間は、ヴェルディの作曲した音楽の著作権料で施設の運営が賄われていたとのこと。ヴェルディって本当に尊敬ですね!

 今は引退した音楽家だけでなく、音楽を勉強する若い学生さんも一部住めるようになり、引退された音楽家から指導をしてもらえることもあるそうです。また、憩いの家の中には小さなホールがあって、若手音楽家によるコンサートがあるとのこと。もちろん引退された音楽家も聴き手に入るので、大変緊張感のあるコンサートになり、若手音楽家にとって非常に良い経験を積む場になりそうです。

 この憩いの家に囲まれた中庭にヴェルディとジュゼッピーナのお墓があります。そんなご老人や若手の音楽家そしてその音楽に囲まれて、ヴェルディはきっと幸せだと思います。私もしっかり手を合わせてお祈りをしてきました。偉大な音楽を本当にありがとう!


 一番の目的を果たしたので、後は残った時間でミラノの有名なところを観光して周ります。


(写真)ドゥオーモ


(写真)ヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア


(写真)スカラ座


 せっかくスカラ座に来たので、スカラ座博物館にも寄りました。ここにはオペラが好きな人には垂涎の展示物が沢山あります。そもそも展示物のある部屋に行くまでの階段の壁に、トスカニーニやパニッツァなどがヴェルディを振った過去の公演ポスターがスカラ座のポスターの様式で飾ってあり、もうそれだけでクラクラきてしまいます!

 博物館は1913年にできたので、2013年は100周年。ということで、ちょうど100周年の企画展をやっていました。内容はヴェルディのレクイエムの聴き比べ(カラヤン、アバド、ムーティ、バレンボイムの4指揮者。実際に聴いてみて私にはやはりムーティが一番しっくりきます。)などヴェルディの展示にスペースを割いていますが、何とワーグナーのコーナーもありました。リングやパルジファルの衣装などもありましたが、特に気になったのは、ワーグナーがアッリーゴ・ボーイトに宛てて書いた手紙の展示。その中でワーグナーはドイツとイタリアの特性の共通点などについて言及しています。

 ボーイトと言えば、ヴェルディのオテロとファルスタッフの脚本を担ったことで有名ですが、若い頃はワーグナーの音楽を称賛し、イタリアにおけるワーグナーのオペラの翻訳・紹介者だったようですね。いろいろ勉強になります。