知立市長選挙の告示から早7日目、選挙戦も最終日のあと僅かの時間を残すのみとなりました。投票日前日にして、未だに選挙公報が配られていない、投票用紙が到着していない、選挙ビラが手に入らないなどの声を多く聞きますが、時々刻々と時間は投票日に向けて確実に経過しています。


有権者の皆さまには、あらゆる手立てを講じて、各候補者の人物像、知立市の現状と課題や解決手法(公約)などに関する情報を収集して、これまで積み残した課題を解決でき、これからの暮らしを保障できるのは誰なのか、虚心坦懐に客観比較して精査し、選択していただきたいと思います。

 

小職も、知立市行政の執行責任者として相応しい人物がどちらなのか、各候補者のこれまでの行動や選挙戦で示された情報を加味して、分析したいと思います。(なお、質問状に対する回答も交える。)

 

そこでまず、小職と各候補者との市長選に係るこれまでの経緯について書き示します。

 

〇現職市長「林いくお」…労働組合、自民党、民進党推薦
現職市長とは初めての市長選(8年前の平成20年)以来の付き合い。当時自民党市議であった林氏から民主党県議の小職に対して、自らの市長選出馬意欲を示して支援要請。それを受けて、小職は選挙責任者として林氏を労働組合と民主党の推薦候補(自民党推薦なし)として「知立一新」を掲げて擁立した。(2期目の市長選では民主党の推薦を断るとともに自民党の推薦もなし、今回は民進党と自民党の推薦を自ら依頼して取得。)

 

〇新人候補「いわき道雄」
新人候補とは西町区長(3年前の平成26年)や知立祭り惣代長以来の付き合い。いわき氏は小職後援会の政策勉強会を通じて、知立市政の現状と市政運営に関する課題に危機感を抱き、その課題解決に直接関与する役割を担う意欲を抱く。小職に対して、今回の「知立大改革」を掲げた市長選出馬報告があり、それを受けて、小職は市民の有志による選挙を薦めた。

 

ここで、公費で全戸に配布された「選挙公報」や公費で作成された「選挙ビラ」を比較し、疑問点などを列挙したいと思います。

 

〇現職市長「林いくお」
(注目点)現職市長の場合、在職中の実績を述べる際には、事実に基づく正確な情報発信を注意深く心掛けなければ、都合の良い所のみを実績と抜き出しているとして、不誠実の誹りを免れない。

 

〇現職市長は選挙公報の見出しで「誠実に!着実に!実績を踏まえ更に前進!!」と宣言し、「知立に住み続けたい方が増えています。」として、59.5%(平成19年)から67.1%への推移を根拠にして、住み続けたい方が増えたことを実績の代表格としてアピール。
「誠実に」=真心をもって物事に対すること、「着実に」=危なげのなく手堅いことの意味であり、林氏の市政課題への取組み姿勢が如実に表現されている。

指摘①67.1%は3年前の平成25年の数値であって、平成28年(直近)の数値ではない。(平成19年から25年までの上昇傾向を持ち出して、現在(平成28年)まで「増えている」ように思わせる表現(67.1%の調査年が記載されていない)は不適切。)

指摘②高齢者が増えれば、「住み続けたい」割合が増えるのは当然。(平成19年から25年までの6年間に高齢化が進展(約6%)し、人口構成における高齢者の割合が増えた。そもそも高齢者は定住志向が強いので、「住み続けたい」と「市外に移り住みたい」という選択肢からは、当然に「住み続けたい」を選ぶことになる。)

 

1.「自らを律し税金を大切にします、退職金カットに引き続き取り組みます。」…8年前の公約「退職金の全額カット! 市長の退職金が1期4年で約2,000万円は、庶民感覚とかけ離れており、全額カットします。」から表現がトーンダウン。

・市長の政治倫理条例を県下で初制定…県外での先例はいくらでもある。
・飲食に関する市長交際費の全額カット…高橋市議(当時)の議会質問「議員は各種懇親会参加の際の会費は自費負担なのに、市長は公費負担から自費負担にできないはずがない」と促されたもの。
・報酬削減…知立市特別職報酬等審議会の答申を受けたもの。
・普通財産の有効活用…給食センター、南保育園跡地売却のこと?
・財政調整基金は市政施行以来最高額(約23億)確保…市債残高も過去最高額(約270億)
・近隣市との共同事務処理…衣浦東部広域連合 (消防)、刈谷知立環境組合 (廃棄物処理)のこと?

2.「知立駅周辺の整備効果を市内全域に波及させます。」…具体的な効果見込みが示されていない。

・知立駅のエレベータ設置や南改札口の開設、駅の高架化、踏切除去での渋滞緩和…愛知県が主体で施行中の鉄道高架工事の進捗と目的を説明しているのみ。
・経済効果や税収効果…具体的な算出額が示されておらず、投資額との比較対照もされていない。

3.「安全・安心力をさらに高めます。」

・年間犯罪件数が減少…市民の意識向上、警察官による警ら活動も折り込むべき。
・機能別消防団の創設…知立市は消防団OBによる機能別を含めて5分団体制→例えば、みよし市(人口は知立より1万人少なく、面積は2倍)は女性消防団などの機能別を含めて15分団体制。
・認知症施策の向上…認知症サポーター養成講座のこと?
・高齢者サロン…市で主催しているサロンはない。
・心の健康カフェ…地域包括支援センター+認知症の家族を支える会によるものであって、市の主催ではない。

4.「子ども子育て環境日本一を目指します。」

・県下トップクラスの少人数学級…愛知県一律の小学校1.2年、中学校1年の35人学級編成に知立市が小学校6年まで上乗せしたもの→例えば、これまでで県下トップは犬山市の小中学校全学年30人学級編成。また、少人数学級による効果(いじめ、不登校、学力等への影響評価)の説明が不十分。

・中央子育て支援センターの開設…中央保育園の廃園時に、園内にあったセンターを跡地に残したもの。
・放課後子供教室の実施…国の補助事業。同じく補助事業である放課後児童クラブは平成29年度から月額5,000円の自己負担が発生。
・待機児童ゼロを目指す…現在の待機児童数(3歳未満児)約40人。

5.「新たな取組みに、挑戦していきます。」

・県下初の教育委員の一般公募…県外での先例はいくらでもある。
・無作為抽出による市民参加制度…審議会委員の公募の実施やパブリックコメント制度のこと?
・環境に関する西三河都市間連携による首長誓約…豊田市長からの打診に基づく誓約。
・ユネスコ無形文化遺産登録…国(文化庁)による登録申請。
・松並木祭り、市内全域「かきつばた」構想、「ちりゅっぴ」の家

 

〇新人候補「いわき道雄」
(注目点)新人候補の場合、独自に新たな政策提言の際には、知立市政の正確な現状分析に基づく情報発信を心掛けなければ、現職批判のみを対立軸にしているとして、不誠実の誹りを免れない。

 

〇新人候補は選挙公報の見出しで、「熟慮あり決断あり実行あり すべては、知立市のために。」「勇気ある行動で活力ある知立にします。」と宣言し、「知立大改革 知立を立て直す。」として、現職市長の元での市政運営からの転換をアピール。「熟慮」=よく考えること、「決断」=はっきりと決定すること、「実行」=実際に行うこと、「勇気」=困難を恐れない心の意味であり、いわき氏の市政課題への取組み姿勢が如実に表現されている。

 

〇また、新聞に折込まれた選挙ビラで、現職市長の就任時→現在→将来を《知立市の実態》として、1.高齢化と人口減少、2.暮らし…住みよさランキング164位(2008年)→369位/全国791都市(2015年)、下水道普及率31位/愛知県49市町村(2016年)3.行財政…市の負債は過去最高額(市民一人当たり約39万)、4.公共事業…駅周辺整備事業の総額1,000億超で市の負担額は250億(返済年額約16億)、公共施設の保全費用の総額775億(年額約12億)、の4分野で現職市長の市政運営によって事態が悪化したことを強調。

 

1.「明るい未来へ財政強化」しがらみゼロだからできる税金の使い方改革を!

・国と県との強いパイプで財源確保(知立市負債275.4億、返済額19億へ増大)…国・県補助事業による市財政の健全化
・産業誘致と市街化促進で人口増加(市民税収はピーク時の93%)…市街化調整区域の市街化編入と税制優遇による法人・個人の呼込み
・民間手法と市民会議の導入による行財政改革(経常収支比率91.0%と財政硬直化)…市民・有識者による知立市版経済財政諮問会議による事業仕分け、公営施設の民営化、ネイミング・ライツ
・中小企業、小規模事業者、農業生産者支援によるコミュニティの復活…地域の担い手としての役割に支援

2.「健康で楽しく暮らすまち」市民のいのちとくらしを守るまちへ!あんしん福祉日本一!

・高齢者助成の倍増…ミニバス無料化、生活支援
・三世代交流事業とスポーツ・文化施設の整備…生涯学習支援と市有施設の老朽化・狭隘化対策
・安心の医療・福祉体制の構築…高齢者福祉施設待機者(現在の待機者数約180人)ゼロ→在宅介護サービスと施設整備、待機児童(現在の待機児童数約40人)ゼロ→保育士の処遇改善と施設整備
・交通事故件数(現在の全国順位571位/813都市)、犯罪件数(現在の全国順位805位/813都市)の削減…交通事故多発交差点の改良と歩道・信号機の設置、民間交番と防犯カメラの設置

3.「女性が安心して活躍できるまち」住んでみたい、住み続けたいまちへ!子育て・教育環境日本一!

・女性の特性を活かし、子育てしながら働ける環境の整備…保健センターの充実(出産支援、産後ケア、マイ保健師)と病児病後児・一時・休日保育の充実
・子育て・教育環境の充実による子どもたちの生きる力の育成(現在の不登校児童生徒数は小学生32人、中学生49人)…地域子育てマイスターやスクールカウンセラーの充実
・少人数学級、英語教育の充実によるグローバル人材の育成…小中学校全学年30人学級編成、ネイティブ・イングリッシュの指導
・子ども子育て世代への重点的投資による定住人口の増加…教育費補助(副教材・給食費など)

5.「豊かな観光資源を活かした地域活性化」(知立の魅力を全国に!知立ブランドを発信!知立ナンバーワン・プロジェクト!

・観光拠点の設置と積極的PRによる交流人口の増加…観光協会の法人化と観光案内所の設置、キャラバン隊による市外における観光PR(シティ・プロモーション)、旅行社によるパックツアー、知立著名人の観光大使
・知立市の史跡保存・整備や伝統芸能の継承…文化財の定期修繕、小中学校での民俗芸能の指導
・地元産品の付加価値向上と知立ブランドの構築…三河仏壇の細工技術、B級グルメ、東海道宿場サミット、弘法大師、花火大会

指摘①財政健全化までの具体的なロードマップ(中期財政計画)と予算の組替案が示されるべき。
指摘②民間手法や人材の活用の前に、既存の市役所の潜在力を引き出すマネジメントが必要。市役所職員の人事(適材適所、スキルアップ)、民間企業との人事交流などで、行政人材

力は現在より向上するはず。