川の水の流れる音は
以外と実は
とても大きい音なのです
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240604/00/frankinfry-38398k/a3/4d/j/o1080058515447163498.jpg?caw=800)
一匹釣り上げるたび先行を交代して進む それが、私達の釣り方でした
私はキャスティングしづらい所は、どんどん飛ばして先に行った
夫は私が諦めたそんなポイントもしっかりと拾うので
自然と私と夫の距離はどんどん離れてゆく
振り返ると夫の姿が見えない、なんてこと、よくあることでした
不安になり耳を澄ませると
歩くたびに足にあたる夫のカン高い
熊よけの鈴の音が微かに「カラン、カラン」と響いてきて
「あ、いるな」と安心したものです
初夏の釣行での出来事です
はっ、と驚いた顔で歩を止めた夫
「あれ、俺、車の鍵かけて来たかな!?」と、そして
「心配だから、見てくる」
えーっ、見てくるって💦😱
「ちょっと、ここで待っててね」
夫は踵を返しバシャ、バシャと、飛沫を上げ
今、来た道を引き返し始めた
ガランコロンと賑やかに腰に付けた鈴の音も
そう言って去った夫の後ろ姿も
あっと言う間に私から遠ざかった
入渓して一時間半は経っていたかと
その道のりを往復する。。。と、なると
これは、かなり待つな、と覚悟した
水の流れる音と蝉の鳴き声しか聞こえない
風もないよく晴れた日
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240604/00/frankinfry-38398k/5d/c8/j/o2983238415447163829.jpg?caw=800)
私は一人で渓流に来た事はないんです
いつも、夫と常に一緒でした
一人で来るって、こんな感じなんだ
そこは熊の影も濃い道南のある川
意識すると
風が揺らす微かな枝の音にも「もしや?!」と、ドキッとした
上流には気持ちの良いプールがあったけれど
そこまで行って攻める気にもなんだか、なれなかった
でも私の予想よりも遥かに早く
夫は戻ってきてくれたのです
ホントにあっ、と言う間でした
遠くから鈴の音が微かに聞こえ始め
その音はだんだんと大きくなり
やがて夫の姿が現れる
「〇〇ちゃんが、待ってると思ってすごく急いだ!!」と、汗だくのドヤ顔の夫
ほっとした
そして、つくづく頼もしい人だなあ、とその時も私は思った
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240604/00/frankinfry-38398k/74/34/j/o0618027815447163954.jpg?caw=800)
私は
あの日のように夫の鈴の音がまた聞こえないものか?と
どんなに耳を澄ませても
聞こえないのは
わかっているのだけれど
汗だくの夫の笑顔を待ちわびるような
そんな気持ちに囚われる事があるのです
そんな感情に取り込まれると、
もう、へなへなと、へたり込み
1ミリも動きたくないような
1ミリも顔さえも、上げたくないような
そんな途方もない気持ちになる
それは、大切な人を失った人ならば、誰もが似たような気持ちを
一度は抱くと思うのです
私もそう
そんな私も、ひとつの本当の私
けれど
先を目指し、進みたくなるような
そんな雄々しい考えが浮かぶ時もある
それも、ひとつの本当の自分
私が好きなスピッツの「美しい鰭」という曲
♪流れるまんま 流されたら
抗おうか 美しい鰭(ひれ)で
壊れる夜もあったけど
自分でいられるように♪
柔らかに、したたかに
ひっそりと、毅然と
囚われないよう
捕まらないよう
沈み石にうまく身を隠し
すーっと線を引くよな直線的な身のこなしで、上流を目差す
そんな、泳ぐ魚のような鮮やかさで
全てを凌駕したいと
切に思うときもあるのです
でもね、実際の私は
かっこ悪いぐらい、嘆いたり
愚痴ったり、人を羨んだり、誰かを恋しがったり
何もしたくない、と騒いでみたり
時として自分でもびっくりするような
どうしようもないドロドロとした嫌な感情に戸惑う時もある
でも、そんなこんなで、なんとか凌ごうとしている自分
格好悪くも美しい
そんなしぶとさが必要な時って
あるよね、と、慰めるように思ってみたりもしている💦
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240604/00/frankinfry-38398k/70/f4/j/o1102111915447164095.jpg?caw=800)
流れるまんま 流されたら
出し抜こうか 美しい鰭で
離される時も見失わず
君を想えるように
スピッツ「美しい鰭」