僕が小学生の頃から父は日曜日の家族での食事は東京まで行く人だった。
その頃はまだ常磐道も開通してなく東京までは車でゆうに3時間はかかっていた。
父は必ず各料理ごとに基準を設け自らの口を確かめにその店に行く。
そして子供の僕にも「基準の味」を教えこむ。
この日食べた「かき揚げ丼」は銀座のその店。
この店は老舗の天ぷら屋であり単品天ぷらから天丼
、定食まである。
しかし父はこの店では「かき揚げ丼」を必ず僕に食べさせた。
ここで勘違いしてはいけないのだが、この店は「かき揚げ丼」以外不味いのではなく全てが素晴らしいレベルにある。
ただこの店の「かき揚げ丼」が基本に忠実でいながらも突出しているのだ。
その「かき揚げ」は絶妙に包丁された食材はサックリとした衣に包まれ辛めの丼つゆに浸される。
するとベッタリする訳でなくしっとりしながらも適度な歯触りと素材の存在感を活かし始める。
そしてこれを丼つゆがタップリかかった熱々ご飯の上にのせるとそこはもう小宇宙。
食べる直前に重みのある陶器のフタをあけると深みのある香りと共に快楽とも言える緊張が僕の身体を突き抜ける。
僕はただ、やみくもにかっ込んでいた。
そう幼い頃の思い出と共に、、、


